CO2はどこまで増えるか 2006年5月7日 寺岡克哉
前のエッセイ218でお話しましたが、人類がこのままのペースで化石燃料を使い
続けると、あと340年ぐらいで、大気中の二酸化炭素が2000ppmを越えてしま
います。
もしもそうなったら、いまの地球の生態系は「壊滅」してしまうでしょう。たぶん
地球にすむ生物の、90パーセント以上の種が絶滅してしまうのではないでしょ
うか。
しかしながら、
「地球の資源として石油の量には限界があり、これから後340年も、もつはず
がない!」
「だから、二酸化炭素が2000ppmを超えるなど、ありえないのだ!」
と、考えている人がいるかも知れません。
今回は、そのことについて考えてみたいと思います。
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ところで、石油の採掘可能な年数は、あと40年ぐらいと言われています。
しかしながら、じつは30年以上も前からずっと、「石油はあと30年で枯渇する!」
と、言われ続けてきたのです。ところが現在でも、そんなことになっていません。
それは、「新しい油田」が次々と見つかって来たからです。
だから、「二酸化炭素が原理的にどこまで増えるのか?」を考察するためには、
地球全体にどれだけの資源が存在するかという、「究極埋蔵量」で考えなければ
なりません。
しかも化石燃料として使えるのは、石油だけでなく、天然ガスや石炭もあるの
です。
これら、石油、天然ガス、石炭についての「究極埋蔵量」と、「1年間に採掘され
る量」。そして、前者を後者で割った、資源があと何年もつかという「もつ年数」
は、つぎの表のようになります。
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石油
究極埋蔵量 2000000000000バーレル
1年の採掘量 21100000000バーレル
もつ年数 95年
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天然ガス
究極埋蔵量 204000000000000立方メートル
1年の採掘量 2010000000000立方メートル
もつ年数 101年
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石炭
究極埋蔵量 6900000000000トン
1年の採掘量 3180000000トン
もつ年数 2170年
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ところで「究極埋蔵量」は、現時点において埋蔵が未確認のところは、「推定」
をして出しています。だから、すこし不正確なところがあります。
また、「メタンハイドレート」などの新たな資源が加われば、さらに大幅に増える
可能性もあります。
しかしとにかく、ここでは上の表を参考にして、考えてみることにしましょう。
* * * * *
表によると、たしかに石油や天然ガスは、340年も、もつはずがありません。
しかし、「石炭」のところを見てください!
石炭の場合は、この先2170年も、もつのです!
ところで石炭は現在、人類全体のエネルギーの、およそ3分の1をまかなって
います。
それを考えに入れて、もしも石油と天然ガスが枯渇して石炭だけになっても、あと
700年はもつ計算になります。
だから人類が、石炭をも見境なく使いつづければ、やはり340年後ぐらいには
二酸化炭素が2000ppmを超えてしまうでしょう。
そしてまた、石炭によって二酸化炭素が固定される前の、はるか遠い昔・・・
つまり4億年ぐらい前の二酸化炭素濃度は、3000ppmから4000ppmていど
だったと考えられています。
だから石炭を燃やし尽くせば、その頃の大気にもどってしまうことになり、二酸化
炭素がそれぐらいの濃度まで上がるのも当然なのです。
つまり今回の結論として、
もしも化石燃料をすべて燃やし尽くしたら、大気中の二酸化炭素濃度は、
原理的に3000ppmから4000ppmぐらいまで増加し得る!
と、言うことができます。
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この先、もしも「新エネルギー」が開発されなければ、人類は石炭をも見境なく
使うかもしれません。
本当に人類がエネルギーに困ったら、そうなってしまうような気がしてなりま
せん。
それで私は、「新エネルギーの開発」が、地球温暖化にとっていちばん本質的
な解決策だと考えているのです。
(新エネルギーについては、また別の機会にお話したいと思います。)
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