用語の解説       2002年5月29日 更新

 私のエッセイは、思索が進むにつれて新しい概念が生まれ、それを記述するための新
しい用語がだんだんと増えてきました。また、思索が進んだために、前に使った用語に、
さらに新く概念が付加する事態も起こりました。特に、「愛」、「生命」、「理性」などの用語
は、普通とはちょっと違ったニュアンスで使っていますし、思索が進むにつれて、その概
念も拡大し、多様化して来ました。
 文章が読みにくくなって申し訳ありませんが、今は思索が進んでいる段階なので、用
語概念の統一と確定は、まだ出来ないのが現状です。そこで、文章を少しでも読みや
すく読んでもらえるよう、ここに用語の概念をまとめることにしました。
 新しい用語が出来たり、新しく概念が付加したときには、そのつど更新させて頂きます。
場当たり的な対処で申し訳ありませんが、宜しくお付き合い下さい。

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 私のエッセイの主要なテーマの一つ。世間一般に「愛」と言えば、恋愛や性愛などの
男女の愛を指す場合が多い。しかし私のエッセイでは、隣人愛や人類愛、慈悲(生きと
し生きるもの全てに対する愛)など、幅広い概念で使っている。また、「本能的な愛」や
「理性的な愛」などと言った分類をすることもある。エッセイ13では、生命を肯定する「正
しい愛」と、生命の否定を招く「間違った愛」という概念が発生した。

自己愛
 自分の存在を肯定し、守ること。生存本能による「本能的な自己愛」、自己の徳性や
利他の精神を育成させる「理性的な自己愛」がある。

自己肯定
 「生きることは素晴らしい!」と感じて、自分の存在を肯定すること。自己愛に同じ。

自己否定
 自己の存在意義を、自分で否定してしまう状態。「自分は生きる価値も生きる資格も
無い」とか、「自分は死んだ方が世のためだ」と思ってしまう状態。自己否定の記述は、
エッセイ1に詳しい。また、自己の本能的な欲求やエゴイズムを適度に抑制するという、
良い意味での自己否定もある。

慈悲
 生きとし生きるもの全てに対して、思いやりの心を持つという愛。古代インドのシャカ
(ゴータマシッダルタ)が提唱した愛の概念。シャカの定義には、植物に対する愛は含ま
れていないが、私は植物に対する愛も含めて考えている。

人類愛
 人種、国家、民族、身分、男女などの差別をしないという愛。世界平和の実現、貧困や
病気の根絶、教育の普及、救援活動などの動機となる愛。

生命
 生命現象の総称。DNAや細胞などの生物学的概念から、動植物など一般の生物、
感情や理性などの精神的なものも含む概念。細胞や肉体などの物質的な要素と、本
能や感情、理性などの物質ではない要素とからなる。

生命の意義
 ある生物個体の生命活動によって、他の生物に与える影響力の総称。生命の意義
は、生物個体の死によって消滅しない。繁殖がその一例。繁殖の影響力は子々孫々
と伝わるので、生物個体の死によっては消滅しない。

生命の肯定
 広く一般に、生命の存在を肯定すること。「生命の存在は素晴らしい!」と心の底か
ら思うこと。生命の存在意義や、生きる価値を認識して、いきいきと生きること。生命
の存在に、喜びと感謝を感じること。「自己肯定」は、生命の肯定の一部をなす。

生命の否定
 広く一般に、生命の存在意義や存在価値を否定すること。生命の存在を憎むこと。
「自己否定」は生命の否定の一部をなす。

大生命(たいせいめい)
 地球の全生物を含めた生態系のこと。大生命は、食物連鎖や、植物と動物における
酸素と二酸化炭素のガス交換などで、地球の全生物が一つにつながったもの。地球
の全生物は、色々の関係で一つにつながることにより、生命全体を維持している。つま
り、大生命は生物全体によって構築された一つの生命維持システムといえる。

正しい理性
 正しいことに使われる理性。生命を肯定する理性。愛の増大、平和の実現に使われ
る理性。本能的な欲求を適切に抑制する理性。エゴイズムを抑制し、利他の精神を育
成する理性。他の生命を助けることに使われる理性。隣人愛、人類愛、慈悲の実践と
普及に使われる理性。

動物的生命
 人間の生命のうち、本能的な動物としての部分。霊長目ヒト科の動物としての生命。
本能と肉体からなる生命。「本能的な自己」は、動物的生命としての自己を指す。

本能的な愛
 生存本能の自己愛、性本能の性愛(セックス)、母性本能による母性愛が代表的なも
の。本能的な愛は、自己の生命を維持したり、種を保存するために、非常に大切なもの
である。しかし感情的な愛であり、人間以外の動物にも備わっている愛である。

本能的な自己
 本能的な動物としての自己。霊長目ヒト科の動物としての自己。細胞や肉体などの物
質的要素と、「本能」という物質ではない要素とからなる。飲んで、食べて、性欲を満た
して寝る、という、動物としての自己。エゴイズムを丸出しの利己的な自己。

本能的な自己愛
 生存本能による自己愛。自己の生命を維持し守る行動、食欲や自己の性欲を満たそう
とする感情や行動として現れる。自分本位の利己的な愛である。

間違った理性
 正しくないことに使われる理性。生命の否定に使われる理性。殺人や犯罪、戦争に使
われる理性。自己の本能的な欲求の追及のみに使われる理性。エゴイズム、利己的な
ことのみに使われる理性。怒りや憎しみを駆り立てることに使われる理性。

理性
 私は「理性」という言葉を、哲学的な難しい意味では使わない。「人間以外の動物には
存在しない高度な思考能力」と言う意味で使う。「理性」は古来より、「動物と人間を区別
するもの」と言われている。科学文明全盛の現代では、「理性」といえば科学的、論理的、
機械的という冷たいイメージがある。しかし、私の使う「理性」にはそのようなニュアンスは
なく、「人間性」とか「人間的」、「人の心」といったニュアンスが強い。「正しい理性」、「間
違った理性」などの使い方もする。

理性的生命
 人間の生命のうち「理性的な存在」としての部分。人間だけに存在する生命。徳性、隣
人愛、人類愛、慈悲などを生じさせる主体としての生命。「理性的な自己」は理性的な生
命としての自己を指す。

理性的な愛
 隣人愛、人類愛、慈悲がその代表格。理性を伴った、相手の人格を思いやる愛。自己
犠牲を伴う愛。理性的な愛は、自分の嫌いなものも愛する。伝染病やエイズ、皮膚病、
貧困者など、嫌悪感を抱かせる者に対しても差別をせず、相手の人格を認め、思いやり
の心を持つ愛。理性的な愛は、人間にしか存在しない。

理性的な自己
 理性的な存在としての自己。理性的生命としての自己。隣人愛や人類愛や慈悲など
を生じさせ主体としての自己。理性的な自己は、利他行動や自己犠牲を志向する。

理性的な自己愛
 本能的な欲求を抑制し、理性的な自己を育成させる愛。理性的な自己を守り育てる
愛。

隣人愛
 キリストが提唱した愛の概念。自分と接する全ての人に対して、分け隔てをしない愛。
病気、皮膚病、らい病を患っている人に生理的嫌悪感を抱かず、人間としての人格を
尊重し、思いやる愛。他民族、女性、卑しい職業についている者、世間からのけ者にさ
れている人に対しても、分け隔てのない愛。



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