日本におけるCO2排出    2006年5月14日 寺岡克哉


 ここでは、日本における二酸化炭素の排出について、すこし詳しく見てみたい
と思います。

 さっそくですが、それぞれの分野における二酸化炭素の排出は、次のように
なっています。

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 分野            直接排出              間接排出
            100万トン  パーセント    100万トン  パーセント

 発電         398.8    31.8       85.8    6.8


 工場など      380.6    30.2       477.6   37.9


 自動車や船舶   252.9    20.0       260.2   20.6
 航空機など

 店舗やオフィス    89.9     7.1       195.9   15.5
 ビルなど

 家庭          65.9     5.2       169.7   13.5


 石灰石消費等    48.0     3.8        48.0    3.8


 プラスチックや    23.3     1.9        23.3    1.9
 廃油の焼却

 その他         0.0                −1.0


 合計       1259.4               1259.4
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 上の表は、それぞれの分野における、100万トンを単位とした二酸化炭素の
排出量と、その割合をパーセントで示したものです。
 そしてこれは、「直接排出」と「間接排出」の、二つの場合について示されてい
ます。

 「直接排出」というのは、直接に出している二酸化炭素のことです。
 たとえば発電所は、たくさんの石油や石炭を燃やして、電気をつくっています。
だから「発電」における直接排出は、いちばん大きな値になっています。

 一方「間接排出」は、発電所の出す二酸化炭素を、それぞれの分野で使ってい
る「電気の量」によって配分したものです。
 それで「発電」における間接排出は、それぞれの分野に振り分けられて、だいぶ
小さな値になっているのです。

 そして、たとえば「家庭」の分野を見ると、直接排出にくらべて間接排出は、2.6
倍もの大きな値になっています。
 これは、「電気」を使っているからです。つまり、コンロやストーブなどでガスや
石油を燃やさなくても、電気を使えば、二酸化炭素を出していることになる
です。

 もしも電気の使う量が減れば、発電所は、たくさん電気を作る必要がなくなりま
す。そうすると発電所で燃やす、石油や石炭の量が減ります。結果として、排出
される二酸化炭素の量が少なくなるのです。

 そしてこれが、節電をすると二酸化炭素の排出が減らせる理由なのです。


                 * * * * *


 ところで前にも触れましたが、人間「一人当たり」の二酸化炭素の排出につい
て、もういちど見てみましょう。

          一人当たりの二酸化炭素排出量
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         アメリカ         19.7トン
         日本           9.3トン
         西側先進国平均   12.5トン
         発展途上国平均    2.0トン
         世界平均        4.1トン
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 上のデータから、もしも人類全体の排出量をそのままにして、一人当たりの排出
量を「平等」にしたら、一体どうなるでしょう。つまり、地球に住むすべての人間に
対して、二酸化炭素の排出量を、世界平均の4.1トンにするわけです。

 そうすると途上国の人々には、およそ2倍の増加をみとめ、先進国の人々は、
およそ70パーセントの削減をしなければなりません。
 とくにアメリカの場合は、およそ80パーセントの削減。日本の場合は、およそ60
パーセントの削減になります。
 地球温暖化の問題について、発展途上国の人々を説得しようとするならば、
最低でもこれぐらいのことをしないと、絶対に納得してもらえないでしょう。

 そしてもう一度、はじめの表の「間接排出」を見てください。
 分野別で、「工場など」の37.9パーセントと、「自動車や船舶、航空機など」の
20.6パーセントを足すと、およそ60パーセントの二酸化炭素排出になります。
 つまり日本で、およそ60パーセントの二酸化炭素を削減するためには、たとえば
国内のすべての工場をストップさせ、自動車を1台も走らせてはなりません。
 これは、とても非現実的なことです。そんなことは、絶対に出来ないでしょう。

 しかも、もし本当にそのようにしても、人類全体における二酸化炭素の増加は、
今までと何も変わりません。だから、やはり340年後には、二酸化炭素が2000
ppmを超えてしまうでしょう。(エッセイ218参照)

 ゆえに、新エネルギーを開発しなければ、どうにもならないのです!

 そしてこれも、地球温暖化の問題に対して、「新エネルギーの開発」がいちばん
根本的だと、私が考える理由なのです。


(*注意)
 誤解のないようにお断りしますが、「省エネ」や「植林」が無意味だとは、私は
すこしも思っていません。省エネや植林は、とても大切です。しかし、それらだけで
温暖化の根本的な解決は、不可能だと思っています。
 省エネや植林と、新エネルギーの開発との、「合わせ技」が必要だと考えてい
ます。



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