各国の温暖化対策 2   
                             2009年8月9日 寺岡克哉


 さて、今回から、

 温室効果ガスの削減にたいして、積極的な取り組みをしている国々に
ついて、いろいろ見て行きたいと思います。



 まず、私が注目したのは、ノルウェーです。

 なぜなら、この国は2030年までに、

 二酸化炭素の排出をゼロ(カーボンニュートラル)にすると、公表した
からです。



 日本人の感覚からすれば、

 あと20年たらずで、二酸化炭素の排出をゼロにするなんて、とても
信じられないことでしょう。

 もちろん、私も驚きました。

 それで、まず最初に、ノルウェーを取りあげようと思ったわけです。


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 ところで・・・  

 2007年4月の当初に、ノルウェー政府が発表した目標では、

 2020年までに、温室効果ガスの排出を30%削減し、

 2050年までに、カーボンニュートラル(排出ゼロ)にするという
ものでした。



 しかし、2008年1月の時点になると、

 そのような政府の目標を、大幅に前倒しして、

 2030年までにカーボンニュートラルにすることが、ノルウェーの
主要各政党で合意されたのです。



 その合意によると、

 まず、ガソリン税率の引き上げや、再生可能エネルギーの利用に
よって、

 2020年までに、二酸化炭素の排出を15万〜17万トン減らします。


 また、発展途上国における、温室効果ガスの削減を支援するため、

 毎年5億ドル(およそ500億円)を拠出します。


 その、国外での削減貢献分もふくめて、

 二酸化炭素排出の収支をゼロ(カーボンニュートラル)にするという
のです。


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 ちなみにノルウェーは、

 「電力」についてなら、すでに1990年の時点で、

 「二酸化炭素のゼロ排出」(厳密には非化石燃料の比率99.8%、
つまり、発電における化石燃料の比率は0.02%)

 を実現しています。



 その内訳は、水力発電が9割を占めており、

 あとの足りない分については、バイオマスや廃棄物を利用して
います。



 ここで興味深いのは、

 ノルウェーという国は、じつは輸出をしているほど、石油や天然ガス
が採れるのです。

 しかし、それでも、発電に化石燃料を使わないのですね。



 その理由は、

 水力によるエネルギー資源が、とても豊富なこともありますが、

 それで足りない分についてさえも、化石燃料を使わないと言うのは、

 やはりノルウェーの国民は、ものすごく環境意識が高いのだと思い
ます。


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 ノルウェーは、また、

 発電所などから出る二酸化炭素を、分離回収し、 地中に貯留する
こと、

 つまり、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)に
ついても、積極的に取り組んでいます。



 たとえば、ノルウェー南部にあるモングスタットという所に建設中
の、天然ガス火力発電所では、

 CCSの設備を作る計画が、進められています。

 この発電所が来年に稼動すれば、大規模な発電施設としては、

 世界で初めての、本格的なCCSの実証プロジェクトに
なります。




 このプロジェクトでは、

 発電所から出る二酸化炭素を、分離回収し、

 さらに回収した(気体の)二酸化炭素を、圧縮して「液体」にします。

 そして、

 およそ250キロ沖合いの、海底の地下1000メートルにある地層に、

 その液体化した二酸化炭素を、注入することになっています。


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 ところでノルウェーは、

 天然ガスを採掘する、「ガス田」におけるCCSならば、

 すでに実績を持っています。

 その背景に、じつは以下のような理由があるのです。



 まず、

 ノルウェーの沖合250キロにある、スライプナーというガス田から
採れる天然ガスには、二酸化炭素が9%ほど含まれています。

 しかし、ヨーロッパのガス市場における販売基準は、二酸化炭素の
含有量が2.5%未満となっているのです。

 なので、採掘した天然ガスから、二酸化炭素を取り除かなければ、
そのままではガスを売ることができません。



 ところが・・・ 

 天然ガスから分離した二酸化炭素を、そのまま大気中に捨てるわけ
には行かないのです。

 なぜならノルウェーでは、二酸化炭素1トンあたり、50ドル(およそ
5000円)相当の、「炭素税」が課せられているからです。

 それで、この国のエネルギー業界は、税の負担を免れようとして、
CCSの研究開発を加速させたのでした。



 スライプナー ガス田の場合では、

 分離回収した二酸化炭素を、直径およそ25センチの高圧パイプを
使って、海底下1000メートルの地層にもどしています。

 そのようなCCSが、1994年から実施され、2008年4月の時点で、
総計1000万トンの二酸化炭素が地中にもどされました。


 このようにノルウェーは、CCSの実績をすでに持っている訳です。


                * * * * *


 ・・・ 私は、日本でも、

 とくに石炭火力発電所や、製鉄所などから出る二酸化炭素を、

 CCSによって処理するべきだと考えています。



 そして、このことは、

 パブリックコメント(エッセイ377)や、タウンミーティング(エッセイ378
でも、私は実際に提案しています。



 そのような訳で、

 ノルウェーでのCCS実証プロジェクトは、すごく注目に値するのでは
ないかと、私は思っています。



 そしてまた、

 「国家として、カーボンニュートラル(二酸化炭素排出ゼロ)を
目指す!」
という、

 ノルウェーの人々の、環境意識の高さというか、地球温暖化への
危機感というのも、

 日本人は、見習うべきではないかと思っています。



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