地球温暖化の原因はCOか? 1
                             2008年6月8日 寺岡克哉


 以前のエッセイ319〜324では、「地球温暖化が本当に起こっている
のか?」について、お話しました。

 そしてエッセイ325〜328では、「本当に化石燃料の使用が原因で、
大気中の二酸化炭素が増えているのか?」について見てきました。


 それらのエッセイによって、

 地球温暖化が起こっているのは明白であり、疑う余地がないこと。

 大気中の二酸化炭素が増えている原因は、化石燃料の使用しか
あり得ないこと。


 が、分かって頂けたのではないかと思います。


 さて、これから、「二酸化炭素が、本当に地球温暖化の原因なのか?」に
ついて、見て行きたいと思います。

 その最初として今回は、地球温暖化への懐疑論者たちが主張していること
を、大まかにまとめてみたいと思います。


                * * * * *


 まず話の始めに、IPCCの第4次報告によれば、

 「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんど
は、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた”可能性が
かなり高い”」
となっています。

 この文章中にある「可能性がかなり高い」というのは、IPCC独特の表現で、
90%よりも高い可能性を意味します。

 つまりIPCCは、人類の出した温室効果ガスが、地球温暖化の原因で
ある可能性は90%以上
だと言っているのです。
 (もう常識になっていますが、人類のだす温室効果ガスの中で、いちばん
大きな影響をもつのが「二酸化炭素」です。)



 上のように、90%以上の高い可能性になった今となっては、ふつう常識的
に考えれば、この件に関して「もはや科学的な決着がついた!」と判断し
て、まったく問題ないでしょう。

 今はもう、「議論のための議論」を、延々とやっている場合ではありま
せん!

 できるだけ早急に、二酸化炭素対策への「具体的で社会的な行動」
を、いろいろと起こさなければならない時なのです!


 ヨーロッパの熱波、台風の巨大化、ツバルの水没、氷河の融解、サンゴ
の白化、北極の氷の融解・・・ すでに世界のあちらこちらで、地球温暖化の
影響が出はじめています。

 もう本当に、時間的な余裕が無くなっているのです。

 干ばつ、洪水、農業生産の低下・・・ 二酸化炭素対策が遅れれば遅れる
ほど、とくに発展途上国において被害が拡大し、問題がどんどん深刻になる
のは目に見えています。



 もはやそんな状況なのに、地球温暖化への懐疑論者たちは、さまざま
な「異論」を主張しています。
 (その目的は、「温暖化対策を手遅れにさせること」だとしか、私には思え
ないのですが・・・ )

 もちろん懐疑論者たちは、さまざまな理屈をつけて、自分たちの体裁を整え
ようとしています。

 たとえば、
 「地球温暖化の恐怖を煽りすぎだ。温暖化問題は、そんなに急ぐ必要は
ない。」
 「温暖化問題の他にも、やらなければならない緊急の課題はたくさんある。」
 「地球温暖化の原因は、二酸化炭素でないかも知れないので、それを探求
することも怠ってはならない。」

 などなどの論調が、ちまたに散見されます。このように懐疑論者たちは、
自分たちの立場を正当化しようとしています。たしかに、それだけを聞けば
一理あるのでしょう。そして本人たちも、本当にそう思って、そのような言論
活動をしているのかも知れません。

 しかし実際問題として、懐疑論者たちのやっていることは、「温暖化
対策を手遅れにさせること」以外の何ものでもありません!

 少なくても社会に対して、(本人たちの意思に関わりなく)そのように働き
かけているのは間違いありません。



 そしてまた、(どんな対策が優れているのかという問題はありますが)
たとえば省エネ、二酸化炭素の排出規制、自動車の利用規制、炭素税、
炭素取引など、いざ「具体的で社会的な温暖化対策」を実行するとな
ると、

 「いまの便利な生活を変えたくない!」とか、
 「経済成長がストップするかも知れない!」
 「たくさんの会社が倒産して、失業者が増えるかも知れない!」
などなどの心情から、

 「ウソでも良いから、懐疑論を信じたい!」という気持ちが、社会的な大衆
心理として生じるかも知れません。

 だから「揺れ返し」というか「後もどり」というか、地球温暖化への懐疑論
が、これから社会に蔓延するかも知れない恐れを、私は少なからず持って
います。



 しかしその一方で、温暖化対策は、すでに一刻の猶予もなくなっています。

 延々と「議論のための議論」をやっている余裕は、もはや全くありません。

 「具体的で社会的な温暖化対策」を実行に移すためにも、「議論のため
の議論」には、終止符を打たなければならないのです。

 私が今ごろになって、温暖化懐疑論への反証をやっているのは、そのよう
な理由によってなのです。


                * * * * *


 さて、懐疑論者たちが主張している「異論」を、以下にざっと挙げてみま
しょう。



 二酸化炭素による赤外線の吸収は飽和している

 地球は、太陽の光によって温められています。

 しかし一方で、温められた地球の熱は、「赤外線」として宇宙に放出してい
ます。つまり、地球は冷やされるわけです。
 この、「温められる熱の量」と「冷やされる熱の量」がうまくバランスして、
地球の温度が一定に保たれているのです。

 しかし二酸化炭素は、地球から放出される「赤外線」を吸収することにより、
宇宙に熱が逃げるのを防ぎます。それで地球が温暖化するわけです。

 ところが地球から放出される赤外線のうち、もしも二酸化炭素によって吸収
されるべきもの(二酸化炭素が吸収できる波長のもの)が、すでに全て吸収
されている(飽和している)とすればどうでしょう?

 もしもそうなら、もはや二酸化炭素による温室効果は関係なくなり、これ以上
いくら二酸化炭素が増えても、さらなる温暖化は起こらないはずです。

 まず懐疑論者たちは、このような異論を主張しています。



 水蒸気の温室効果の方が大きい

 地球大気の温室効果にたいして、最大の影響を及ぼしているのは、じつは
「水蒸気」です。

 いまの地球の大気では、温室効果のおよそ60%が「水蒸気」によるもの
です。ところが一方、二酸化炭素の寄与は、およそ30%ていどです。

 このように水蒸気の影響が大きいので、「少しくらい二酸化炭素が増えた
ところで関係ない」という主張です。



 オゾン層の破壊

 空の上にある「オゾン層」は、太陽の紫外線を遮(さえぎ)っています。

 しかし、フロンなどによってオゾン層が破壊されると、「太陽の紫外線」が
地上にも降りそそぐようになります。

 そうすると、それだけ「太陽の光が強くなった」のと同じことになり、そのため
に地球が温暖化しているという主張です。



 太陽の黒点周期

 太陽の表面には、「黒点」と呼ばれる、小さな「黒い染み」があります。

 その「黒点」の数は、太陽の活動が活発になると多くなります。
 しかし反対に、太陽活動が沈静化すると、黒点の数は減ります。

 ところで太陽の活動は、だいたい11年の周期で、活発化と沈静化をくり
返しています。なので太陽黒点も、およそ11年の周期で、増えたり減ったり
をくり返しています。

 しかしながら、太陽黒点の「11年周期」は、キッチリと11年なのではあり
ません。太陽の活動に応じて、11年よりもすこし短くなったり、反対にすこし
長くなったりします。
 たとえば太陽の活動が活発になると、その11年周期が短くなり、9.6年
ぐらいになります。
 しかし太陽活動が沈静化すると、その11年の周期が、11.8年ぐらいに
長くなるのです。

 この11年周期の長短と、地球の平均気温とが、よく一致しているという
研究報告があります。つまり、黒点周期が短いときは気温が高く、その反対
に長いときは気温が低くなっているのです。

 そのデータを根拠にして懐疑論者たちは、温暖化の原因は二酸化炭素
ではなく、太陽活動であると主張しています。



 宇宙線の減少

 地球には、「宇宙線」というのが降りそそいでいます。それは主に、高エネ
ルギーで宇宙を飛び交っている「陽子」です。

 その宇宙線が、地球の大気に衝突すると、さまざまなイオン(電気をもった
素粒子や原子核やプラズマ)を作ります。

 そうすると、それらのイオンが核になり、「小さな水滴」を作って、雲を形成
する可能性が考えられます。


 ところで、太陽の活動が活発になると、太陽風によって宇宙線が散乱され
ます。つまり太陽風が、宇宙線を蹴散らすわけです。

 そうすると、地球に降りそそぐ宇宙線の量が減ります。

 その結果、「雲の量」が減って、地表に太陽の光が多くあたるようになり、
それで温暖化が起こると言うのです。


 つまり、太陽の活動が活発になれば、宇宙線が減り、そのため雲も減って、
気温が上昇するという考え方です。

 その反対に、太陽の活動が沈静化すれば、地球に降りそそぐ宇宙線が
増え、そのため雲の量も増えて、地球は寒冷化します。

 地球温暖化への懐疑論者たちは、こんな異論も唱えています。


                * * * * *


 以上、ザッと挙げただけでも、さまざまな「異論」を懐疑論者たちは主張して
います。

 次回から、まず地球温暖化に対する「正当な考え方」を紹介したあと、それ
らの異論について見て行きたいと思います。



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