オーストラリアの大洪水
2011年1月16日 寺岡克哉
オーストラリアの大洪水が、終息に向かうどころか、その逆に、
さらに被害が拡大しています!
1月13日には、主要都市の1つであるブリスベンも、洪水の
被害を受けました。
都市機能の復旧と、住宅再建には、1年半〜2年はかかると
見られています。
前回のエッセイでは、
日本の国土の2.4倍もの面積が、洪水の被害を受けていると
レポートしましたが、
しかしその後、1月11日までに、
日本の国土のおよそ3.7倍にあたる、140万平方キロが、
「災害地域」として指定されました。
日本の国土の3.7倍という、ものすごく広い範囲の洪水・・・
私たち日本人には、ちょっと想像できない広さだと思います。
こんなに広い範囲で、鉄道や道路などが洪水によって寸断
されてしまったら、
おそらく食料や生活物資などの輸送も、相当に困窮している
のでは、ないでしょうか。
(もしも、こんなすごい大洪水が日本で起こったなら、国家が
壊滅してしまうでしょう。)
私は思うのですが・・・ これほどの、ものすごい大事件なのに、
とくにテレビ放送において、
たとえば海老蔵のケンカ騒動などより、ぜんぜん報道の頻度が
少ないというのは、
もはや「不可解さ」を通り越して、ある種の「異常さ」を感じてしま
います。
* * * * *
オーストラリアの大洪水が、テレビであまり報道されないことも
あり、
ことさら日本にとっては、ほとんど何の関係もないと思っている
人が、多いのではないでしょうか。
ところが、このたびの大洪水は、
日本の主要産業である「鉄鋼業」にたいして、深刻な影響を与え
る可能性があります。
というのは、
鉄を作るために必要な、「鉄鋼用の石炭(原料炭)」が、不足する
かも知れないからです。
わが国の日本は、
「鉄鋼用石炭」の5割以上を、世界最大の輸出国であるオーストラ
リアから輸入しています。
が、しかし、このたび大洪水に見舞われたクイーンズランド州は、
オーストラリア最大の石炭埋蔵地であり、鉄鋼用石炭の「世界最大
の輸出地」だったのです。
1月5日。クイーンズランド州のブライ知事は、
「今回の洪水で、わが州の炭鉱の75%が現在操業を停止して
いる」
「クイーンズランドは大きな州であり、輸送システムのライフライン
に依存しているが、それが一部で壊滅的な打撃を受けている」
と、述べています。
このたびの洪水被害で、
「鉄鋼用石炭(原料炭)」の価格が、最低でも30%は上昇する
と見られ、
最大では33%上昇するという見方が強まっています。
このような状況を受けて、日本の大手鉄鋼メーカーは、
「鉄鋼用石炭」の在庫を、数ヶ月ていど積み上げていることを
明らかにしました。
また、べつの鉄鋼メーカーは、
オーストラリアの代わりに、アメリカやアフリカなどからの「鉄鋼
用石炭」の調達を、検討する可能性を示唆しています。
しかしながら、
必要量の石炭は、何とか確保できたとしても、石炭価格が上昇
することの影響からは、おそらく逃れられないでしょう。
さらには、鉄鋼用の石炭だけでなく、
「火力発電用の石炭(一般炭)」も、不足する懸念がありますが、
日本の主な電力会社によると、今のところ特に影響は出ていない
ようです。
しかしながら、このような事態が長期化すれば、対応を考えなけ
ればならないそうです。
* * * * *
今回、洪水による「石炭への影響」を調べて思いましたが、
異常気象による災害は、「農業生産」だけでなく、
石炭や鉄鋼などと言った、「鉱業生産」や「工業生産」にも
影響を及ぼすように、なってきました!
こんなことは、おそらく、今までに無かった現象だと思います。
それだけ「異常気象による災害」が、
だんだんと深刻になってきたことの、1つの現れなのでしょう。
これから将来、さらに地球温暖化がすすんで、
異常気象による災害が、もっと酷(ひど)くなって行った場合を、
前もって暗示しているように思えてなりません。
そしてまた、新年早々から、
ブラジルやスリランカでも、「洪水」や「土砂崩れ」による被害
が発生しています。
世界各地の気象が、どんどん「異常」になって来ているようで、
ものすごく不気味さを感じます。
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