COP10 その1     2010年10月10日 寺岡克哉


 いよいよ10月11日〜29日にかけて、

 生物多様性条約 第10回締約国会議(COP10)が、

 名古屋で行われます。



 なので、

 このサイトでも、これから数回にわたり、

 「COP10」について、レポートして行きたいと思っています。



※ 「生物多様性」の意味や、「生物多様性条約」についての
  説明は、

  エッセイ386にまとめてありますので、そちらをご覧ください。


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 さて、このたび行われる「COP10」に関連した日程は、

 10月11日〜15日  カルタヘナ議定書 第5回締約国会議(COP/
               MOP5)

 10月18日〜29日  生物多様性条約 第10回締約国会議(COP10)

 10月27日〜29日  閣僚級会合

 と、なっています。

※ COPConference Of the Parties  MOPMeeting Of the Parties



 会場は、名古屋市 熱田区の、名古屋国際会議場。

 主催は、カナダ・モントリオールの「生物多様性条約 事務局」で、

 開催国の日本は「議長国」として、協力することになっています。



 このたびの、「COP/MOP5」や、「COP10」に参加する人数は、

 各国政府の関係者、国連の関係者、さらにはNGOなどを含めて、

 およそ8000名になると見られています。


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 上の日程によると、まず10月11日〜15日にかけて、

 「カルタヘナ議定書 第5回締約国会議」というのが行われます。



 この「カルタヘナ議定書」というのは、

 生物多様性の保全や、持続可能な利用に対する悪影響を防止
するために、

 「遺伝子組み換え生物の、国境を越える移送、利用等において
講じるべき措置」について規定したもの
です。

 たとえば、

 「遺伝子を組み換えた”栽培用種子”など、環境中に意図的に放出
されるものを輸出する場合は、事前に輸入国に通報し、輸入国の合意
が必要である。」

 と、いうような取り決めを、規定したものです。

 ちなみに、2010年2月現在において、157の国および地域が、

 カルタヘナ議定書を、批准・締結しています。



 ところで、

 10月11日から始まる、カルタヘナ議定書の会議に先立って、

 10月6日〜直前の10日まで、「事前会合」をやっていました。

 その議題は、

 遺伝子を組み換えた生物や作物が、輸入国で繁殖して生態系
を破壊した場合に、

 その責任者(輸出事業者)を特定して、原状回復(もとの生態系を
取りもどすこと)や、賠償を行わせるためのルール作りです。



 この事前会合によって、

 輸入国のアフリカ諸国と、輸出国の中南米諸国との間で、

 被害がでた場合の補償方法について、対立があったものの、

 大筋で合意をすることが出来ました。



 11日から始まる、カルタヘナ議定書 第5回締約国会議では、

 上の「事前会合」で合意された内容が、

 「名古屋・クアラルンプール補足議定書」として、正式に採択
される見通しです。


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 カルタヘナ議定書の会議につづき、10月18日〜29日にかけて、

 生物多様性条約 第10回締約国会議(COP10)が行われます。



 エッセイ386でも話しましたが、生物多様性条約には「3つの目的」
があり、

(1)地球上の多様な生物を、その生息環境とともに保全すること。

(2)生物資源を、持続可能であるように利用すること。

(3)遺伝資源の利用から生ずる利益を、公正かつ衡平に分配する
  こと。

 と、なっています。

 ちなみに、この生物多様性条約は、

 2009年12月現在において、193の国と地域が締結しています。



 さて、このたびのCOP10で話し合われる、おもな議題は、

(1)2010年目標にたいする達成状況の検証。

(2)ポスト2010年目標の策定(名古屋ターゲット)。

(3)遺伝資源の取得と利益配分の策定(名古屋議定書)。

 であると、見られています。



 (1)の「2010年目標」というのは、

 「生物多様性の損失速度を、2010年までに顕著に減少させる」という
ものですが、

 エッセイ431で話しましたように、「地球規模 生物多様性概況 第3版」
によると、

 「2010年目標は、地球規模で達成されていない」という、厳しい
判断をしています。

 おそらく「COP10」では、それを追認する形になるのでしょう。



 (2)の「ポスト2010年目標」については、エッセイ432で話しましたが、

 「全体目標」としては、「2020年までに多様性への圧力を減らす」という
ような、すこし弱気なものになるかも知れません。

 しかしながら、

 「個別目標」では、「植物の保全強化」や「海洋と沿岸域の多様性に関す
る保全」などの分野で、進展がみられるものと思われます。

 ちなみに、このポスト2010年目標は、「名古屋ターゲット」と呼ばれる
ようになったみたいです。



 (3)の、遺伝資源の取得と利益配分の策定については、

 「名古屋議定書」というのが、採択される予定になっています。

 しかしながら・・・

 先月の18日〜21日にかけて、カナダのモントリオールで行われた、

 COP10に向けての最後の準備会合においてさえ、議論が紛糾して
調整がつかず、

 名古屋議定書の「原案」を作ることができませんでした。

 そのため実質的な協議が、COP10にまで持ち越される事態になっ
ています。



 「名古屋議定書」に関して、おもに対立している点は、

 遺伝資源を改良した「派生物」も、利益配分の対象にするかどうかと
いう問題です。

 利益配分の対象を「派生物」にまで広げると、医薬品だけでなく、衣類
など広い範囲の商品に及ぶ可能性があるため、EUなどの先進国側が
反対しています。

 しかし、

 豊富な遺伝資源をもつアフリカなどの途上国は、利益を原産国に最大
限に還元したいため、「派生物の拡大方針を撤回する用意はない!」と、
強硬な姿勢を崩していません。



 こんな状況なので、

 COP10で「名古屋議定書」が採択されるかどうかは、

 むずかしい情勢になっているというのが、正直なところでしょう。


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 会期の終盤にあたる10月27日〜29日には、「閣僚級会合」
行われます。

 それまでの話し合いにより、「事務レベル」での合意が達成されな
かったとしても、

 この閣僚級会合において、「政治レベル」での調整や判断が行われ、

 合意に至ることが出来るかもしれません。



 以上、ここまでお話したように、

 COP10には、いろいろと懸念される材料もありますが、

 会議の成功を祈りつつ、

 どのような決議がなされるのか、見守って行きたいと思います。



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