メキシコ湾の原油流出 4
                           2010年7月25日 寺岡克哉


 メキシコ湾の原油流出事故ですが、


 現在、

 原油の流出口に、「新しいキャップ(蓋:ふた)」を取り付けることに
成功しており、

 完全ではないけれど、いちおう、原油の流出がほとんど止まり
ました!



 今回は、

 それに至るまでの「一連の流れ」について、追いかけてみたいと
思います。


              * * * * *


 まず、7月10日。

 イギリス石油メジャーのBPは、

 原油の流出口にかぶせているキャップを、新しいものに交換する
作業を開始しました。



 なぜなら、

 それまでのキャップは密閉性が悪くて、原油が外に漏れ出していた
からです。

 密閉性の優れた「新しいキャップ」に交換すれば、原油の流出を
食い止められる可能性があるのです。



 キャップの交換には、4日〜7日かかる見通しですが、

 古いキャップを取り外してしまうと、新しいキャップを取り付けるまで、
原油が「制限なく」漏れ出してしまいます。

 そのことが、私はとても心配でした。だから一刻も早く、交換が終了
するようにと願っていました。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月12日。

 イギリス石油メジャーのBPは、

 「新しいキャップを、取りつけることに成功した」と、発表しました。

 4日〜7日かかる予定だった作業を、3日で終了したことになります。

 このことに関して言えば、「BPは良くやった!」と、私は思いました。



 あとは、

 かぶせたキャップに付いている「バルブ」を閉めると、原油の流出
が止まるはずです。

 が、しかし・・・ 話は、そんなに簡単ではありませんでした。

 なぜなら、バルブを急に閉めると、原油の圧力が急に高くなり、

 「べつの場所から、原油が漏れだす可能性がある」からです。



 だから、

 現場周辺に異常が現れないかどうかを監視しながら、

 ゆっくりと慎重に、バルブを閉めて行かなければならないのです。

 そのようなテスト作業は、

 7月13日から始まり、6時間〜48時間かかる見通しでした。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月14日。

 アメリカ政府が、バルブを閉めるテストの開始を許可しました。

 (なぜ、13日に許可を出さなかったのか疑問を感じます。)

 テストは同日に開始され、結果の判明まで48時間かかる見通し
です。



 新しく交換されたキャップは、

 高さが5.5メートル、重さが約75トンもある、巨大な筒状のもので、

 「3つのバルブ」が取り付けられています。



 その、テスト方法は、

 内部に閉じ込められた「原油の圧力」を調べながら、

 バルブを徐々に閉めて行くというものです。



 もしも、

 バルブを閉めることにより、「原油の圧力」が順調に上昇すれば、

 キャップと流出口の間や、その他の場所からの「原油の漏れ」が

 発生していないことになります。



 しかし、その反対に、

 もしバルブを閉めても、「原油の圧力」が上がらなければ、

 それは原油が、どこからか漏れ出している証拠だというわけです。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月15日。

 イギリスBPの、サトルズ最高執行責任者は、

 新しく取り付けたキャップの、3つのバルブを閉めたところ、

 「原油の流出が止まった」と発表しました。



 これにより、

 4月20日に事故が起こって以来、およそ3ヶ月ぶりに、

 やっと原油の流出が止まったことになります。



 それまでに流れ出した原油の量を考えれば、決して喜べるもの
ではありませんが・・・

 そしてまた、べつの場所から原油が漏れだす可能性もあり、
決して楽観はできませんが・・・

 しかしながら、

 これ以上の被害の拡大が、いちおう止まったことについては、
とても嬉しいニュースだと言えます。



 サトルズ最高執行責任者によると、

 キャップのテストは、これからも続ける必要があるとのことです。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月16日。

 アメリカ政府は、

 イギリスBPが、7月15日から始まったキャップのテストを、継続して
いると明らかにしました。

 現場周辺の安全や、原油の漏れなどを、慎重に点検しているよう
です。

 テストは、最長で48時間かかるとしており、17日にかけて実施する
とみられます。



 この日、イギリスBPの、ウェルズ上級副社長は、

 テストが24時間経過したこの段階で、

 「キャップから、原油やガスが流出する兆候は確認されていない」

 と述べました。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月17日。

 密閉性を示す「原油の圧力の上昇」が、想定していたよりも遅く、

 17日以降も、さらにテストを続ける必要があると判断されました。

 このため、アメリカ政府とBPは、

 18日の午後まで、テスト続けることを決定しました。



 イギリスBPの、ウェルズ上級副社長は、

 この日の午前にも、「流出の兆候がない」ことを強調しました。

 (しかし、原油の圧力が想定していたよりも低いのに、流出の兆候
が無いというのは、すこし疑問に感じるところですが・・・ )


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月18日。

 現場付近の海底から、原油が漏れているのが確認されました!


 キャップのバルブを閉めたことにより、原油の圧力が上がって、

 べつの場所から漏れ出した可能性がありますが、

 キャップ自体に、異常が発生した可能性もあります。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月19日。

 アメリカ政府 メキシコ湾原油流出対策本部の、タッド・アレン
本部長は、

 取り付けたキャップの付近から、少量の原油が漏れ出している
ことを、明らかにしました。

 また、

 キャップの場所から近い海底の2ヶ所でも、少量の原油やガスが
漏れ出しているのが、新たに見つかったということです。



 しかしながら、

 現時点で、重大な問題が起きていることを示すものでは無いとし、

 キャップのテストを、さらに24時間延長するとのことです。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月21日。

 アメリカ政府は、「海面から原油を発見するのが困難になりつつ
ある」と、発表しました。

 少量の流出は確認されても、大量の原油流出は、たしかに起こっ
ていないようです。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 7月22日。

 原油流出対策本部の、タッド・アレン本部長は、「キャップを無期限
に設置できる」と、述べました。

 また、

 これまでのテスト結果から「確信を強めた」として、キャップを維持
することによって、新たな流出が起こるリスクを否定しました。


              * * * * *


 以上が、「新しいキャップ」に関連する、最近までの流れです。

 原油やガスなど、少量の漏れがあって完全ではないけれど、

 「大量流出」を食い止めることが出来たのは確かみたいです。



 ではありますが、

 しかしこれは、一時的な応急処置にすぎません。

 流出口にセメントを注入して、「完全に封鎖」するためには、

 さらに8月の中旬までかかる予定です。



 そのときまで、

 キャップを取り付けた場所や、その周辺海域で、

 大きな異常や、重大なトラブルが発生しないようにと、

 祈るばかりです。



      目次へ        トップページへ