地球温暖化の原因はCOか? 3
                             2008年7月6日 寺岡克哉


 今回は、地球温暖化への懐疑論者たちが主張するように、

 二酸化炭素による温室効果が「飽和」しているのかどうかについて、

考えてみたいと思います。



 その「温室効果の飽和」とは、だいたい次のようなことです。

 まず地球は、太陽の光を受けて、温められています。
 しかしその一方で、温められた地球の熱は、「赤外線」として宇宙に放出して
います。つまり、地球は冷やされるわけです。

 この、「温められる熱の量」と「冷やされる熱の量」がうまくバランスして、
地球の温度が一定に保たれているのです。

 しかし二酸化炭素は、地球から放出される「赤外線」を吸収することにより、
宇宙に熱が逃げるのを妨(さまた)げます。それで地球が温暖化するわけ
です。



 ところが、地球から放出される赤外線のうち、

 もしも、二酸化炭素によって吸収されるべきもの(二酸化炭素が吸収できる
波長のもの)が、

 すでに今の二酸化炭素濃度で、すべて吸収されているとすれば、どうでしょ
う?

 もしもそうなら、もはや二酸化炭素による温室効果は関係なくなり、これ以上
いくら二酸化炭素が増えても、さらなる温暖化は起こらないはずです。

 二酸化炭素による「温室効果の飽和」とは、以上のようなことであり、懐疑
論者たちが主張するものです。


                 * * * * *


 しかし、懐疑論者たちの主張は、完全に間違っています!

 なぜなら、二酸化炭素による温室効果は、「飽和していない」から
です。




 それは、「金星」という実例によって、明確に証明されています。

 金星の表面温度は462℃もありますが、その原因は、二酸化炭素による
温室効果なのです。

 金星の大気は、地球大気の100倍の量があります。そして、その96%が
二酸化炭素です。つまり地球の大気と比べると、金星大気の二酸化炭素
の量は、およそ25万倍
になります。

 そのような大量の二酸化炭素があるせいで、金星の表面温度が462℃
という高温になっているのです。



 ところで、もしも金星の大気に温室効果がなかったら、金星の表面温度は
−50℃に下がってしまうでしょう。

 もちろん金星は、地球よりも太陽の近くにあります。だから、太陽から受け
る光の量は、地球の1.91倍あります。

 しかしながら、金星は厚い雲に覆(おお)われているため、太陽の光の78%
を反射してしまいます。なので、金星の地表にとどく太陽の光は、地球よりも
少ないのです。

 ちなみに、太陽光にたいする「地球の反射率」は30%なので、ちょっと比べ
てみましょう。

 金星: 1.91×(1−0.78)=0.42
 地球: 1×(1−0.30)=0.70
 金星/地球: 0.42/0.70=0.6

 つまり、金星の地表にとどく太陽の光は、地球に比べて6割の量しかありま
せん。それなのに、金星の表面温度は462℃にもなっているのです。すなわ
ちそれが、「二酸化炭素の温室効果」に他なりません。



 だから、もしも地球大気の二酸化炭素が、いまの25万倍に増えたと
しても(つまり、金星と同じぐらいまで増えたとしても)、

 二酸化炭素による温室効果は、決して飽和することがありません!


 それは、「金星」という実例によって、明確に証明されているのです。


 懐疑論者のなかには、すごく難しい理屈をこねくり回す者もいますが、上の
「事実」さえしっかりと押さえておけば、騙されることは絶対にありません。


                 * * * * *


 たしかに、二酸化炭素がいちばん吸収しやすい波長の、赤外線の場合。

 つまり、波長が15ミクロン付近の赤外線では、いまの地球大気の二酸化
炭素濃度でも、吸収率が100%になっています。そしてそれが、懐疑論者
たちの主張の根拠です。

 しかしながら、
 二酸化炭素が赤外線を一度吸収しても、
 ある割合で、ふたたび赤外線を「再放出」します。

 だから、いくら(一回の)吸収率が100%でも、赤外線を完全にシャットアウト
することは出来ません。
 なので、波長が15ミクロン付近の赤外線でも、地球から宇宙に放出されて
いるのです。
 そして事実、地球表面から放出されている波長15ミクロン付近の赤外線が、
人工衛星によって(つまり宇宙から)観測されています。

 ゆえに、波長が15ミクロン付近の赤外線(つまり、二酸化炭素がいちば
ん吸収しやすい赤外線)といえども、二酸化炭素による温室効果は、飽和
していません!




 さらには、波長が15ミクロンから少し離れた赤外線の場合。

 つまり波長が18ミクロンとか、13ミクロンの赤外線だと、現在の地球大気の
二酸化炭素濃度では、10%ぐらいしか吸収されません。

 だから、そのような波長の赤外線は、二酸化炭素が増えれば増えるほ
ど、まだまだ吸収されて行きます。




 上で話した「金星の実例」もふくめて、これらのことから、二酸化炭素による
温室効果が「飽和していない」のは明白です。


 だからこの先、二酸化炭素がさらに増えて行けば、地球温暖化もどんど
ん酷(ひど)くなって行くのは確実です!



                 * * * * *


 ただし、ちょっと注意しなければならない事があります。

 それは、温室効果の大きさが、二酸化炭素の量にたいして、単純に比例
する訳ではないと言うことです。

 つまり、二酸化炭素が増えれば増えるほど、たしかに温暖化も進んで行く
のですが、その進み方が、二酸化炭素の増加にくらべて鈍くなるのです。



 それは例えば、二酸化炭素が2倍に増えると、気温が3℃上昇するという
具合になります。

 しかしながら、二酸化炭素がさらに2倍に増えても(つまり最初の4倍になっ
ても)、気温がさらに3℃上昇するだけ(最初に比べて6℃の上昇)です。

 そして二酸化炭素がさらに2倍に増えても、さらなる気温の上昇は、やはり
3℃なのです(つまり、最初の8倍の二酸化炭素で、9℃の気温上昇)。

 もしも温室効果の大きさが、二酸化炭素の量に比例するのだったら、2倍
で3℃の上昇だとすると、3倍で6℃、4倍で9℃、8倍では21℃の気温上昇
にならなければなりません。
 しかし、そうはならず、二酸化炭素が増えれば増えるほど、気温の上がり
具合が鈍くなるのです。



 具体的には、産業革命前の二酸化炭素濃度である280ppmを基準に
すると、

 2倍の560ppmでは、産業革命前にくらべて3℃の気温上昇。

 さらに2倍の1120ppmでは、6℃の気温上昇となります。



 しかしながら、二酸化炭素が2倍に増えると、気温が3℃上昇するという話
には、ある幅で不確定なところがあります。つまり、本当は2℃かも知れない
し、あるいは4℃かも知れません。

 これは、将来の気温上昇を予測するのに、すごく重要な値です。なので
研究者たちは、その値を正確に求めるため、一生懸命に研究しています。

 いま得られている知見では、IPCCの第4次報告書によると、以下のように
なっています。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 平衡気候感度は、二酸化炭素濃度が倍増したときの世界平均気温の
上昇量として定義される。

 平衡気候感度は、2〜4.5℃の範囲(最良の見積もりは約3℃)である
可能性が高い(66%よりも高い可能性)。

 この上昇量が1.5℃未満である可能性はかなり低い(10%よりも低い
可能性)。

 またこの値が4.5℃よりかなり高くなる可能性は除外できないが、その
場合観測結果はモデルとあまり一致しない。
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 上のように厳密な話になると、どうしても不確定なところがありますが、現状
では仕方のないことです。研究者の方々には、なお一層の成果を期待したい
と思います。

 しかしとにかく、このさき二酸化炭素が増えて行くと、地球温暖化が進んで
しまうのだけは絶対に間違いありません。

 決して、二酸化炭素による温室効果が「飽和」することはないのです!



      目次へ        トップページへ