このままだと2050年にどうなるか? 8
2008年12月14日 寺岡克哉
もしも、効果のある温暖化対策が、なにも取ることができず、
このまま、二酸化炭素を出しつづけてしまったら・・・
もしもそうなったら、2050年には、2.6℃の気温上昇になる可能性
が高いと考えられます。
そのような2.6℃の気温上昇が起こったら、一体どんな事態になってしまう
のかを、これまで見て来ています。
今回は、
北極の「海氷」が消滅してしまうことや、
シベリアやアラスカの「永久凍土」が、融解してしまうことについて、
お話したいと思います。
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北極の海氷
「海氷」というのは、海水が凍って出来た、氷のことです。
そして北極海には、日本の面積の30倍ほどの、海氷が広がっています。
しかしながら・・・
2007年の9月に、北極海における海氷の面積が、
人工衛星による観測をはじめて以来、
最も小さくなってしまいました!
1980年代とくらべると、ここ20年ほどの間に、日本の面積の7倍以上
もの海氷が、消滅してしまったのです。
たしかに、
海氷は、「海に浮いている氷」なので、それが解けても海面は上昇しま
せん。
だから、「そんなに大した問題ではない!」と思う人も、いるかも知れま
せんね。
さらには、
これで北極海に「航海路」が拓ける! とか、
北極海に眠る「油田」が開発できる!
などと、喜んでいる人さえ、居るのではないでしょうか?
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ところが・・・
北極の海氷が解けてしまうと、さまざまな悪影響があるのです。
まず第一に、
「地球温暖化を、さらに加速させてしまうこと」です。
なぜなら氷は、水よりも、太陽の光をよく反射するからです。
つまり、北極海にひろがる海氷は、地球に降りそそぐ太陽の光を、
宇宙に反射させているのです。
そのことにより、地球の温暖化を防いでいるわけです。
しかし、海氷が解けてなくなると、太陽光がよく吸収されるようになり、
地球を暖めてしまいます。
そうすると、ますます海氷が解け、さらにそれによって、ますます温暖化
が進んでしまうのです。
そのような「悪循環」によって、地球温暖化がどんどん加速されてしまい
ます。
また、
海氷が解けることにより、ホッキョクグマ(北極のシロクマ)が、絶滅の
危機に直面しています。
なぜならホッキョクグマは、広大な海氷の上で、アザラシなどを獲って
生きているからです。
だから海氷が解けてしまうと、ホッキョクグマは獲物がとれなくなり、
栄養失調や、繁殖の低下をまねくのです。
このままだと2050年には、ホッキョクグマの数が、すくなくても30パー
セント減少すると言われています。
そしてまた、
海氷は、「自然の防波堤」になっています。
だから海氷がなくなると、波によって海岸が削られ、海沿いにある家が
流されてしまいます。
そのような被害により、人々の生活は脅かされ、住む場所を追われよう
としています。
さらには、
北極の海氷が無くなると、「海洋の大循環」の流れが、弱くなると考え
られます。
エッセイ352で話していますが、この「海洋の大循環」が弱くなると、
地球の海洋全体において、栄養や酸素の供給がそれだけ少なくなり、
海の生態系や、漁業資源にたいして、すごく大きな影響を及ぼします。
以上のように、
北極の海氷が無くなれば、さまざまな「悪影響」が出てくるのは、
絶対に間違いありません!
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ところで・・・
まったく別の視点から、北極海における海氷の融解には、すごく気になる
ことがあります。
それは、IPCC(科学者たちの世界的な会合)による評価よりも、
実際の状況の方が、もっと悪化しているのではないかと言う、
「恐れ」です!
たとえば、IPCCによる最新の評価では、
「北極海の晩夏における海氷は、21世紀後半までに、ほぼ完全に消滅
するとの予測もある」
と、いうものでした。
しかし実際は、上でも話したように、
2007年の9月に、北極の海氷が、観測史上で「最小」になりました。
その観測結果を受けて、ポーランド科学アカデミーと、アメリカ航空宇宙局
(NASA)の研究グループは、
「北極海の氷の融解がこのままのペースで進んだ場合、2013年には
夏に氷が完全に消える」
との予測を公表しました。
このように、
IPCCの評価よりも、実際の状況の方が、さらに悪化しているという
事実が、現実に存在しているのです!
そのような観点から、この問題はすごく深刻ではないかと、私は思って
いるのです。
とにかく、
2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、
夏場において、北極の海氷が消滅してしまうのは、間違いないでしょう。
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永久凍土の融解
シベリアやアラスカなどの寒い地方には、「永久凍土」というのが
広がっています。
「永久凍土」とは、2年以上つづけて凍結している、土地のことです。
地球が温暖化すると、その「永久凍土」が解けてしまいます。
そうすると、土地が「ぬかるみ」のように弱くなって、
建物が傾いたり、倒壊したりします。
また、アラスカやシベリアでは、石油や天然ガスの「パイプライン」が
走っています。
なので永久凍土が解けてしまうと、地盤沈下によって、
それらインフラに対しても、悪影響を及ぼすのではないかと心配されて
います。
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しかし、さらにもっと深刻なのは、
永久凍土が解けると、「二酸化炭素」が発生することです。
つまり、
永久凍土の中には、たくさんの「有機物」が凍結され、封印されてい
ます。
しかし永久凍土が解けてしまうと、その中に封印されていた有機物が、
細菌によって分解されるようになります。
そうすると、二酸化炭素が発生するわけです。
そして悪いことには、その二酸化炭素によって、地球温暖化をさらに
加速させてしまうのです。
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ところで・・・
コンピューターを使った、シミュレーションによると、
永久凍土の融解は、すごく深刻です!
というのは、たとえ実際には不可能でも、
仮に2000年の時点で、二酸化炭素の増加を止めることが出来たと
しても、
つまり、今後ずっと、大気中の二酸化炭素を370ppmで一定にする
ことが出来たとしても・・・
しかしそれでも2020年には、地下3メートルまでの永久凍土に含まれ
る氷の、
アラスカでは60パーセントが、
そして東シベリアでは70パーセントが、
融解してしまいます。
だから将来、かならず地盤沈下が起こり、建物やインフラにたいして
大きな影響を与えるでしょう。
また、永久凍土の上に生えている森林や、ツンドラなどの生態系も、
大きな影響を受けてしまうのは間違いありません。
さらには細菌の活動によって、解けた永久凍土から二酸化炭素がでる
ようになり、地球温暖化をさらに加速させてしまうでしょう。
そのような意味では、2050年を待つまでもなく、
永久凍土の融解は、「すでに手遅れ」となっています!
このことは、地球温暖化にたいする戒(いまし)めとして、
とくに深く、心に刻んでおかなければならないと思います。
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