COP15 その1     2009年12月6日 寺岡克哉


 いよいよ今月の7日〜18日、デンマークのコペンハーゲンに
おいて、

 気候変動枠組み条約 第15回締約国会議(COP15)が、
開かれます!




 この会議には、世界中のおよそ190ヶ国が参加し、

 最終日の18日には、およそ100ヶ国による「首脳級会合」も開かれ
ます。

 それには、アメリカのオバマ大統領、中国の温家宝(おんかほう)首相、
フランスのサルコジ大統領、そして日本の鳩山首相も、出席することに
なっています。



 この「COP15」では、

 2013年〜2020年までの、各国の温室効果ガス削減目標、

 いわゆる「ポスト京都議定書」を、採択する予定になっていました。



 しかしながら・・・

 事前の協議(COP15に向けての特別作業部会)での、進展が思わ
しくなく、

 COP15において、ポスト京都議定書を「採択」するのは、とても難しい
状況になって来ました。

 そのため、「政治的合意(コペンハーゲン合意)」に、留まるのではない
かという見方が、一般的になっています。



 でも、国際会議は、

 最後のフタを開けて見るまで、どうなるのか決して分かりません!

 このサイトでも、会議が閉幕するまで、COP15の動きを見守って
行きたいと思います。


               * * * * *


 さて、鳩山首相は、

 さる9月22日の、国連での「気候変動首脳級会合」において、

 「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の
国際社会への約束の”前提”となる。」

 と、した上で、

 2020年までに温室効果ガスの排出量を、1990年比で25%削減
することを、国際公約しました。



 私たち日本人にとっては、まさに、このこと。

 つまりCOP15によって、「1990年比25%削減」が、拘束力を持つ
のかどうか・・・ 

 それが、いちばん気がかりであり、注目するべき所だと思います。



 そして、その重要なポイントが、

 「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国
の国際社会への約束の”前提”となる。」


 という部分です。

 とりわけ、温室効果ガスの二大排出国である、アメリカと中国の削減
目標を、

 いったい日本が、どのように捉えるのかと言うのが、いちばん重要な
ポイントだと思います。

 つまり、

 アメリカと中国の削減目標が、日本が25%削減を実行するに
足るほどの、「十分に意欲的な目標であるかどうか?」


 と、言うことです。



 そこで次に、

 アメリカと中国が、COP15で表明しようとしている削減目標について、

 見て行きたいと思います。


                * * * * *


 アメリカの削減目標


 アメリカのホワイトハウスが、11月25日に発表したところによれば、

 「2020年までに温室効果ガスの排出量を、2005年比で17%
削減する」
という目標を、

 オバマ大統領が、COP15で提示することを表明しています。



 しかしアメリカは、1990年から2005年の間に、温室効果ガスの
排出量が14%増加しています。

 なので1990年比では、たった3%の削減にしかなりません!

 これを、日本の1990年比25%削減とくらべれば、

 「意欲的な削減目標」であるとは、とても言えないと思います。



 しかも温暖化対策における、アメリカ上院の法案が、まだ可決されて
いません。

 だから、上のアメリカの削減目標は、今のところ「法的拘束力」が無い
のです。



 しかしながら、オバマ大統領はまた、

 2025年までに、2005年比で30%の削減。

 2030年までに、2005年比で42%の削減。

 そして2050年までには、2005年比で83%の削減をすると言って
います。



 もしも本当に、このペースで削減が実行されるなら、

 ちょっとスロースタートという気もしますが、

 それなりに「意欲的な削減目標」だと言えるでしょう。


                * * * * *


 中国の削減目標


 中国政府は11月26日、

 2020年までに、単位GDPあたりの二酸化炭素排出量を、

 2005年にくらべて、40〜45%削減するという行動計画を発表
しました。



 先の9月22日に、国連の「気候変動首脳級会合」において、

 中国の胡錦濤(こきんとう)主席は、

 「省エネを強化し、エネルギー効率を引き上げ、2020年までに単位
GDPあたりの二酸化炭素排出を2005年比で著しく引き下げるべく
努める」

 と、言いました。 しかし、「具体的な削減数値」については、言及しな
かったのです。

 11月26日の発表は、それよりも一歩進んで、

 単位GDPあたり、40〜45%の削減という、「具体的な数字」を
出してきた!

 と、言うことなのでしょう。



 しかしながら・・・

 中国は、ものすごい勢いで、経済が発展している国です。

 だから、上の削減目標が達成できたとしても、経済成長を考えれば、

 実質的には、二酸化炭素の排出量が2020年まで増加するで
しょう。




 それでは実質的に、

 一体どれくらいの、二酸化炭素排出量の増加になるのでしょう?

 すごく気になるので、私なりに考えてみました。



 まず、2005年〜2009年までの5年間における、中国のGDP成長率 
(実質経済成長率)は58%です。つまり、その5年間で、中国の経済は
1.58倍に成長したわけです。

 そして今後、2020年までの経済成長率は、年平均でおよそ8%程度
になると見られています。つまり、毎年々々8%の割合で、中国の経済が
成長していくわけです。

 ここで、2010年〜2020年までの中国の経済成長率を、年平均で8%
だと仮定しましょう。
 そうすると、その11年間における中国の経済成長は、1.08を11乗
して(11回掛けて)、2.33倍になります。

 このように、中国の経済成長は、
 2005年〜2009年までで、すでに1.58倍になっており、
 2010年〜2020年までに、2.33倍になると予想されるので、
 2005年〜2020年までは、1.58×2.33=3.68倍になると予想
されます。



 一方、

 2020年までに、単位GDPあたりの二酸化炭素排出を、2005年に
くらべて45%削減できたとすれば、

 2005年〜2020年までに、GDPが3.68倍になっているのだから、

 3.68×(1−0.45)=2.02

 つまり、2020年における中国の二酸化炭素排出量は、2005年に
くらべて、ほぼ2倍になると予想されます!



               * * * * *


 以上、ここまでの話をまとめ、

 「1人あたりの二酸化炭素排出量」について見ると、つぎの表のように
なります。

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              1人あたりの二酸化炭素排出量(トン)

             2005年の実績     2020年の目標
      アメリカ    19.8         16.4 (17%減)
      中国       3.9         7.9 (2.02倍)
      日本       9.8         6.9 (30%減)


 ※1 2005年にくらべて2020年の目標は、アメリカは17%減、中国は
    2.02倍、日本は30%減(1990年比25%減)としました。

 ※2 中国の削減目標には、「森林吸収」が入っていないので、さらに
    二酸化炭素を削減できる余地があります。
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 アメリカは、2020年までの削減目標が達成できたとしても、

 相変わらず、「1人あたりの排出量」がすごく多いですね!


 が、しかし・・・

 中国の削減目標が達成されても、今までのような経済成長が今後
も続けば

 2020年には
「1人あたりの排出量」が、日本の目標値よりも多く
なってしまいます!




 これら、アメリカや中国の削減目標を、いったい日本は、どのように捉え
るのでしょう?

 十分な削減目標として、日本は25%削減に「邁進(まいしん)」するの
でしょうか?

 あるいは不十分な目標として、日本は25%削減を「反故(ほご)」にする
のでしょうか?

 日本がどのような判断をするのか、私たち日本人にとっては、いちばん
気がかりであり、また注目するべき所です。



 12月3日の新聞報道によれば、

 日本政府は中国に対して、削減目標値のさらなる上積みを求める方針
を固めており、そのことをCOP15で表明するみたいです。

 日本の25%削減の条件である、「すべての主要国の参加による意欲的
な目標の合意」として、中国の削減目標では不十分だと、日本政府は判断
したようです。

 これに対して、中国の反発をまねくのは必至であり、COP15での交渉が
さらに難航すると見られています。


 (しかし、どうして、アメリカに対しては何も言わないのでしょうね。私には
不可解に感じられるところです・・・ )



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