「大生命」に愛されていること  
                                   2002年7月7日 寺岡克哉


 「大生命が意志を持つとか、あるいは「大生命の意志によって我々は愛
されている!」
などと言うと、これまた、不審に思う人が多いのではないかと思い
ます。

 しかしながら、例えば細菌などのような、脳を持たない簡単な微生物でさえ、ある
種の「意志」といえるものを既に持っているのです。
 それは、細菌などが「生物として自発的に」栄養素を取り込もうとしたり、増殖をし
ようとする意志です。私はこれを、「生命として生きる意志」と呼んでいます。
 「生命として生きる意志」とは、生命が自発的に生き、繁殖し、「生命」というものが
この世に存在し続けようとする意志です。
 「生命として生きる意志」を持たない単なる物質、例えばコンピューター制御の精
密工作機械などは、それがいくら複雑な構造をしていても、いくら活発に動いていて
も、いくら製品を大量に生み出しても、それを「生命」とは絶対に言いません。精密
工作機械は、自発的に生きようとする意志を持っていないからです。だから「生命
として生きる意志」とは、生命の定義のようなものです。

 ところで大生命は、地球の全ての生物で構成された「生命維持システム」です。
大生命は、地球の生態系のバランスを上手に取りながら、地球上にできるだけ
たくさんの生命を生かそうとします。そしてこれは、地球の生物全体(大生命)が
「自発的」に行っている働きです。
 だから大生命は、「地球の全ての生命を生かそうとする意志」とか、あるいは
「地球の生命を存続させようとする意志」を持っていると言えるのです。

 ところで、地球で最初の生命は40億年前に簡単な生命体として誕生しました。
つまり「大生命」は、40億年前に簡単な生命体として生まれたのです。
 そしてそれが増殖し、進化し、多種多様な生物に分かれて行きました。そして今
では、3000万種とも言われる、大変に複雑で強力な、しかも安定した生態系に
発展したのです。これらは、「大生命の成長過程」と言えるものです。
 大生命は、成長し、強力になり、「生命」というものを永続させようとする自発的
な働き(意志)を持っているのです。
 このように、生命の進化や地球の生態系というような、大規模な時間とスケール
で生命現象を観察すると、「大生命の意志」といえるものが見えて来ます。それを
いくつか挙げてみると、だいたい次のようになります。

大生命の意志は、
 地球の全ての生命を育もうとします。
 地球上に出来るだけたくさんの生物を繁殖させようとします。
 地球上に出来るだけ多種多様の生物を生み出そうとします。また、そうすることに
よって、複雑で強力な、しかも安定した生態系を構築しようとします。
 海、陸、川、高山、空、寒冷地、熱帯、乾燥地、湿地など、色々な地球環境に生
物を適応させて生命圏を広げようとします。そして、可能な限り地球上を生物でいっ
ぱいにしようとします。
 世代交代や進化を繰り返しながら、「生命」というものを永遠に存在させ続けよう
とします。(大生命は、地球に最初の生命が誕生してから、既に40億年間も存在
し続けています。)

 このように「大生命の意志」は、地球に生きる全ての生命の存在を肯定します。そ
して前のエッセイ13でお話しましたように、生命の肯定とは「愛」のことですから、大
生命は「地球の全ての生命を愛している」と言うことが出来るのです。
 これが大生命の愛、「大愛」です。我々は、大生命の「大愛」によって愛され
ているのです。

 地球の全ての生命を生かそうとする、「大生命」の働き。
 出来るだけ多種多様な生命を育もうとする、「大生命」の働き。
 生命を永遠に存続させようとする、「大生命」の働き。
 これら「大生命」の働きの全てが、「大愛」なのです。

 酸素の供給も食料の供給も、全て「大生命」の働き、つまり「大愛」です。大生命
の「大愛」が存在しなければ、我々も全ての生命も、生きることが出来ないのです。
 「大愛」の全く存在しない場所とは、例えば「宇宙空間」です。宇宙空間には酸素
がなく真空です。もちろん食料もありません。生身の体で宇宙空間に放り出されれ
ば、我々は直ぐに死んでしまいます。
 このように「大愛」が存在しなければ、我々は10分たりとも生きてはいられない
のです。

 さらに、地球近傍の宇宙空間には、生物に有害な太陽の紫外線が降りそそいで
います。
 太陽の紫外線は大変に有害なもので、これを直接に浴びたならば、全ての生物
は確実に死んでしまいます。
 もちろん地球にも、太陽の紫外線は降りそそいでいます。それでも地球に生物
が住めるのは、大気の上層部に「オゾン層」というものがあるからです。オゾン層
は、太陽の紫外線の大部分を遮断してくれるのです。
 ところで、このオゾン層は酸素によって作られます。酸素が無いと、オゾン層は
出来ません。だからオゾン層は、「生物の働き」によって作られたものなのです。
 太古の地球には、大気中の酸素がまだ不足していて、オゾン層が形成されてい
ませんでした。そのような時代には、生物は水中にしか住めませんでした。水は紫
外線を遮断するからです。
 生物が陸上に進出できたのは、地球大気の上層部にオゾン層が形成されたか
らです。そしてこのオゾン層は、「生物が作ったもの」なのです。
 現在の地球環境が生物に適しているのは、地球の生物が何億年もかけて、地球
の環境を整備してきたからです。そしてこれは、地球の全ての生命を生かそうとす
る「大生命」の働き、「大愛」です。酸素を含む大気が存在し、オゾン層が存在する、
地球の環境そのものが「大愛」なのです。

 ところで、大気中の酸素は多くても少なくてもいけません。大気中の酸素が多くな
ると、物が燃えやすくなるからです。純粋な酸素の中では、鉄でさえ火花を上げて燃
えてしまいます。
 酸素の量が今以上に増えれば、世界中のいたる所で火事が起こります。特に、大
規模な森林火災が頻発するのではないかと思います。
 また、二酸化炭素の量も、多くても少なくてもいけません。「温室効果」と言って、二
酸化炭素は、太陽で温められた地球の熱を逃がさないようにする働きがあるのです。
 二酸化炭素が今よりも多くなると、地球の温暖化によって色々な不都合が起こりま
す。氷河が溶けて海の水位が上がり、水没してしまう国が出たり、地球の生態系が
大きく乱されたり、気象が大きく変動したりします。
 逆に、二酸化炭素が今よりも少なくなれば、地球は寒冷化して氷河期のようになっ
てしまいます。
 酸素の量や二酸化炭素の量は、地球の生物全体のバランスによって保たれている
のです。地球の生物全体が、いちばん良く生きられるように、「大生命」によって調節
されているのです。これも、「大生命」が出来るだけたくさんの生命を生かそうとする
「大愛」の働きです。
 また、森林や植物の繁茂で陸地の保水能力が高まり、陸の砂漠化を防止している
ことなども、「大愛」の働きの一つです。

 以上これまで述べて来ましたように、「大生命」には、生命全体をより良く生かそう
とする色々な働きが存在します。そしてその働きの全てが、大生命の愛、「大愛」な
のです。
 「大愛」の全く存在しない場所(例えば宇宙空間)では、どんな生物も絶対に生きる
ことは出来ません。

 あなたや私が生きることが出来るのは、大生命の「大愛」によって愛されて
いるからなのです。




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