チェルノブイリ強制移住の20倍!
                           2011年5月15日 寺岡克哉


 5月6日。

 菅直人 首相が、中部電力にたいして、「浜岡原発の停止」を
要請しました。

 そのため、

 テレビなどのマスコミは、この関係の報道で、たいへん賑(にぎ)
わいました。



 しかし実は、

 おなじ5月6日に、
文部科学省から、

 「ものすごく大変なこと」が、発表されていたのです!




 それは、

 福島第1原発から、北西におよそ40キロ離れた場所まで、

 チェルノブイリ原発事故で、「強制移住」の対象となった
レベルの、

 2倍〜20倍の量の「放射性セシウム」が、
地表面に蓄積して
いたことです!




 今回は、そのことについて、お話したいと思います。


             * * * * *


 文部科学省は、5月6日。

 「文部科学省及び米国エネルギー省航空機による 航空機
モニタリングの測定結果について」


 という文書を発表しました。



 「航空機モニタリング」というのは、

 地表面における、放射性物質の蓄積状況を確認するために、

 高感度で大型の「放射線検出器」を、航空機に搭載して、

 地上に降り積もった放射性物質から出ている「ガンマ線」を、

 広範囲かつ迅速に測定するものです。



 4月6日〜4月29日にかけて、

 1機の小型飛行機と、ヘリコプター2機が、のべ42回の飛行を
おこない、

 福島第1原発から80キロの範囲内について、ほぼくまなく、
測定が行われました。


             * * * * *


 その結果・・・

 福島第1原発から、およそ40キロ離れた場所でも、

 1平方メートルあたり、300万〜3000万ベクレルという、
ものすごい量の、

 「放射性セシウム」(セシウム137と、セシウム134の合計)
が、
検出されました!



 このレベル(300万〜3000万ベクレル/平方メートル)の汚染
地域は、

 福島第1原発から北西へ、長さ37キロ、幅14キロ(最大幅)の、
帯状に広がっていました。

 福島第1原発から、20キロよりも離れた場所(警戒区域の外
なので、人が住んでいる可能性のある場所)では、

 南相馬市の南西部、浪江町の北西部、葛尾町の西部、飯館村
の南部が、含まれています。



 ところで・・・

 旧ソ連の、チェルノブイリ原発事故で、「強制移住」の対象と
されたのは、

 1平方メートルあたり148万ベクレルの、放射性セシウム
が検出された地域でした。



 なので、

 1平方メートルあたり、300万〜3000万ベクレルというのは、

 チェルノブイリ事故で、「強制移住の対象」とされたレベルの、

 じつに2倍〜20倍もの、「セシウム汚染」だと言うことに
なります!




 また、

 1990年にベラルーシが決めた「移住対象のレベル」は、

 1平方メートルあたり55万5000ベクレルの、放射性セシウム
が検出された地域でした。



 これと比べると、

 1平方メートルあたり、300万〜3000万ベクレルというのは、

 ベラルーシの移住対象レベルの、5.4倍〜54倍の、セシウム
汚染ということになります。


             * * * * *


 ちなみに、

 1平方メートルあたり、300万〜3000万ベクレルという汚染
レベルの、一つ下のランクの、

 1平方メートルあたり、100万〜300万ベクレルの汚染地域
も発表されていますが、

 これも、かなり気になります。



 このレベル(100万〜300万ベクレル/平方メートル)の汚染
地域は、

 福島第1原発から北西へ、長さ50キロ、幅23キロ(最大幅)の、

 帯状に広がっています。



 福島第1原発から、20キロよりも離れた場所(警戒区域の外)
では、

 「計画的避難区域」に指定された場所と、ほぼ一致しており、

 とくに飯館村では、その全域が入っています。


            * * * * *


 ところで5月10日。

 福島県 川内村の、原発から20キロ以内の「警戒区域」
おいて、

 初めての「一時帰宅」が行われました。



 参加者は、54世帯の92人でしたが、

 放射性物質の付着を防ぐための、防護服やマスクに身を固め、

 被曝量が分かるように、それぞれの人が線量計を携帯し、

 自宅には、2時間の滞在しか許されませんでした。



 しかしながら、

 これまで話した「航空機モニタリング」による、放射性セシウムの
測定結果では、

 川内村の場合、原発から20キロ以内の「警戒区域」であっても、

 1平方メートルあたり、30万〜300万ベクレルだったのです。



 その中でも、

 とくに値の小さな場所では、1平方メートルあたり、30万〜60万
ベクレルでした。


           * * * * *


 一方、それに比べて飯館村の場合は・・・

 1平方メートルあたり、100万〜3000万ベクレルもの、

 放射性セシウムが、検出されている訳です。



 それなのに、

 防護服を身に着けるわけでもなく、ふつうの服装で、

 子供も、妊婦さんも、現在まだ飯館村に暮らしているのです。



 原発から20キロ以内の「警戒区域」の場合では、

 1平方メートルあたり、30万〜60万ベクレルのセシウム
汚染でも、

 防護服に身を固めているのにです!




 これは、全然おかしなことですし、ものすごく矛盾を感じます。

 飯館村(を含む計画的避難区域)の人々は、 一刻も早く、

 避難をしなければならないと、私は思います。



 5月8日。

 飯館村は、一部の世帯から、「計画避難」を始めることに
決めました。

 しかしながら、

 当初政府が掲げていた、5月末までの全村避難は、困難な
情勢となっており、

 まず、乳幼児や妊産婦などのいる世帯の避難を、優先させ
る方針です。



 5月8日の時点では、

 全村民およそ6200人のうち、約1400人が、すでに自主避難
をしていると言うことですが、

 しかしまだ、およそ4800人もの人々が、飯館村に残っている
ことになります。



 5月15日。

 飯館村(や川俣町)において、計画避難が始まりました。

 しかし飯館村の場合は、

 近隣自治体の住宅の多くが、原発事故直後から避難を始めた
他の自治体の住民で、すでに埋っています。

 そのため、全村民の移転先の確保が難航しており、

 全員の移転が完了するのは、6月以降に、ずれ込む見通しと
なっています。



 そんな状況でありますが、

 可能なかぎり迅速に、すべての人の避難が終わるようにと、

 心から願ってやみません。



      目次へ        トップページへ