スケジューリングと自由度の概念


1 自由度とは何か

スケジューリングの問題は、個人のパーソナル・スケジューリングからはじまって、プロジェクトのスケジューリング、工場での生産スケジューリング、広域のサプライチェーンのスケジューリングなど、かなりな広がりをもっています。

このスケジューリング問題とは、一口にいって“時間の悩み”です。限られた時間の枠の中で、しなければいけないさまざまな仕事(タスク)を、どの順番でいつ着手すべきかが、問題の中心になります。

このような問題に立ち向かうとき、どの人も、無意識にとるスタンスがあります。それは、作成するプランの上で、できる限りフリーハンドな選択の余地、すなわち自由度を確保しておきたいという感覚です。

自由度とは、いいかえるならば、将来起きるかもしれない未知の状況(不測の事態)に対応できる余地を意味しています。

たとえば。

あなたが誰かと1週間後に打合の約束をするとしましょう。その日はまだ予定が入っておらず、一日空いているとします。打合は2時間ほどかかりそうです。そのとき、あなたは朝一番か、逆に夕方に打合を設定しませんか? なるべく日中のまとまった時間帯は自由に使える時間として明けておきたいと考えるはずです。そうすれば急な飛び込みの仕事にも、あるいは別の打合が発生した場合にも、対応できる可能性が高いからです。

これはひどく単純な例ですが、もっと複雑な工場の生産スケジューリングの場合でも、実は本質的に同じアプローチをとることが有効なのです。スケジューリングの問題を解く際に、自由度を計測し評価しながら決めてゆけば、問題に対して見通しの良い解決を得ることができます。

自由度を軸としてスケジューリング問題をとらえ直すこと、これが『革新的生産スケジューリング入門』で主張している中心的テーゼなのです。

2 自由度の三原則

スケジューリング問題において、自由度は一種の資源としてとらえることができます。それも、時間とともにどんどん失われてゆく、貴重な資源としてです。

自由度を確保するためには、以下の三原則を守る必要があります。

3 従来の理論と自由度の関係

これまでスケジューリング研究の世界では、Johnsonの古典的な理論から始まって、さまざまな手法あるいは提案が、ある意味では雑多なかたちで行われてきました。

しかし、自由度の概念に着目すると、これら研究成果にかなり統一したパースペクティブを与えることができます。たとえば、以下の通りです。

自由度消費最小のタスクから順に付置していく

自由度(=フロート)がゼロの経路の集合

自由度(=納期−タスク日数)が最小のものから着手する

自由度が最小の工程がボトルネック工程である

これが自由度という概念の持つ力であり、スケジューリング問題に対して新しいパラダイムを提示する可能性を持っていると考えられます。

4 自由度の現実的な意味

ここまで書くと、自由度はまるで純粋に理論的な概念であるかのように受け取られそうです。しかし、自由度の概念は同時に、企業活動のマネジメントにおける具体的な意味と有効性を持っています。いや、むしろ、そちらのほうが重要なのです。

自由度の具体的意味。それは、すなわち計画担当者が選びうる選択肢の範囲です。いいかえると、自由度とは権限範囲のことなのです。

計画者が生産スケジュールを立案する際に、どれだけの範囲の中から手を選べるか−−それが自由度です。工場全体で考えることが許されるのか、それとも一部のラインや製品ファミリーだけを任されているのか? 計画対象期間はどれだけか(向こう数週間か当日分だけか)? ワークセンタの稼働時間は変えられるのか、人の配置は動かせるのか(それとも労組の厚い壁で不可能なのか)、等々・・。

およそ計画の良し悪しというものは、計画者に与えられた自由度の範囲、すなわち委譲されている権限範囲の広さによって非常に左右されます。計画を評価するときには、与えられた権限範囲の中でどれだけベストを尽くしたか、で計られなければウソでしょう。自由度もないのに、誰が結果責任を負えるでしょうか?

自由度とは権限範囲を意味します。それはすなわち、結果にたいする責任を問われ、評価される範囲を意味しているのです。自由度なくして責任なし。自分の頭で判断し行動できる人間の英知を、仕事の成果に結実させるためにも、自由度を大切にしなくてはいけないのです。

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