著者:佐藤知一
書名:革新的生産スケジューリング入門
出版:日本能率協会マネージメントセンターまず、本書のカバーに記載された「本書の要約」の一部を紹介します。
「スケジューリングは古くて新しい問題,すなわち、誰もがかかえている"時間の悩み"を解くための計画の手法です。産業界においても、組織全体でかかえる"時間の悩み"は深刻です。未来という未知数領域では何が飛び出すかわからず、過去の時間は二度と元には戻りません.いわばバックギアのきかない自動車で見知らぬ道を進むしかない、これがスケジューリングの悩みです。
この悩みをうまく解く方法はあるのでしょうか? 実はあるのです。いくつかのキーとなる考え方を理解してスケジュールを立案すれば、誰でも時間をより効果的に使えるようになります。その中心となる概念は、「自由度」です。自由度の概念によってスケジューリング理論の全体系を見渡し、これまで経験的に行われていた手法の意味と応用範囲を理解することが本書の目的です。」ここで使われている"自由度"は著者がスケジューリングに導入した新しい概念で、基本的にはスケジューリング対象となる各仕事のスケジュール可能な範囲(解空間)を意味します。別の言葉で言うと、本書もTOC(制約の理論)と同じように、ボトルネックをスケジューリングの中心とした考えに基づいており、最も自由度が低いものがボトルネックと考えられます。すなわち、自由度の小さいものからスケジューリングしていくと言うのが、本書の基本的考えです。
古典的なスケジューリング理論についてはほとんど言及されていません。ジョンソン法の簡単な紹介がありますが、「実用上の価値はほとんどない」ということになっています。他方,本書はスケジューリングを広義に捉え、PERT、MRP及びSCMにおけるスケジューリングの重要性を強調しています。これは最近、急速に発展しつつある、APS(Advanced Planing and Scheduling)と同一志向であり,本書をAPSの平易な解説書と見ることも出来ます。APSの具体例としてはi2 Technologies社の「Factory Planner」が紹介されています。さらに、本書はAPSの限界を指摘し、現今のAPSでは取り扱えない、切替え型連続生産のスケジューリング問題を取上げ、最小自由度の概念に基づいた方法を提案しています。これは化学系プラント(製油精製)で実際に起きた問題であります(因みに著者は石油化学系会社のシステム・アナリストです)。
本書は、実務者と学生を受講生とした講義形式で進められ、基本を講義した後、受講生からの素朴なあるいは鋭い質問に懇切丁寧に答えるという形を取っていて、たいへん読み易いです。
この本はあくまで実務者向きの本であるとされており、また、学術研究の立場からいえば、やや大胆過ぎる論旨が無いとは言えないかもしれませんが、スケジューリングの実際上の意義と重要性を再確認すると言う意味で学術研究者にもたいへん参考になると確信いたします。
主要目次(本書裏頁より)第1章 パーソナル・スケジューリング
イントロダクションとして、個人単位でのスケジューリングを取上げ、スケジューリングの基礎となる概念や言葉を理解する。
第2章 プロジェクト・スケジューリング
PERTなどのネットワーク・スケジューリング技法の基本を理解する。
第3章 生産スケジューリング(1)−古典理論とMRP
古典理論と、スケジューリングの世界に一つのパラダイム打ち立てたMRPの解説。
第4章 生産スケジューリング(2)−最適計画を求めて
最適計画を求めて1980年代に続けられた苦闘の歴史を振り返る。第5章 生産スケジューリング(3)−APSによるジョブショップ・スケジューリング
90年代に入って押し寄せてきた新しい波、APSを取上げる。第6章 生産スケジューリング(4)−連続生産への応用
連続生産の業種ならびに連続生産とジョブショップ(デイスクリート型)生産の昼間である「切替え型生産」業種におけるスケジューリング問題を考える。第7章 サプライチェーンとスケジューリング
まとめとして、サプライチェーン・マネージメント(SCM)の概念を説明し,生産スケジューリングがSCMのために必須の条件であることを示す。