太陽光発電 3         2006年7月23日 寺岡克哉


 前回でお話しましたが、太陽光発電は、二酸化炭素をまったく出さない訳ではあり
ません。

 なぜなら、「太陽電池を作るとき」に、二酸化炭素を出しているからです。

 太陽電池を作るためには、原料を運んで精製したり、部品を作って組み立てたり
しなければなりません。そのためには、どうしても「エネルギー」が必要です。
 そして今のところ、結局そのエネルギーは化石燃料に頼っています。だから太陽
電池を作るときに、二酸化炭素がどうしても出てしまうのです。

 ところで「従来の太陽電池」は、このような「作るときのエネルギー」が大きかった
ので、二酸化炭素の削減にあまり貢献できませんでした。

 しかし「現在の太陽電池」は、「作るときのエネルギー」が少なくなったので、二酸化
炭素の削減にたいして、十分貢献できるものになったのです。
 (ここの詳しい話は、前回のエッセイ230を見てください。)

 今回は、それがどれぐらいの進歩なのか、もう少し具体的に見ていきたいと思い
ます。そして、他の発電方法との比較も行ってみたいと思います。


                  * * * * *


 ところで、発電の効率をできるだけ良くし、可能なかぎり二酸化炭素を出さない
ように工夫された「最新鋭の火力発電」は、1キロワット時(1kWh)の電力を発電
するのに、730グラムの二酸化炭素を出します。

 そして一方、従来の太陽電池は、1キロワット時の発電をするのに300グラム
の二酸化炭素を出します。
 これは、太陽電池を作るときに出した二酸化炭素を、太陽電池の耐用年数で
ある20年間の発電量で割ったのが、その値なのです。

 ところが現在の太陽電池では、1キロワット時の発電をするのに、37グラムの
二酸化炭素しか出しません!

 これは、従来の太陽電池の8分の1、最新鋭の火力発電の20分の1です。太陽
電池は、これほどまでに進歩したのです。

 ちなみに風力発電も、風車を作るときに二酸化炭素を出しています。
 上と同じように、耐用年数(この場合は30年間)の発電量でそれを割ると、1キロ
ワット時あたり、73グラムの二酸化炭素を出している計算になります。

 さらには、水力発電も、原子力発電も、まったく同じような計算ができます。それら
を表にまとめると、次のようになります。


   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      発電の種類          1キロワット時(1kWh)の電力を発電
                        したときに排出される二酸化炭素

     最新の火力発電               730グラム
     従来の太陽電池               300グラム
     風力発電                     73グラム
     現在の太陽電池              37グラム
     原子力発電                   25グラム
     水力発電                     21グラム
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 上の表を見ると、やはり従来の太陽電池は、二酸化炭素の削減にまったく貢献
しない訳ではありませんが、大きな労力と多額のお金をかけてまで、新エネルギー
として普及させるほどの価値があるとは、言い難いのではないでしょうか。

 しかし現在の太陽電池は、その価値の十分にあることが一目瞭然です。現在の
太陽電池は、風力発電と比べても、その半分しか二酸化炭素を出さないのです。


                 * * * * *


 ところで・・・ 原子力発電は、ほんとうに二酸化炭素を出しません。

 二酸化炭素の問題だけを見たら、原子力は理想のエネルギーかもしれません。
 じじつ、二酸化炭素の増加による地球温暖化とのからみで、原子力を推し進め
ようという動きも見られます。

 しかし原子力は、放射性廃棄物を出します。だから、もうこれ以上は増やさない
方が、賢明のように私は思います。

 使用済み核燃料の中には、ストロンチウム90や、アメリシウム241といった
放射性物質が多く含まれています。
 そして例えば、1トンのストロンチウム90の放射能が、100万分の1の、1グラム
のストロンチウム90の放射能まで減少するのに、580年の時間がかかります。
 また、1トンのアメリシウム241が、1グラムの放射能にまで減少するには、
8640年の時間がかかるのです。

 そして現在、日本全国の、52基の原発から発生する使用済み核燃料は、年間
約1000トンと言われています。
 現状のままでも、10年間で10000トン、100年間では100000トンの使用済み
核燃料が発生して行くことになります。

 これらを、一体どこに保管しておくのでしょう?

 そして、少なくとも自然の状態で存在する、天然のウラン鉱石と同じぐらいの放射
能レベルまで下がるのに、いったい何百年のあいだ、保管しなければならないの
でしょう?

 もしかしたら何千年か、何万年なのでしょうか?

 ひょっとしたら何億年なのでしょうか?

 そこら辺のことを、万人が理解できるように明らかにされなければ、原子力発電
の推進に賛成するわけには行きません。


                 * * * * *


 以上のことを考慮すると、将来的なエネルギーとしては、やはり太陽光がいちば
ん有望ではないかと私は思うのです。



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