森林によるCO2の固定 6

                               2006年11月26日 寺岡克哉



 これまで、「森林による二酸化炭素の固定」について、ずいぶん長くお話してきま
した。

 今回は、そのまとめとして、「植林」のすぐれている点について整理したいと思い
ます。

 しかしながら最後に、「植林だけですべてが解決する訳ではない!」ということ
を、もういちど確認したいと思います。


                 * * * * *


 たしかに「植林」は、地球温暖化に対して、とても優れた対策です。

 エッセイ245で具体的にお話しましたが、「森林の消失」によって放出される
二酸化炭素は、化石燃料の消費によって生じる二酸化炭素の、およそ3分の1
に匹敵する量です。

 だから「森林の消失」を防ぐだけで、たぶん、世界のすべての自動車から排出さ
れる二酸化炭素をゼロにするのよりも、さらにそれ以上の二酸化炭素の削減が
期待できるでしょう。


 そしてさらには、エッセイ246でお話したように、「植林」をして森林の面積をさら
に増やして行くこと。
 その上さらに、エッセイ247でお話したように、「適度な伐採」をして木材を建築物
や家具などに使って行くこと。
 このようにすれば、森林による二酸化炭素の削減効果を、ますます増大させる
ことが出来るでしょう。

 しかもエッセイ248でお話したように、「森林」による二酸化炭素の固定は、「海洋
生物」による二酸化炭素の固定(施肥法)よりも、肥料の消費が少なくて済みます。


 ところで、森林による二酸化炭素の固定は、工場などから出る二酸化炭素を分離
回収する必要がありません。
 また、対策を実行したことによって生じる、環境に対する「悪影響」の心配もありま
せん。
 だから、エッセイ239でお話した「地中保存」や、エッセイ240エッセイ241
お話した「海洋投棄」よりも、優れた対策技術であるのは間違いありません。


 このように「植林」は、二酸化炭素の大きな削減効果が期待でき、ほかの対策法
にくらべても、すぐれた点がたくさんあるのです。


                 * * * * *


 しかしそれでも、「植林」はオールマイティではありません!

 植林さえ行えば、すべて安心という訳ではないのです!


 たとえばエッセイ218でお話したように、 このままどんどん(指数関数的に)
二酸化炭素が増え続ければ、いくら植林をしても間に合わないでしょう。

 そしてエッセイ220でお話したように、もしも化石燃料をすべて使いきるまで
消費をやめなかったら、二酸化炭素濃度は3000ppmから4000ppmぐらい
まで増加してしまうでしょう。

 大気中の二酸化炭素が、石炭や石油として固定されるのは、ほんの少しずつ
です。
 今よりもっと温暖な気候で、植物がたくさん生い茂っていた「太古の地球」でさえ、
何千万年も何億年もの時間をかけて、少しずつ現在の二酸化炭素濃度まで下げ
てきたのです。

 だから、どんなに植林をして「緑の地球」にできたとしても、たった数百年の間に
化石燃料を燃やし尽くしてしまったら、それを元にもどすのに、やはり何千万年
も何億年もの時間を必要とするでしょう。

 ゆえに、いくら植林を進めたとしても、化石燃料を無制限に使って良いわけ
ではないのです。


 やはり「省エネ」や、「新エネルギー」の開発と普及は、絶対に必要不可欠
なのです!



 (蛇足ですが、今後たった数百年の間に、二酸化炭素濃度が数千ppmまで
増加してしまったら、「温暖な緑の地球」ではなく、生物の90パーセント以上が
死滅する「生態系の壊滅」が起こります。それはエッセイ217で考察しています。)



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