被曝による人体への影響 1
                          2011年3月20日 寺岡克哉


 3月19日 午後11時現在の、警察庁のまとめでは、

 東北地方太平洋沖地震による死者は7653人、行方不明が
1万1746人となっており、

 亡くなった方々の数が、すでに「阪神・淡路大震災」を超えて、

 「戦後最悪の自然災害」と、なりました。



 避難者は、最大で55万人を超えた時もありましたが、

 幸いなことに、だんだんと減って来ています。

 が、しかし今なお、

 36万2580人もの方々が、過酷な避難生活を強いられてい
ます。



 被災地域では、

 水、食料、灯油、ガソリン、軽油などの物資が不足しており、

 避難している人々が、「危機的な状況」になっています。

 そして事実、避難者の中から、死亡する人も出ているのです。



 その最大の原因は、

 道路、鉄道、港、空港などの輸送網が、大きな被害を受けた
ため、

 必要な支援物資を、被災地に届けることが難しくなっている
ことです。



 なので現在、輸送網の復旧を、急ピッチで進めている訳ですが、

 しかし、それ以外の原因によっても、支援物資を不足させる恐れ
があります。

 それは、

 「被災地域ではない人々の、買占めや、買いだめです!」

 そんなことをすれば、被災地に回すべき食料や燃料が、不足して
しまうでしょう。



 テレビ報道などでは、首都圏の人々による「買いだめ」の問題が
取り上げられていますが、

 私が住んでいる札幌でも、大量の食料や水を買い込む人を、
(そんなに多数ではありませんが)実際に見たり聞いたりします。

 たとえば首都圏では、余震が頻繁に起こったり、計画停電が実施
されたりしているので、「買いだめをしたい!」という気持ちが、分か
らなくもないのですが、

 しかし札幌に住んでいる人間が、「買いだめ」をすると言うのは、
あまりにも、どうかしています。



 被災地以外の人々は、もっと落ち着いて良いと思います。

 今すぐ、誰にでも実行できる、被災地への有効な手助けは、

 「不必要な買いだめをしない!」と、言うことではないでしょ
うか。

 私は、そのように思います。


            * * * * *


 ところで・・・

 福島の「原発事故」が、だんだん深刻になって来ました!



 だから、原発の近くはもちろんですが、

 日本の広い範囲にわたって、「ミリシーベルト」とか「マイクロ
シーベルト」
という測定値が、

 よく、マスコミに登場するようになって来ました。



 このため、

 それぞれの場所に住む人々が、すこしでも冷静になれるように、

 「被曝量と人体への影響」について理解しておくことが、

 「パニック」や「風評被害」の拡大を防ぐためにも、すごく重要だと
思うようになりました。



 早速ですが、私が見た資料によると、

 「放射線の被曝量」と、「人体への影響」との関係は、以下のように
なっていました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(※1) 資料の提供元は、原子力安全研究協会および、放射線被曝者
    医療国際協力推進協会。

(※2) 被曝量の単位はミリシーベルト。( )内の数字はマイクロシー
    ベルト。


0.05(50) 胸のX線集団検診(1回分)。

0.6(600) 胃のX線集団検診(1回分)。

1.0(1000) 一般公衆の場所における放射線量の限度。

2.4(2400) 1人が、1年間に被曝する自然放射線量。

6.9(6900) 胸部X線CTスキャン。

200(200000) これ以上の被曝量になると、人体への影響が
           出はじめる。

500(500000) リンパ球が一時的に減少する。

1000(1000000) 10%の人が、悪心や嘔吐に襲われる。
             全身倦怠がおこり、リンパ球が著しく減少する。

1500(1500000) 50%の人に放射線宿酔(船酔いや二日酔いに
             似た症状)がおこる。

3000(3000000) 5%の人が、骨髄障害によって死亡。

4000(4000000) 被曝後30日までに、50%の人が死亡。

6000(6000000) 被曝後14日までに、中枢神経障害により90%
             の人が死亡。

7000(7000000) 100%の人が死亡。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 ここで、注意しなければならないのは、

 上の被曝量の数値は、「被曝した総量」だということです。



 そして一方、

 よくマスコミで報道されるのは、「1時間あたりの放射線量」である、

 「ミリシーベルト パー アウア」とか、「マイクロシーベルト パー 
アウア」

 という数値なのです。



 だから、

 マスコミで報道される数値と、上の表を比較するためには

 被曝していた時間を掛算(かけざん)して、「被曝の総量」に

 計算し直さなければなりません。




 たとえば・・・

 3月15日の午前10時22分に、福島第1原子力発電所の3号機
付近で、

 1時間あたり400ミリシーベルト(400ミリシーベルト パー
アウア)
という、ものすごく高い放射線量が測定されました。

 もしも、こんな場所に10時間も滞在してしまったら、被曝する総量
が4000ミリシーベルトに達し、上の表によれば、50%の人が死ん
でしまうでしょう。

 しかし、30分以内にその場から退避したならば、被曝の総量が
200ミリシーベルト以下に抑えることができ、人体への影響が避け
られます。

 さらには15分以内で、その場から退避することが出来れば、被曝
の総量を100ミリシーベルト以下に抑えられるのです。

 原発事故の現場で活動している、自衛隊、機動隊、消防隊、そして
東京電力の作業員の人々が、事故現場で長時間の作業が出来ない
のは、このような理由によります。
 (被曝を覚悟して、現場で作業している方々には、心から敬服いた
します。)



 また、たとえば・・・

 3月15日の午後5時以降、福島県の福島市で、すくなくても5時間
にわたって、通常のおよそ500倍に相当する、1時間あたり20マイ
クロシーベルト以上の放射線量が観測されました。

 この場合、たとえば1時間あたり20マイクロシーベルトで、5時間
の被曝を受けたとすると、被曝の総量は100マイクロシーベルト、
つまり0.1ミリシーベルトになります。

 この値と、上の表を比べれば、胸のX線写真撮影2回分の被曝量
なので、もちろん人体に影響はありません。

 しかしながら、もしも、1時間あたり20マイクロシーベルトの放射線
量がずっと続いたとして、
 10000時間(およそ417日間)を超える被曝を受ければ、被曝の
総量が200000マイクロシーベルト以上、つまり200ミリシーベルト
以上となり、人体への影響が出るようになるでしょう。



 さらに、たとえば・・・

 3月15日の午後8時45分ごろ、福島第1原発からおよそ21キロ
離れた福島県浪江町周辺で、

 通常のおよそ6600倍に相当する、1時間あたり330マイクロ
シーベルトの放射線量が観測されました。

 事故現場から21キロも離れた地点で、このような高レベルの
放射線量が、何十日間もずっと観測され続けることは考えにくい
のですが、

 たとえば、1時間あたり330マイクロシーベルトの放射線量で、
606時間(およそ25日間)を超える被曝を受ければ、被曝の総量
が200ミリシーベルト以上になり、人体への影響が懸念されます。


             * * * * *


 ところで、

 それぞれの人が住む地域において、観測される放射線量は、

 原発事故の状況(悪化しているか、終息に向かっているか)や、
あるいは「風向き」などによって、刻々と変化します。

 なので、ここしばらくは、

 自分たちの地域で観測されている放射線量に、注意しなければ
ならないでしょう。

 そしてまた、

 自分が住む地域の放射線量を、つねに知っていれば、不必要な
恐怖心に陥ったり、パニックにならずに済みます。



 以下は、

 いろいろな大きさの放射線量にたいして、私が持っている、おお
よその印象です。

 もちろん皆さんは、私と同じような判断をする必要はありません
が、参考にでもして頂けたらと思います。



 1時間あたり1マイクロシーベルト以下の放射線量ならば、まっ
たく心配する必要はないでしょう。
 しかしながら、原発事故の状況や、風向きによって、放射線量が
増えることもあるかも知れないので、それには注意する必要がある
でしょう。


 1時間あたり10マイクロシーベルトの放射線量ならば、すこし
気になりますが、
 2年間以上にわたって被曝を受けなければ、人体に影響が出る
ような被曝量にならないので、そんなに心配する必要はないでしょう。


 1時間あたり100マイクロシーベルトの放射線量ならば、私だと
かなり心配になります。
 屋内退避を心がけて、むやみな外出を控えるようになると思いま
す。(屋内退避をするときは、ドアや窓を閉め、換気扇やエアコンを
止めて外気を遮断します。また、どうしても外出しなければならない
時は、マスクを水で湿らせ、帽子、マフラー、手袋などをつけて、肌の
露出を最小限にします。なお、雨には大気中の放射性物質が含まれ
ているので、雨に濡れないようにします。)

 しかしながら、83日間を超える被曝を受けなければ、人体に影響
が出るような被曝量にならないので、なるべく冷静さを保つようにして、
放射線量が下がるのを待つでしょう。
 が、しかし、何ヶ月にもわたって、このような大きさの放射線量が
続くことが分かった場合は、無意味な被曝を避けるために、できる
だけ早く避難すると思います。


 1時間あたり1000マイクロシーベルト(1時間あたり1ミリ
シーベルト)
の放射線量ならば、
 私なら、可能なかぎり迅速に、一刻も早く、その日のうちに避難する
でしょう。
 この放射線量だと、8日間を超える被曝で、人体に影響が出てきま
す。だから1日でもムダにはできません。一刻も早く避難するべきだと
私は思います。


             * * * * *


 以上が、いろいろな大きさの放射線量にたいして、私が持っている
印象です。

 しかしそれは、体内に放射線物質が入り込むことが無い、いわゆる
「外部被曝」についての場合です。



 だから、

 空気中に漂(ただよ)っている放射性物質を、吸い込んでしまっ
たり、

 食品に混入している放射性物質を、食べてしまったりして、

 体内に放射性物質を取り込んでしまう、いわゆる「内部被曝」
場合は、

 これまでの話と、単純には一致しません。



 ごく一般的には、外部被曝よりも、内部被曝の方が危険だと
されていますので、

 内部被曝は、できるだけ避けるに越したことはありません。

 住んでいる場所の放射線量が、1時間あたり10マイクロシーベ
ルトを超えて、1時間あたり数10マイクロシーベルトの大きさに
なるようなら、

 内部被曝を避けるために、屋内退避を心がけ、むやみな外出を
避けた方が、良いように私には思えます。



 「内部被曝」による人体への影響については、いろいろと難しい
話になって、よく分からない所も多々あるのですが、

 私が理解できた範囲で、次回にレポートしたいと思います。



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