バイオマスについて3     2006年6月25日 寺岡克哉


 前回では、以下のような「廃棄バイオマス」

(1)農業廃棄物
(2)畜産廃棄物
(3)林業・林産廃棄物
(4)食品産業廃棄物
(5)都市ゴミ
(6)下水の汚泥

 のうち、(1)から(4)についてお話しました。今回はその続きを、お話したいと
思います。

 (前回のエッセイ226を読んでいない方は、申し訳ありませんが、まず先にそちら
を読んでください。)


                 * * * * *


(5)都市ゴミ
 都市からでるゴミの中には、紙、綿や毛などの有機繊維、そして生ゴミなどの
「バイオマス」が含まれています。
 日本では、都市からでるゴミのおよそ7割が、このようなバイオマスで占められて
いるのです。

 その「都市ゴミ」の中で、日本の家庭からでる「生ゴミ」は、年間1020万トンにも
なります。そのエネルギーを石油に換算すれば、およそ60万トンの石油に相当し
ます。


(6)下水の汚泥
 日本では、下水の処理で発生する「汚泥」が、毎年4億立方メートルにもなり
ます。
 この「汚泥」からも、メタンガスとしてエネルギーを取り出すことができます。その
エネルギーを石油に換算すると、およそ180万トンの石油に相当します。


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 以上、これまで色々な「廃棄バイオマス」のエネルギー量を、ザッと見てきました。

 ところで日本では、これら「廃棄バイオマス」の総エネルギー量は、一体どれぐらい
になるのでしょう?

 詳しい研究によると、日本で1年間にでる「廃棄バイオマス」の総エネルギー量は、
石油に換算して4200万トンに相当します。
 そしてこれは、日本で1年間に使うエネルギーの、じつに7.4パーセントに当たる
のです。

 しかしながら、廃棄バイオマスのすべてを、エネルギー源として使える訳では
ありません。
 なぜなら、たとえば「稲わら」などの農業廃棄物の一部は、家畜の飼料や、堆肥の
原料として使われているからです。
 また、家畜の糞などの「畜産廃棄物」の一部も、肥料として使われています。
 あるいは、木材工場からでる「切れ端」や「おがくず」など、林産廃棄物の一部は
パルプとして紙の原料に使われています。そして「古紙」の多くも、再生紙として
再利用されています。

 このような、エネルギー以外に「すでに利用されている廃棄物」を差し引くと、エネ
ルギーとして使えるバイオマスの総量は、石油に換算して3200万トンになります。

 ところが現在、エネルギー源として使われている廃棄バイオマスは、石油に換算
して550万トン分にすぎません。
 だから、廃棄バイオマスを有効に活用すれば、石油に換算して2650万トン
分のエネルギーが、さらに取り出せるのです!
 そしてこれは、日本で1年間に使うエネルギーの、じつに4.7パーセントに
相当します。


 以上が、日本における廃棄バイオマスの、エネルギー量に関する結論です。


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 ところでバイオマスは、もともとは「生物」として、生命を持っていたものです。
 つまり、バイオマスエネルギーは、生命のエネルギーなのです!

 だからバイオマスは、単なる「物質的な資源」として考えるのではなく、
「生命の尊さ」というものも、少しは考えなければならないと私は思います。

 その意味でも、「ただ無駄に捨てているだけ!」というようなバイオマスを、限りなく
ゼロに近づけていくべきだと思うのです。



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