日本の絶滅状況       2006年3月12日 寺岡克哉


 今回は、日本に住んでいる生物の「絶滅状況」について調べてみました。

 すこし詳しい資料が手に入ったので、さっそくご紹介したいと思います。

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 生物の種類      種数   絶滅   野生絶滅   絶滅の恐れのある種数と
                                   その割合(パーセント)
哺乳類         約200    4      0        47  (24)
鳥 類         約700   13      1        90  (13)
爬虫類           97    0      0        18  (19)
両生類           64    0      0        14  (22)
汽水・淡水魚類    約300    3      0        76  (25)
昆虫類       約30000    2      0       139  (0.5)
陸・淡水産貝類   約1000   25      0       251  (25)
クモ類・甲殻類等  約4200    0      1        33  (0.8)
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維管束植物      7087    17     12      1399  (20)
蘚苔類        約1800    0      0       180  (10)
藻 類        約5500    5      2        40   (0.7)
地衣類        約1000    3      0        45  (4.5)
菌 類        約16500   28     1        62   (0.4)
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 この表をみて最初に気がついたのは、「日本の状況はかなり深刻だ!」という
ことでした。

 まず、いちばん右のカッコの数字、「絶滅の恐れのある割合」を見てください。
 哺乳類と、汽水・淡水魚類、陸・淡水産貝類は、なんと4種に1種に絶滅の恐れ
があります。また、爬虫類と両生類、維管束植物も、5種に1種というすごい割合
です。
 (ところで「維管束植物」とは、ふつうに葉や茎(幹)があり、種子をつける草や木
のことです。あと、シダ植物もこの仲間に入ります。)

 もしも、あとたった数10年から100年ぐらいで、こんなにすごいスピードで絶滅
が進行するならば、それはまさに「超大絶滅」としか言い様がありません。
 こんな割合で絶滅が進行すれば、あと400年か500年で、それらの動植物が
すべて絶滅してしまいます。
 これは、過去に起こった大量絶滅の、じつに1000倍のスピードなのです!

 ところで、表の右から3番目の数字の「野生絶滅」というのは、野生の状態では
絶滅したけれども、人工飼育や栽培などにより、かろうじて種が保たれているもの
です。
 たとえば鳥類に、野生絶滅が1種ありますが、これは「トキ」のことです。現在トキ
は、人工孵化や飼育などで80羽ほどになっています。


 また、「絶滅」してしまった生物に、どんなのがあるのかも気になる所だと思いま
す。以下に、すこしだけ例をご紹介しましょう。

絶滅した哺乳類 4種
 オキナワオオコウモリ、オガサワラアブラコウモリ、エゾオオカミ、ニホンオオカミ。

絶滅した鳥類 13種
 ハシブトゴイ、カンムリツクシガモ、マミジロクイナ、リュウキュウカラスバト、
オガサワラカラスバト、ミヤコショウビン、キタタキ、ダイトウミソサザイ、
オガサワラガビチョウ、ダイトウウグイス、ダイトウヤマガラ、ムコジマメグロ、
オガサワラマシコ。

絶滅した、汽水・淡水魚類 3種
 クニマス、スワモロコ、ミナミトミヨ。

 などの動物たちが絶滅してしまいました。まだまだ他にも、たくさんいます。
 正直に言うと、私の知らない生物や、見たこともない生物がほとんどです。しか
しながら、絶滅した生物の名前をならべ挙げるだけでも、事の深刻さがひしひしと
感じられます。

                * * * * *

 つぎに、「絶滅の恐れのある種」について、もう少し詳しく見てみましょう。

 つまり、「絶滅する恐れがある」と言っているけれども、
 「絶滅する恐れが、どれぐらいあるのか?」
 「本当に、すぐ絶滅してしまうのか?」
ということに関してです。それについては、さらに以下の、3つのカテゴリーに分け
られています。

絶滅危惧TA類 ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種。
絶滅危惧TB類 TA類ほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が
            高い種。
絶滅危惧U類 絶滅の危険が増大している種。

 つまり「絶滅の恐れのある種」には、上の3つの場合が含まれているのです。
 以下に、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、汽水・淡水魚類について、それぞれの
カテゴリーに含まれる数を表にしてみました。

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             絶滅の恐れのある種数   TA類   TB類   U類
哺乳類              47           11     20     16
鳥 類              90           17     25     48
爬虫類              18            2      5     11
両生類              14            1      4      9
汽水・淡水魚類         76           29     29     18
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 たしかに、これらの生き物が、あと何年で絶滅してしまうのか正確には分からな
いでしょう。
 しかし私は、このまま何もしないで手をまったく打たなければ、TA類とTB類は
あと数10年で、U類でもあと100年ぐらいで、絶滅してしまうのではないかと思っ
ています。とくに根拠はないのですが、上に書いた「絶滅危惧種の定義」をみる
かぎり、どうしてもそのような気がしてなりません。

 「絶滅」の問題は、調べれば調べるほど、気が重くなり滅入ってきます。
 しかし、まず最初に「正確な事実」を知らなければ、なにも始まらないと私は
考えています。



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