2050年代に4℃上昇!
                           2009年10月4日 寺岡克哉


 ロイターの報道によると、

 9月28日に、イギリス気象庁のハードレーセンターは、

 温室効果ガスの排出が、現在のペースで進んだ場合、

 2050年代半ばまでに、世界の平均気温が4℃上昇する
可能性がある


 という、研究結果を発表しました。



 じつに、驚くべき情報です!



 もしも、気温が4℃上昇してしまったら・・・

 30億人以上もの人々が、水不足の危機にさらされ、

 (おそらく、少なくても30%以上の種が絶滅するような)地球規模での
重大な絶滅が起こり、

 広範囲にわたってサンゴが死滅し、

 低緯度地方では、すべての穀物生産が低下し、

 世界の沿岸湿地の30%以上が消失し、

 毎年、何100万人もの人々が、洪水の被害に見舞われ、

 栄養失調、下痢、呼吸疾患、感染症による、社会的な負荷が増加し、

 熱波、洪水、干ばつによって、罹(り)病率と死亡率が増加し、

 医療サービスに、重大な負荷が、かかってしまうでしょう。



 とにかく、このままだと、

 ものすごく大変なことに、なってしまうのは確実です!



               * * * * *


 これは、「ロイター」による報道ですし、

 イギリス気象庁の「ハードレーセンター」による研究結果なので、

 情報の出所は、決して怪しいものではありません。



 しかしながら現在のところ、報道による情報が少なすぎます。

 「2050年半ばまでに、気温が4度上昇する可能性がある」と報じて
いますが、

 一体どれくらい(何%くらい)の可能性なのか?

 4度の気温上昇というのは、産業革命前とくらべてか、それとも現在と
くらべてか?

 日本の国立環境研究所など、ほかの研究機関も、同様の結果が得られ
ているのか、もしくは得られつつあるのか?

 などなど、

 ことが重大なだけに、慎重なチェックをしてもらいたいと思います。


               * * * * *


 ところでまた、同じロイターの報道によると、

 2050年代半ばまでに、気温が4℃上昇するというのは、

 IPCCが予測する「最悪のペース」を、上回っているみたいです。



 そして一方、

 それを本当に実現してしまうように、二酸化炭素の排出量も、

 IPCCが想定する「最悪のシナリオ」を、上回るペースで増加している
のです。



 アメリカの環境シンクタンクである、「アースポリシー研究所」によると、

 2000年〜2006年における二酸化炭素排出の、年間伸び率の平均
は3.1%でした。

 つまり、

 この期間において、毎年3.1%の割合で、世界の二酸化炭素排出量
が、増えていたわけです。



 ちなみにIPCCは、2000年〜2010年における、

 年間伸び率の上限(つまり最悪のケース)を、2.3%としていました。

 だから、毎年3.1%の増加というのは、IPCCが想定する最悪のケース
を、明らかに上回っていたわけです。


                * * * * *


 このままでは、気温上昇だけでなく、

 氷河の融解や、海面上昇、豪雨、干ばつ、海水の酸性化、生態系への
影響、生物の絶滅、食糧生産の低下、熱帯性病原菌の蔓延・・・

 などなど、

 地球温暖化による、さまざま悪影響が、IPCCによる「最悪の予測」を
上回ってしまうでしょう。



 つい先日の9月24日に、国連環境計画(UNEP)は、

 「気候変動科学概要 2009年」という、報告書を発行しました。

 これは過去3年間に、論文審査のある文献として、または研究機関から
発行された、

 地球システムと気候変動に関する400のおもな科学的文献を、再検討
したものです。



 それによると、

 地球温暖化による、さまざまな影響の多くが、 

 「IPCCによる予測の上限(つまり最悪の予測)」に、近づきつつある
ことが、明らかになりました。



 さらには、

 数年もしくは数十年以内に、地球温暖化による影響が、

 「後もどり不可能なレベル」に到達する可能性も、指摘されている
のです!



               * * * * *


 また、国連のアナン元事務総長が設立した、国際的な人道支援団体
「グローバル人間フォーラム」の報告書によると、

 地球温暖化が原因で亡くなる人は、現在すでに、世界中で毎年30万人
にのぼるとしています。

 現在すでに、地球温暖化による死者が、年間30万人も出ている
のです!



 日本でも、近ごろ毎年のように「はげしい豪雨」に襲われ、

 洪水や土砂崩れなどで、死亡者が出ています。

 これも、地球温暖化とまったく無関係だとは、決して言い切れないで
しょう。



 また同じく、「グローバル人間フォーラム」の報告書によると、

 地球温暖化によって、生活に深刻な影響を受けている人は、

 現在すでに3億2500万人にのぼるとしています。


               * * * * *


 さらには、アメリカのコロラド大学によって、

 世界の主なデルタ地帯(大きな河川の下流にある三角州)の3分の2で、

 地盤沈下と海面上昇により、そこに暮らす5億人の人々に、

 深刻な影響が出ている
という研究結果が報告されました。



 衛星写真の分析によって、地球上の最も大きな33のデルタ地帯のうち、

 過去10年間に、大洪水に襲われたのが85%にのぼり、

 その面積は、26万平方キロメートルに及んでいることが分かりました。

 これは日本の面積の、およそ7割に相当します。



 もちろん、

 デルタ地帯における洪水の原因は、温暖化による海面上昇だけでは
ありません。

 上流のダムや、川の護岸工事によって、土砂の堆積が妨げられたり、

 地下水のくみ上げや、地下資源の大規模な開発による、「地盤沈下」も
原因になっています。

 しかしながら、

 「地球温暖化による海面上昇」も、決して無関係ではなく、大きな
脅威となっているのです!




 さらには、温暖化による「台風やサイクロンの巨大化」も、

 海抜の低いデルタ地帯では、ものすごく大きな脅威となるでしょう。

 たとえば昨年の5月に、サイクロン「ナルギス」の直撃を受けた、イラワジ
川のデルタ地帯(ミャンマー)では、

 高潮によって、海面が最大で6メートル上昇し、死者や行方不明者が
13万8000人にのぼりました。



 そういえば、今年は海水の温度が高くなっているので、日本も台風
には要注意です!


 今年の8月7日に、台湾を襲った「台風8号」は、たくさんの死者を出して
います。

 現在のところ、日本に台風が上陸していないのは、「運が良いだけ」に
すぎないのです。

 決して、油断はできません。


               * * * * *


 とにかく現在すでに、

 地球温暖化によって、毎年々々、何10万人もの人々が死に、


 何億人もの人々が、深刻な影響を受けているのです!



 そして、このままでは、

 地球温暖化の進行が「最悪の予測」を上回り、

 「後もどり不可能なレベル」に突入してしまいます!




 これから日本も、温室効果ガス排出量の「25%削減」に向けて、

 具体的な温暖化対策が取られていくでしょう。


 しかし、それと同時に、

 このままだと、近い将来、温暖化の被害がどうなって行くのか。

 そして現在すでに、温暖化の被害がどれくらい起こっているのか。


 それらを明らかにして、世間に広く知らせなければ、

 温室効果ガスの大幅な削減にたいする人々の理解が、

 得られにくいのではないかと思います。



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