「生命の意義」は死によって消滅しない

                              2002年5月3日  寺岡克哉


 あなたが死んでも、あなたの「生命の意義」は、絶対に消滅しません。

 確かに、あなたが死んでしまったならば、あなたの肉体は消滅し、あなたの意識
(認識や思考の作用)も消滅します。しかしながら、あなたが生きて存在したことの
意味や証である、あなたの「生命の意義」は、永遠に存在し続けます。
 普通、死んでしまえば、「生きて存在したことの証」とか「生命の意義」などというも
のも、それで消滅してしまうように思います。しかしそれは違うのです。これは別に
宗教じみた話ではなく、論理的に考えれば、「生命の意義」が消滅することは、あり
えないのです。

 ところで、ここで言う「生命の意義」とは、個々の生物が生きて活動するときに生
じる、他の生物に対する何らかの作用や影響の全てを言います。
 つまり生命の意義とは、ある生物個体の生命活動によって、他の生物に与
える作用や影響のことです。

 これは、あらゆる生物に存在するもので、「生命の意義」とは、別に人間だけに
存在するものではありません。

 例えば「繁殖」という生命活動の影響は、生物個体が死んでも永久に作用し続
けます。親が子供を作れば、その子供が育って親になり、さらに子供を作ります。
このように「繁殖」の影響は、子々孫々と継続されて行きます。
 最初の親がいなければ、その子孫の全てが存在できないのです。これは、最初
の親が生きて繁殖の行為をしたからこそ、成し遂げられたものです。この、生き
て繁殖をしたという生命活動の影響が、「生命の意義」です。
 「繁殖」という「生命の意義」は、その生物個体が死んでも、子孫が存在すること
によって生き続けるのです。

 ところで、「我々の生命に存在するのは、我々の生命の意義であって、先祖の
生命の意義などではない!」と、思う人も多いかも知れません。しかしながら、先
祖が存在しなければ、我々が存在し得ないのも事実です。先祖が一生懸命に生
き抜き、子供を生み育てなかったならば、我々も存在できなかったのです。
 「先祖が子孫を残した」という生命活動の影響が、現在の我々の存在に関与し
ているのを否定することは不可能です。我々の存在は、我々だけで成し遂げた
ものではありません。我々は、我々だけでは絶対に存在できなかったのです。
 だから、我々が存在することそのものが、取りも直さず、先祖の「生命の意義」
の存在を証明しているのです。つまり先祖の「生命の意義」が、我々の生命の
中に存在しているのです。
 以上のように、我々の存在に関して我々だけではどうしようも出来ない部分
が、我々の中に存在する、我々以外の「他の生命の意義」です。我々の生命の
中には、「他の生命の意義」の部分が必ず存在しているのです。

 さらに考察を進めると、我々が存在できるのは、先祖がいたからだけではあ
りません。
 食物になってくれた、他の多くの生命のお陰でもあります。毎日の食事での、
食物になってくれた他の植物や動物の「生命の意義」も、我々の存在(我々の
生命の維持)に関与しているのです。
 食物になってくれた生物の「生命の意義」は、食べられた時に消滅したのでは
ありません。他の生命を養うことによって、その生命の中に存在し続けるのです。
もちろん、食べられた生物個体の「生命」は消滅します。しかし、「生命の意義」
は消滅しないのです。

 このように、生物個体が死んでも、その生物個体の「生命の意義」は
消滅しません。


 さらにまた「生命の意義」は、生物個体の死によって消滅しないだけではなく、
その種が絶滅したとしても、消滅することがありません。
 例えば、4億年前に陸上に進出した魚の「生命の意義」は、すべての陸上動
物の繁栄として現在も存在しています。
 陸上への進出を試みた4億年前の魚たちは、現在では、個体のみならず種
としても存在しません。しかしながら、かつてその魚たちが生きて存在し、陸上
への進出に成功したという「生命の意義」は、たしかに現在に受け継がれてい
るのです。

 ところで、「生命の意義」には「波及効果」が存在します。「生命の意義」は、
時間がたつにつれて波及し、発展し、拡大して行きます。
 つまり「生命の意義」は、時間の経過とともに大きくなって行きます。

 例えば、ある一人のお百姓さんが、一生懸命に農作物を作ったという「生命の
意義」は、その農作物が市場で売られ、他のたくさんの人々の口に入り、たくさん
の人々の生命を養うという「生命の意義」に発展します。
 そして、その農作物を食べることによって生命を維持できた人々は、さらにそ
れぞれの生命活動(仕事や生活)を行い、「生命の意義」はさらに拡大して行く
のです。

 また、例えば400万年前に木から降りたサルの「生命の意義」は、人類を出現
させ、現在では全人類の繁栄となって拡大しています。

 また先ほど述べた、4億年前の陸上に進出した魚の「生命の意義」は、現在で
は陸上動物全体の繁栄として拡大しています。

 そして、40億年前の最初の生命、つまり初めて自己複製と増殖に成功した生
物の「生命の意義」は、現在では地球の生物全体の繁栄として拡大したのです。

 それぞれ個々の生物の「生命の意義」は、とても小さなものです。一見すると、
その生物個体が死ねば、「生命の意義」もほとんど跡形もなく消え去ってしまう
ように思えます。
 しかしこれまでの考察により、それが違うことは明白です。一個の生物個体の
「生命の意義」がどんなに小さなものであっても、「生命の意義」は波及し、発展
し、どんどんと大きくなって行くのです。

 あなたの「生命の意義」も同様です。あなたが今まで生きて、活動したことの全
て・・・人と合い、仕事をし、家族や周囲の人の世話をし、あるいは他の植物や動
物を育てたり、助けたり、保護したりすること。これら、あなたの全ての生命活動、
あなたの生きた証である、あなたの「生命の意義」は、永遠に消滅しません。
 そしてあなたの「生命の意義」は、今後、何億年も影響を及ぼし続けて行きま
す。たとえ人類が滅んだとしても、あなたの「生命の意義」は絶対に消滅しません。
 あなたの「生命の意義」は、見かけ上は、ほんの僅かなものにしか見えません。
しかしその影響は、無限の時間をかけて、無限に波及し、無限に拡大して行きま
す。

 あなたが生きて存在したことの証である、あなたの「生命の意義」は、
永遠に存在し、無限大の影響力を持つのです。




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