鳩山首相が辞任      2010年6月6日 寺岡克哉


 先日の6月2日・・・

 鳩山由紀夫 首相が、とつぜん辞意を表明し、

 退陣することになりました。



 その理由として、鳩山首相は、

 沖縄アメリカ軍基地の県外移設を断念してしまい、社民党の連立
からの離脱を招いて、政権運営を混乱させたこと。

 鳩山首相自身の「政治と金の問題」で、国民の信頼を損ねたこと。

 などを、2日の午前に行われた、民主党の両院議員総会で明かし
ています。



 たしかに最近は、

 鳩山政権にたいして、批判的な意見が目立つようになり、

 世論調査による支持率も、すごく低迷していました。

 こんな状況になってしまっては、もはや辞任するしか、ほかに方法
が無かったのかも知れません。



 しかしながら鳩山政権は、

 西暦1886年から、123年間も続いていた「事務次官会議」
を廃止
し、

 さらには、「事業仕分け」なども行って、

 「官僚支配」と言われ続けてきた日本の社会構造にたいして、

 「政治主導」によるメスを入れました。



 これらのことは、

 「日本史に残るほどの大きな業績」だと、言えるでしょう。



 そしてまた、

 日本における、2020年までの温室効果ガス削減目標。

 いわゆる「中期目標」として、「1990年比25%削減」という
方針を打ち出したこと。

 これも鳩山政権の、ものすごく大きな業績です。



 このサイトは、「地球温暖化」がメインのテーマになっているので、

 「25%削減」という、中期目標が決まった経緯について着目し、

 今いちど鳩山政権のことを、ふり返ってみたいと思います。


              * * * * *


 まず、昨年(2009年)の9月7日。

 当時、まだ首相になる前の、鳩山 民主党代表は、

 東京で開かれたシンポジウムで、

 「すべての主要国の参加による、意欲的な目標の合意」を前提として、

 「2020年までに温室効果ガスの排出量を、1990年比で25%削減
することを目指す」

 と、明言しました。(エッセイ395



 そして、同年の9月22日。

 新しく就任した鳩山首相は、国連の「気候変動首脳級会合」で演説し、

 「2020年までに、1990年比で25%削減をめざす」ことを、

 国際公約したのです。(エッセイ397



 これら、上の2つによって、

 「日本の温暖化対策が、大きく方針転換した!」

 と、結論づけてよいでしょう。



 というのは、

 経済界の大きな懸念(エッセイ396)にもかかわらず、

 「1990年比25%削減」という中期目標にたいして、日本全体が
真剣に考え、

 実際に取り組んで行かなければ、ならなくなったからです。


            * * * * *


 ところで、エッセイ379で書きましたが・・・

 昨年(2009年)5月の時点では、日本の中期目標として、

 「1990年比4%増加」などという、まったくふざけた意見が、

 結構まかり通っていました。



 私も、タウンミーティングなどに参加しました(エッセイ378)が、

 そのような世論というか、世間の雰囲気を、かなり強く感じました。

 エッセイ378から、ちょっと抜粋してみますと、

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 立派なスーツを着た、大企業のお偉いさんらしき人々から、つぎつぎと
「+4%案」を支持する意見が出されると・・・

 私としては、

 「自分の存在が、何となく場違い」というか、

 どんよりと空気が重苦しくて、イライラして息の詰まるような「閉塞感」
というか、

 「梃子(てこ)でも、絶対に動かないぞ!」というような、

 「とても厚い大きな壁」を、どうしても感じてしまいました。


 (※ 2009年5月11日、地球温暖化対策の中期目標に関する意見
    交換会 札幌会場にて。)
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 と、いうような感じだったのです。



 そんな状況の中、

 昨年の6月10日に、自民党の麻生政権が決定した中期目標は、

 「1990年比8%削減」というものでした。(エッセイ382



 2012年までの「京都議定書」の目標でさえ、1990年比6%削減
なのに、

 2020年までの次期目標が、それに比べて、たったの2%ポイント
しか進展していないとは、まったくもって不十分な内容です。

 しかし恐らく、経済界からの「強い圧力」があった中では、それに抵抗
したギリギリの決断だったのかもしれません。



 やはり、経済界とつよく結びついた自民党政権では、どうしても
「限界」がありました。

 こと、地球温暖化対策に関して見れば、

 民主党の鳩山政権によって、「画期的な前進」をしたことは、

 絶対に否定できません!



               * * * * *


 ところで現在・・・ 

 「25%削減」を盛り込んだ「地球温暖化対策基本法案」が、

 すでに衆議院を通過しており、参議院に送られて審議中です。



 いまの会期中に、法案を成立させてほしいと願っていますが、

 しかし6月16日までの会期が迫るなかで、鳩山首相が辞任する
というゴタゴタがあり、

 会期末までに、間に合わない可能性が大きくなってきました。



 そして一方、

 新聞の報道によれば、いまの国会は「参議院選挙」を控えている
ため、

 衆議院を通過して参議院に送られた法案が、会期中に成立できな
かった場合は、

 「廃案」になるのが通例みたいです。



 しかしながら、

 「廃案」にするのか、「継続審議」にするのかは、新しい執行部が
最終的に判断することですし、

 いま行われている国会の会期を、延長することも出来ます。



 こんな状況なので、

 もしかしたら、いまの国会で「地球温暖化対策基本法」が成立する
可能性もありますが、

 現在のところ、法案がいちど廃案になり、「最初から仕切りなおし」
という可能性の方が、大きいみたいです。



 しかし、それでも、

 温暖化対策における民主党の基本方針は、変わることが無いで
しょうし、

 6月4日に新しく首相に指名された、菅直人 民主党代表も、

 前 鳩山首相が進めてきた地球温暖化対策を、「引き継いでいく」
と明言しています。



 だから、いまの国会で廃案になったとしても、

 「地球温暖化対策基本法」が、いずれ成立するのは間違いない
でしょう。



      目次へ        トップページへ