このままだと2050年にどうなるか? 2
                              2008年10月26日 寺岡克哉


 地球温暖化による、「すごく危険で大きな被害」を回避するためには、気温
の上昇を2℃以下に抑えなければなりません。

 しかし、なにも有効な対策をとることが出来ず、このまま人類が二酸化炭素
を出し続けてしまったら・・・

 もしも、そうなってしまったら、2050年には2.6℃の気温上昇になる
可能性が高い
と考えられます。

 今回から、そのような2.6℃の気温上昇が起こったときに、一体どんな影響
が出てくるのかを、すこし具体的に見て行きましょう。


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 (※おことわり)

 しかしながら、ぴったりと気温が2.6℃上昇した場合の、研究報告という
のは、なかなか見つけることが出来ませんでした。

 なので、なるべく2.6℃の気温上昇にちかい研究報告を、紹介して行き
たいと思います。

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 まず、前回の最後のところで話しましたが、地球温暖化の影響について
見ていく項目として、

 (1)異常気象
 (2)海面上昇
 (3)生態系への影響
 (4)農業や漁業への影響
 (5)健康被害
 (6)その他

 を挙げました。

 さっそく、(1)の異常気象から、見て行くことにしましょう。


               * * * * *


(1)異常気象

 地球温暖化が進むと、

 「激(はげ)しい豪雨」が降って、洪水になったり、

 土地が乾燥して、「干ばつ」が起こりやすくなったり、

 「熱波」に襲(おそ)われて、気温が異常に高くなったりします。


 以下、それらについて、さらに詳しく見て行きましょう。


               * * * * *


 豪雨と洪水


 地球が温暖化すると、海水が温められて、「水の蒸発」が活発になり
ます。


 その蒸発した水(つまり水蒸気)は、温められた空気に乗って、空の上
へ運ばれます。

 そうすると、上空はとても寒いので、そこで水蒸気が冷やされ、ふたたび
元の水にもどります。

 結局それが、「激しい豪雨」となって、地上に降りそそぐことになります。

 つまり、海水の蒸発量が多くなれば、それだけ雨の量も多くなるのです。



 また、海から蒸発する「水蒸気」は、台風にエネルギーを供給します。

 つまり水蒸気は、「台風のエネルギー源」になっているのです。

 だから地球温暖化が進むと、台風が強力になり、巨大化します。



 このような理由で、地球が温暖化すればするほど、暴風雨や洪水による
被害が増えていきます。

 IPCC(世界の科学者による会合)が、行った予測によると、

 そのような暴風雨や洪水による被害の増加は、1℃の気温上昇から
起こり始める
とされています。



 現在すでに、世界の平均気温が0.76℃上昇しています。

 今年も東海地方で、大雨による洪水が起こりましたね。

 また近年では、台風も強力になっています。

 あと10年もしないうちに、800ヘクトパスカル台の、ハリケーンや台風が
現れるような気がしてなりません。
 (そのように思う理由として、たとえば2005年にアメリカを襲ったハリケーン
「カトリーナ」の、中心気圧は902ヘクトパスカルでした。)

 そして「爆弾低気圧」や、「ゲリラ豪雨」など、昔にはなかった異常気象が
次々と現れています。

 2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、そのような被害がますます
増えて行くのは確実でしょう。



 またIPCCの予測によると、気温が2.7℃上昇すれば、さらに「海面上昇」
の影響も加わって、

 世界全体で、毎年、何100万人もの人々が、洪水の被害に遭(あ)うよう
になり始めます。

 つまり、100万人規模の被害者をだす大洪水が、世界のあちらこちらで、
毎年いくつも起こり始めるのです。



 なので、

 2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、


 100万人規模の被害者をだす「大洪水」が、

 毎年のように、世界のどこかで起こっても、

 まったく不思議ではないでしょう。



               * * * * *


 干ばつと水不足


 地球が温暖化すると、いま話したように、海の近くでは大雨が降ります。

 しかし、海から遠くはなれた「大陸の内部」では、土地に含まれている
水分が蒸発してしまうので、

 乾燥化(つまり砂漠化)がすすんで、「干ばつ」が起こりやすくなります。



 また、気温の上昇によって、

 ヒマラヤ山脈などの「氷河」が解けて無くなると、

 山の麓(ふもと)を流れている、川の水が減ってしまいます。

 氷河や雪は、水を溜めておく「自然の白いダム」となっているのです。



 このような理由から、地球温暖化が進むと、干ばつや水不足が起こります。

 とくに、アフリカのサハラ砂漠周辺や、

 ヨーロッパの大部分(南、中央、東ヨーロッパ)、

 北アメリカの中央部や、南アメリカのアマゾンなどで、乾燥化が進むと予測
されています。

 また、ヒマラヤ山脈の麓(ふもと)にあるインドなども、氷河の融解によって、
はげしい水不足が起こると予測されています。



 もうすこし具体的には、

 アフリカでは2020年までに、7500万人〜2億5000万人の人々が、
水不足によって悪影響をうける。

 インドでは2025年ごろまでに、一人当たりの利用可能な水の量が、
半分に減る。

 中央アジア、南アジア、東アジアおよび東南アジアでは、2050年までに
10億人以上の人々に、水不足による悪影響を与えうる。

 アマゾン東部のジャングルは、今世紀の半ばまでに、サバンナに徐々に
変わっていく。

 と、いうような予測が報告されています。



 また、世界全体で、水不足の危険にさらされる人々は、

 1.7℃の気温上昇で、9億人

 2.0℃の気温上昇で、25億人

 2.5℃の気温上昇で、31億人

 が、気温上昇ゼロのときに比べて、新たに増加すると予測されています。
(IPCCで共同議長を務めた、マーティン・パリー博士たちの研究による。)



 なので、

 2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、


 世界全体で、少なくても31億人以上の人々が、

 新たな水不足の危険にさらされるでしょう。



               * * * * *


 熱波による異常高温


 地球が温暖化すると、夏には「熱波」が襲ってきて、すごく気温が高くなる
ことがあります。

 (一般的に「熱波」とは、ある特定の場所で、例年にない高温の日が、
数日間にわたって続くことをさします。)



 たとえば、2003年にヨーロッパを襲った熱波では、全体で3万5000人
の死者を出しました。

 とくにフランスでは、7月の平均気温が、平年より10℃ちかくも上昇した
地域が多くあり、1万5000人もの死者を出したのです。

 同じ年の2003年には、インドとパキスタンも熱波に襲われました。50℃
を超える気温が観測され、死者の数は1500人を上回りました。

 また2005年には、アメリカを熱波が襲いました。アメリカの各都市で
36.7℃〜41.1℃の気温を観測し、とくにラスベガスでは、47.2℃にも
なりました。



 現在すでに、地球の平均気温は0.76℃上昇していますが、

 しかし、そのように小さな気温上昇であっても、

 上の例のように、とつぜん「熱波」が襲って来ることがあるのです。



 日本について行われた予測によれば、

 地球全体における、地上の平均気温が3.1℃上昇すると、

 関東から九州にかけて、最高気温が30℃以上になる真夏日が、

 現在にくらべて30日以上も増える地域があります。



 なので、

 2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、

 日本では場所によって、1ヶ月を超えないまでも、それなりに暑い
季節が長くなります。それにつれて、熱波に襲われる頻度も高くなる
でしょう。

 そして世界中も、ますます頻繁(ひんぱん)に、熱波に襲われるよう
になるでしょう。



               * * * * *


(2)海面上昇

 これについては、次回でお話したいと思います。



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