革新的生産スケジューリング入門

製造業を革新する<計画とマネジメント>の技術ノート

新しい仕組み作りにチャレンジする人、仕事のあり方をかえたいと願っている中堅エンジニアのために

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今回のノート Note this week

経験から学びすぎることの危険 〜ゆらぎある事象の原因分析について

1973年、第四次中東戦争が勃発した。イスラエルに対してアラブ国側が先制攻撃をしかけて始まったこの戦争は、緒戦段階でエジプト軍の地対空ミサイルが効果を上げ、イスラエル空軍機を多数撃墜した。戦争は結局、米国の後押しを得たイスラエル側が、ある程度まで押し返して、わずか2週間ほどで終わる。ただ、この時の余波で第一次石油ショックが起こり、油価の暴騰とエネルギー供給危機に、日本を含む西側諸国は大きな動揺を経験する。

イスラエルの側も、それまで過去の戦争ではアラブ側を圧倒していたのに、大きく面目をつぶした。とくに空軍の損失は甚大で、しかも損失の出方は偏っているようにみえた。たとえば、同じ基地から飛び立った二つの飛行中隊のうち、片方は4機を失ったが片方は無傷だった。このため、損害を被った飛行中隊のどこが悪かったのか見つけようと、調査が開始されていた。しかし一方の中隊がとくにすぐれていると考えるべき理由はなかった。作戦にも違いはなかった。かくして、調査はパイロット一人ひとりの生活や態度に向かっていった・・。

しかし、後にノーベル経済学賞を受賞することになるダニエル・カーネマンは、この調査をやめさせるようイスラエル空軍に進言した。カーネマンはもともと心理学者である。ただ、かれのアドバイスはもっと単純なものだった。「この違いの説明について、最もあり得る答えは『偶然』である。あるかどうかも分からない原因を求めて調査するのは意味がない上、パイロットたちには、自分や死んだ戦友に落ち度があったのではないかと感じさせ、さらによけいな重荷を背負わせることになるだろう」、と。

この話は、D・カーネマン著「ファスト&スロー 〜あなたの意思はどのように決まるか?」に書かれているエピソードである(邦訳上巻・p.171)。ところで、彼のこのアドバイスの意味は、お分かりだろうか? わたしも、最初ちょっとよんだときには理解できなかった。だが、これは統計の大数の法則を思い出してみると、分かるようになる。たとえば、いま、サイコロを振って、出た目の数が5?6なら○、1?4の間なら×、だとしよう(○が出る確率は1/3だ)。では、次の二つのうち、どちらがより珍しい事象だろうか?

(1) サイコロを4回振って、全部○が出る
(2) サイコロを10回振って、全部○が出る

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更新情報 Update information

生産マネジメント ワンポイント講義」に『経験から学びすぎることの危険 〜ゆらぎある事象の原因分析について』を追加しました(2016/06/26)

生産マネジメント ワンポイント講義」に『熱気球の浮上、または原因分析のシステムズ・アプローチについて』を追加しました(2016/06/18)

OR学会サプライチェーン戦略研究部会に招かれて「海外プロジェクトへのシステムズ・アプローチ ー 理論・技法・展望」と題する講演を行いました。大勢の方のご来聴に感謝します(2016/06/16)

新著『世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書』発刊を記念し、日本テクノセンターで「プロジェクトを成功させるための実践的マネジメント技法とそのノウハウ 〜演習付〜」 と題する1日研修を行いました。大勢の方のご参加に感謝いたします(2016/06/16)

In "Project management one point lecture", an article "Calculating real values of activities - an introduction to the risk-based project value"has been added(2016/06/12)

ワースペース白幡」の「気まぐれ批評集 書評」に、書評『★★★ アナバシス 〜敵中横断6000キロ〜』(クセノフォン著)を追加しました(2016/06/03)

プロジェクトマネジメント ワンポイント講義」に、「プロジェクト・マネジメントの目的とは何か」を追加しました(2016/05/25)

生産マネジメント ワンポイント講義」に『生産システムとは、どういう仕組みだろうか』を追加しました(2016/05/18)

生産マネジメント ワンポイント講義」に『生産管理という仕事の目的は何か』を追加しました(2016/05/12)

In "Project management one point lecture", an article "Sunk cost principle and DIPP criteria for project portfolio management"has been added(2016/05/05)

アンサンブル・ハイブリッジ 解散のお知らせ」を掲載しました。長い間ご支援ありがとうございました(2016/05/05)

プロジェクトマネジメント ワンポイント講義」に、「『なぜ』からはじめよう − 仕事の目的を設定する」を追加しました(2016/04/28)

タイム・コンサルタントの日誌から」に、「スペシャリストか、ジェネラリストか?」を追加しました(2016/04/19)

米国PMIのPodcastシリーズ「PM Points of View Podcast: Advances In PM II - Beyond the PMBOKR」の最新の回で、わたしがインタビューを受けて話しています。内容は、わたしの博士論文のテーマである『リスク基準プロジェクト価値』(Risk-based Project Value)の紹介で、外にM. Hannan氏とJ. Sopko氏のインタビューも入って約1時間です(無料)。これを聴くと1 PDUが取得できます。最新のPMの進歩に関心を持つ方々に、おすすめします(2016/04/14)

考えるヒント」に、「学ぶ時間をどうつくるか」を追加しました(2016/04/11)

考えるヒント」に、「見えない壁に突きあたった中堅エンジニアが学ぶべき、三つのこと」を追加しました(2016/04/04)

私が主査をつとめる「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」とOR学会「サプライチェーン戦略研究部会」(主査:日本IBM・米沢隆)の合同シンポジウム『サプライチェーン戦略とプロジェクト・マネジメント』を浜松市で開催しました。大勢の方のご来聴に感謝いたします(2016/04/02)

タイム・コンサルタントの日誌から」に、「企業のミッション・経営理念を日米比較する」を追加しました(2016/03/28)

In "Project management one point lecture", an article "Drag Cost - The true cost that takes into account delivery schedule effects"has been added(2016/03/20)

お知らせ:

新著『世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書』(佐藤知一・著)9月に発刊しました!

“JIT生産”を卒業するための本 〜 トヨタの真似だけでは儲からない』(共著)、『リスク確率に基づくプロジェクト・マネジメントの研究』、『時間管理術』、『BOM/部品表入門』好評発売中です!

→2016年3月以前の更新履歴

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