サンゴへの影響 2 2008年1月20日 寺岡克哉
前回は、海水温の上昇による「サンゴの白化現象」についての途中で
した。
今回は、その続きです。
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1997年の半ばから1998年の末にかけて、世界中で大規模な
「サンゴの白化現象」がおこりました!
これは、今までに起こった白化現象うちで、「過去最大」のものと
言われています。
その時のサンゴの白化は、太平洋、大西洋、インド洋、紅海、ペルシャ湾、
地中海、カリブ海沿岸の、少なくても32ヶ国で起こりました。
この激しい白化現象により、とても多くのサンゴが死滅してしまったの
です。
たとえば、バーレーン、モルディブ、スリランカ、タイ、シンガポール、タンザ
ニアなどの浅い海域では、95%に近いサンゴが死滅しました。
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そしてこれは、わが国でも例外ではありませんでした。
1998年には、日本でも大規模なサンゴの白化が起こったのです。
その範囲は、沖縄など南西諸島の全域、高知県、徳島県、和歌山県、
そして八丈島に及んでいます。
とくに沖縄県の石垣島では、枝状コモンサンゴ、枝状ミドリイシ、塊状ハマ
サンゴの白化率が40〜80%と高く、とても悲惨な状況でした。
この石垣島の場合も、ほかの地域と同じように、海水温の上昇がサンゴ
の白化の主な原因です。
しかし、その上さらに梅雨時の2倍ちかい大雨が降り、それによって
「赤土」が流出しました。
そのことが「複合的な原因」となり、さらに大規模な白化をひき起こした
可能性があると考えられています。
ところで私自身も、沖縄に住んでいる方から、その当時の状況を教えて
いただく機会がありました。
それによると、白化の原因は海水温の上昇なのですが、さらに1998年
は、台風が一つも沖縄には接近しなかったそうです。
もしも台風が接近した場合は、下層の冷たい水と混ざり合うためか、水温
が2℃ほど下がるそうです。しかしこの年は、それがありませんでした。
そして沖縄本島では、いつも大体28℃ぐらいの水温でおちついている
のですが、その年は30℃を超える水温になる所があったそうです。
(前回のエッセイ308で話してますが、サンゴは30℃を超えると、生きる
ことが出来ません。)
さらには、太陽光ですぐに温まってしまうような、ごく浅い水深に棲んで
いるサンゴたち・・・ それらは、ほぼ死滅したそうです。
10年ちかく経った現在では、少しずつですが回復の兆しが見えていま
す。しかしながら、当時サンゴ礁だったところが、未だにコケの生えた岩場
になっている所もあるそうです。
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この1998年は、グレートバリアリーフにおいても、それまで起こった
うちで最も激しく、しかも広範囲な、サンゴの白化現象がおこりました。
ところで「グレートバリアリーフ」は、オーストラリアの北東にある、世界
最大のサンゴ礁です。
それは300ヶ所の独立したサンゴ礁と、大小900あまりの島々からなり、
全長は2000キロメートルもあります。これはちょうど、日本の北海道から
九州までと同じぐらいの長さになります。
そのような広大な場所に、400種のサンゴと、1500種もの魚が棲んで
いると言われています。
この1998年に、グレートバリアリーフの654ヶ所において、大規模な
「空中観測調査」が行われました。その範囲は、グレートバリアリーフ全体
の、23%のサンゴ礁にあたります。
その結果、沿岸サンゴ礁のうちの67%が「高水準の白化」をしており、
また、沿岸サンゴ礁の25%が「非常に激しい白化」をしていました。
ここで、
「高水準の白化」とは、サンゴの10%以上が白化している状態。
「非常に激しい白化」とは、サンゴの60%以上が白化している状態
のことです。
以上、ここまでお話して来たように、1998年には世界の各地において、
「大規模なサンゴの白化現象」が起こったのでした。
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ところで・・・
IPCC第4次報告書では、地球温暖化による「気温の上昇」と、「サンゴ
の関係」も予測しています。
それによると、1980年〜1999年の世界の平均気温にくらべて、
0℃〜1℃の気温上昇で、サンゴの白化の増加。
1℃〜2.5℃の気温上昇で、ほとんどのサンゴが白化。
2.5℃以上の気温上昇で、広範囲に及ぶサンゴの死滅。
が起こると予測しています。
そして、それをまるで暗示するかのように、昨年(2007年)の夏には、
石垣島と西表(いりおもて)島のあいだに広がる「石西礁湖」(せきせいしょ
うこ)において、大規模なサンゴの白化が起こりました。
石西礁湖は日本最大のサンゴ礁ですが、この場所における2007年の
被害は、「過去最悪」と言われた1998年の白化にも匹敵するとされてい
ます。
もう既に、いつどこで「大規模なサンゴの白化」が起こっても、まった
く不思議ではない状況になっているのです!
その上さらに、「海水の酸性化」がサンゴたちを襲うことになります。
それについては、次回にお話したいと思います。
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