ホルムズ海峡が封鎖? その3
                          2012年1月22日 寺岡克哉


 今回も、引きつづき

 さらに緊迫してきた、ホルムズ海峡や、イランをめぐる世界情勢
について見て行きます。


            * * * * *


 1月13日。

 アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は、

 イランがホルムズ海峡を封鎖するとの強硬姿勢を示している
ことについて、
 アメリカのオバマ政権が、イランの最高指導者ハメネイ師に
たいし、
 「海峡の封鎖は許容限度を超える」との警告を、伝達したと報じ
ました。

 アメリカは、イランと国交を断絶しており、このようなメッセージ
を伝えるのは、きわめて異例のことです。

 メッセージの伝達は、秘密ルートを通じて行われたとされており、
海峡封鎖にたいする、アメリカの懸念の深さを表しています。



 同日。

 アメリカ国務省のヌーランド報道官は、

 「ホルムズ海峡は国際的な水路であり、アメリカとしては、関係
国とともに海峡を開かれた状態に保つ義務を負っている」

 と述べ、海峡が封鎖されれば、アメリカ政府として何らかの
対抗措置を講じる考えを示しました。

 また、

 「イラン政府にたいしては、われわれの考えを伝える複数の手段
を持ち合わせており、今回もその手法を用いた」

 と述べ、国交のないイランの指導部に、直接こうした考えを伝え
たことを明らかにしました。



 同日。

 アメリカ国防総省の高官は、

 ホルムズ海峡とペルシャ湾で1月6日、イランの複数の高速
小型艇が、アメリカ軍艦船と湾岸警備隊の警備艇に、急速に
接近する敵対行為を、2件おこしていたことを明らかにしました。

 発砲はありませんでしたが、アメリカ国防省は、イラン側の行動
について、国際海洋航行の行動基準を無視していると批判して
います。

 ペルシャ湾での、アメリカ軍艦船と、イラン海軍艦船との遭遇
は長年報告されていますが、
 アメリカ海軍によると、イラン艦船による挑発的な行為が、ここ
数週間で増えているそうです。
 小型の高速艇は通常、イランの精鋭部隊である革命防衛隊
の所属で、イラン海軍艦船よりも、より戦闘的な行為が目立つと
いいます。



 同1月13日。

 イランのアハマディネジャド大統領は、訪問先のエクアドルの
首都キトで、

 「イランに対する制裁や禁輸措置は効果がなかった」と述べ、
欧米による制裁強化に屈することなく、核開発をつづける決意
を強調しました。

 さらに、アハマディネジャド大統領は

 「アメリカが、イラン国民を煩わせたいのなら、断固とした態度
で対抗する」と警告し、緊張が高まれば、ホルムズ海峡の封鎖
などの強硬措置も、辞さない姿勢を示しました。



 同日。

 サウジアラビアを訪問している、イギリスのキャメロン首相は、

 イランがホルムズ海峡を封鎖した場合、「全世界が結集して
解除させる」と警告しました。



 同日。

 イランに石油精製品の輸出をしているとして、アメリカ政府が
制裁対象にした、中国の国有企業 珠海振戎公司は、

 「これまでイランに石油精製品を輸出したことはなく、制裁理由
は捏造(ねつぞう)だ」と、反論しました。

 制裁の結果、アメリカへの輸出許可証が得られなくなりますが、

 珠海振戎公司の広報担当は、「アメリカ企業と取引したことが
ないため、何の影響もない」としています。

 また、「イランからの原油輸入は、これまでのところ通常に行っ
ている」と説明し、「(イランへの)制裁は不可能だ」と、話したと
いいます。



 同日。

 野田首相は、記者会見で、

 安住財務相が、イランからの原油輸入を減らす意向を、ガイト
ナー米財務長官に伝えたことに対して、

 「見通しを個人的に話した。政府としてはこれから詳細に実務
的な理論を踏まえながら対応を詰めていきたい」

 と述べ、政府の統一見解ではないとの認識を示しました。


 玄場外相も、共同記者会見で、

 「慎重にかつ賢く対応する必要がある。政府でこれから最終的
な調整を行っていくというのが正確だ」と述べました。


 政府は、今後本格化するアメリカとの交渉の「切り札」として、
イラン産原油の輸入削減を打ちだす方針でしたが、
 安住財務相が「フライング」して言及したため、それを打ち消し
に回った格好です。

 外務省幹部は、「安住氏は、交渉で詰めるべき中身を、先に
言ってしまった」と語っています。



 同日。

 玄場外相は、フランスのジュペ外相と、東京都内で会談を行い
ました。

 会談後の記者会見で、玄場外相は、

 欧米が求めるイラン産原油の輸入削減について、「原油価格の
高騰が生じては、かえって逆効果になりかねない」と述べ、

 イランの原油輸出収入が増加したり、世界経済に悪影響を及ぼ
したりする可能性を指摘しました。


 一方、ジュペ外相は、

 「必ずしもそうではない」と述べ、イランへの経済制裁が、原油
価格の高騰を招くとは限らないとの認識を示しました。

 EU(欧州連合)が、イラン産原油の禁輸措置を進めていること
を念頭に、「日本にも同じ方向性で進んで頂きたい」とも述べ、
大幅な輸入削減を求めました。


 このように、日仏外相会談は、

 核開発をめぐるイラン制裁について、「効果的な制裁を行うため
国際社会が一枚岩になる必要がある」という認識では一致したの
ですが、微妙な立場の差もにじませる結果となりました。



 同日。

 OPEC(石油輸出機構)の、ヘリル元議長は、

 イランから欧州への原油供給の減少分を、サウジアラビアを
含むOPECの他の加盟国が補うことは、可能であるとの認識を
示しました

 ヘリル元議長は、「少なくとも欧州が消費する分のイラン原油
に取って代わることは可能なはずだ」と、述べています。


           * * * * *


 1月14日。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、オーストラリアの有力紙に
たいして、

 「イランが動揺するのを初めて見た」と述べ、とくにイラン中央
銀行を対象とした制裁強化に、イラン政府が恐れを抱いている
との考えを示しました。



 同日。

 イラン外務省の、メフマンパラスト報道官は、

 IAEA(国際原子力機関)の調査団が、「おそらく月内にイランを
訪れる」と述べ、調査団受け入れの用意と時期について、初めて
明かしました。

 しかしながら、イランがどれだけ協力姿勢を示すのかは不透明
であり、
 「核の平和利用の権利を手放すことはない」として、核開発に
大きな転換はないことも強調しています。



 同日。

 サウジアラビアの、ヌアイミ石油鉱物資源相は、

 「顧客のあらゆる需要に応える」と述べ、原油を増産し、積極的
に供給する用意があることを、あらためて強調しました。

 ヌアイミ石油鉱物資源相は、記者団にたいし、

 サウジは原油の需要増に「いつでも応じる義務がある」と発言し、
同国の増産余力に疑問があるとの見方については、「その見解
は採用しない」と否定しました。



 同日。

 中国外務省の、劉為民 報道局参事官は、談話を出し、

 中国の国有企業 珠海振戎公司が、イランに石油精製品を輸出
しているとして、アメリカ政府が同社を制裁対象としたことについて、
 「すこしも道理がなく、つよい不満と断固たる反対を表明する」と
批判しました。

 この談話ではまた、

 「中国は、ほかの多くの国と同様に、イランとの正常なエネル
ギー貿易や、経済貿易の協力関係がある」と強調し、
 アメリカのやり方は、「(アメリカの)国内法で、中国企業に制裁
を科すものだ」と指摘して、
 国連安全保障理事会の「イラン核問題に関する決議」にも、そぐ
わないとしました。



 同日。

 中国の温家宝首相は、サウジアラビアなど、中東の産油国へ
の歴訪を開始しました。

 この日、温家宝首相は、サウジアラビアのナイフ皇太子と会談
し、
 イラン情勢を念頭にして、「深刻な国際情勢にたいし、協力して
共通の利益を確保するべきだ」と述べた上で、
 「原油や天然ガスの貿易を拡大し、協力関係を全面的に深め
たい」と強調しました。

 これに対して、ナイフ皇太子は、

 「中国との戦略的な友好関係を築きたい」と述べ、エネルギーを
はじめとするあらゆる分野で、中国との関係を強化して行きたい
考えを示しました。

 ちなみに、

 中国にとってサウジアラビアは、原油輸入量のおよそ20%を
占める、最大の原油供給元になっています。


           * * * * *


 1月15日。

 イランの、ハティビ OPEC(石油輸出国機構)理事は、

 「イギリスや日本などが、イラン産原油の代わりを求めて、
ペルシャ湾岸の産油国を訪れているが、
 欧米の制裁に迎合して湾岸諸国が原油の増産に踏み切れ
ば、それは敵対的な行為であり、
 ホルムズ海峡を含め、この地域での重大な結果を招くこと
になるだろう」

 と述べて、湾岸諸国は供給不足を埋め合わせるために、
原油を増産するべきでないと警告し、強くけん制しました。



 同日。

 イラン外務省の報道官は、

 イラクのタラバニ大統領や、テヘランのスイス大使館など、3つ
のルートを通じて、
 「ホルムズ海峡を封鎖した場合には対抗措置をとる」と警告する
書簡を、アメリカ政府から受けとったことを明らかにしました。

 書簡の詳しい内容については、明らかにしていませんが、イラン
外務省の報道官は、「内容を精査して、必要があれば回答する」
と述べ、対応を検討する姿勢を示しました。



 同日。

 中東を歴訪中の、温家宝首相は、

 サウジアラビアの首都リヤドで、アブドラ国王と会談しました。

 会談では、イラン情勢などをにらんで、戦略的な観点から2国
間関係を強化することで、意見が一致しました。


 アブトラ国王は、

 政治、経済、安全保障を包括的に話し合うための、「ハイレベ
ル委員会」の設置を提案しました。

 温家宝首相は、

 それに賛成し、また、サウジの民生用原子力発電所の開発
に、中国が協力するという合意文書にも調印しました。


 サウジアラビアは、原油は輸出に回し、自国の電力需要は
原発でまかなうという建て前ですが、
 ペルシャ湾岸地域での覇権を争っている相手のイランが、
ウラン濃縮を進めるなか、
 民生用ではあっても、自前の原発を持ちたいというサウジの
本音に、中国が応じた格好です。


            * * * * *


 1月16日。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、

 核開発を続けるイランへの制裁について、「まだ不十分だ。石油
産業と中央銀行を狙い撃ちした、さらなる制裁がなければ、核開発
は止められない」と述べ、

 現在の制裁では、イランに核開発を断念させることは出来ない
という考えを示しました。

 イスラエル政府は、イランを安全保障上の脅威だとして、イランが
核開発を止めなければ、空爆などの軍事行動の選択肢も排除しな
いとの構えを続けています。



 同日。

 イラン国会のラリジャニ議長は、

 同国の核科学者の殺害に関与したとして、数人を拘束したこと
を明らかにしました。拘束した人数や身元などは不明です。

 ラリジャニ議長は、「テロリストの特定や、暗殺計画に関する調査
は継続中だ」と述べています。



 同日。

 EU(欧州連合)が、イラン産原油の禁輸措置を行おうとしている
なか、

 NIOC(イラン国営石油会社)は、アジア主要国への原油供給
状況について、「何ら変更はない」として、制裁の影響はないとの
見解を示しました。

 NIOCの国際事業担当責任者である、モフセン・カムサリ氏は、

 日本がイラン産原油の輸入削減に踏み切ったかどうかについ
て、「それは正しくない」と指摘し、
 「日本との契約更新は3月頃だ」として、日量24万バレルを購入
していると述べました。

 韓国については、過去2ヶ月のあいだに、同国の企業と1年契約
の更新を行ったとしています。
 韓国が2012年に輸入する原油のうち、イラン産はおよそ1割
を占める見通しで、前年の輸入量をわずかに上回ります。

 カムサリ氏は、インドについても、原油取引が今まで通りに行わ
れるとの見方を示しています。



 同日。

 サウジアラビアの、ヌアイミ石油相は、

 「数日もあればすぐにでも、日量200万バレルの増産は出来る
だろう。バルブをひねりさえすれば済む」と述べ、
 さらに日量700万バレルあまりの増産には、「90日ほど必要だ」
と語りました。

 イランが輸出しているのは日量425万バレルですが、それを
補えるかどうかについては、
 「世界の非常時に対応し、顧客の需要に対応できる」余力が、
サウジにはあると強調しました。

 また、ペルシャ湾情勢の緊迫を受ける2012年の原油価格の
見通しについては、
 「現在の価格を安定させ、原油1バレルあたり100ドル前後を
維持できればと考えている」と語りました。

 サウジは従来、理想的な原油価格を1バレル75ドルとしてきま
したが、イラン情勢の緊迫などを受けて、水準を引き上げた格好
です。



 同日。

 中国の温家宝首相は、

 UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビで開かれた、「世界エネル
ギーサミット」に出席し、
 主要20ヶ国・地域(G20)の生産国と消費国で、エネルギー
市場を管理する枠組みを作るよう提案しました。
 拘束力のあるルールの下で、投機の監視や、価格協議をする
べきだと訴えています。

 また温家宝首相は、世界の原油確認埋蔵量の50%以上を
占める中東を、「戦略的かつ重要な地域」として位置づけ、
 「国連安全保障理事会の常任理事国として、安定促進の努力
を続ける」と強調しました。


             * * * * *


 1月17日。

 イランの、ソルタニエ IAEA(国際原子力機関)担当大使は、

 IAEAの査察部門の責任者、ナカーツ事務次長をトップとする
調査団が、1月29日〜31日にイランを訪問することを、明らか
にしました。

 IAEAは、昨年の11月に出した報告書で、イランが行った高性
能爆薬の実験について、
 核兵器を起爆させるため(爆縮)の実験であった疑いがあると
指摘しており、調査団を派遣して検証を進める考えです。

 しかしながら、

 イラン中部のコム近郊のフォルドゥにある、地下ウラン濃縮
施設について、
 ソルタニエ大使は、「今回は協議であって査察活動ではない。
イランはフォルドゥの施設自体には定期的な査察を受け入れて
いる」と述べ、調査を許可しない考えを明らかにしています。



 同日。

 EU(欧州連合)は、加盟国間で基本合意している、イラン産
原油の輸入禁止措置について、7月から実施する方向で調整
を始めました。

 禁輸の詳細を詰めたうえで、1月23日のEU外相理事会で
決定する見通しです。



 同1月17日。

 インド外務省のマタイ次官は、

 インドは国連で決議された制裁にのみ従うという姿勢を強調
したうえで、
 「インドは今後もイランから原油の輸入を続ける」と述べ、アメ
リカとは一線を画する考えを示しました。

 インドは、輸入原油の1割ていどがイランからのもので、インド
の政府高官が、アメリカの制裁措置への態度を明確にしたのは、
これが初めてです。

 ところでインドは、イランから輸入する原油について、これまで
トルコの銀行を通じて決済してきましたが、アメリカの制裁措置が
発動されれば、それを続けるのは難しくなります。

 そのためインド政府は、1月16日から財務省などの担当者を
イランに派遣しており、今後の決済方法について、イラン側と協議
をしているもようです。



 同1月17日。

 野田首相は、

 イランの核開発にたいする欧米の経済制裁について、「やり方
によっては日本経済、世界経済に悪影響を及ぼす懸念がある」
との認識を示しました。

 そのうえで、「イランの中央銀行を制裁することによって、邦銀
にどう影響するのか、(日米とも)お互いの立場はよく分かって
いるので、実務的にどうすることが出来るかという詰めを、これか
らやって行きたい」と、語りました。


 同日。

 安住財務相は、

 イランからの原油輸入に関して、「削減されていく方向だという
認識は持っている」と、あらためて述べました。

 野田首相や玄場外相などと、政府内で見解が分かれていると
いう指摘にたいしては、
 「イランの核開発についての国際社会の危機感は、日本も共有
しなければならない。その重要性は政府内でもコンセンサスが
得られている」と、説明しました。


             * * * * *


 1月18日。

 ロシアのラブロフ外相は、

 イランの核開発を阻止するための先制攻撃が、イスラエルなど
で高まっていることについて、

 「(軍事攻撃が行われれば)難民の増加や、イスラム教のスンニ
派とシーア派の対立に油を注ぐ結果となるほか、連鎖反応を誘発
して収拾のつかない状態になる恐れがある」と述べ、懸念を表明し
ました。

 また、「イランとの間で、核問題解決に向けた交渉を再開する
チャンスは残されている」と述べ、
 欧米が行おうとしている、イランへの制裁強化にたいして、反対
する立場をあらためて示しました。



 同日。

 イスラエルのバラク国防相は、

 イランの核関連施設への攻撃に、決定を下す時期について、
「差し迫った問題ではなく、相当離れた時期になる」との考えを示し
ました。

 数週間もしくは数ヵ月後の決定になるのかとの質問にたいしては、
「見通しは示したくない。緊急の問題ではない」とだけ答えました。

 アメリカ軍制服組のトップである、デンプシー統合参謀本部議長が、
近日中にもイスラエルを訪問することに関して、
 イスラエルによる、イランへの単独攻撃を中止させるのが目的だ
という憶測が、イスラエルのメディアで流れていますが、
 バラク国防相は、この問題に触れ、「情報認識ではアメリカとの間
に大きな差はない」と述べています。

 単独攻撃を敢行する前に、アメリカに通告すると約束するかとい
う質問にたいしては、
 「この問題には触れたくないし、いかなる決定も下していない」と
答えました。


 またこの日、イスラエルのアヤロン副外相は、

 イランの核科学者が爆殺された件について、「イスラエルが関与
しているというイランの主張には根拠がない」と述べて、関与を否定
しました。




 同日。

 温家宝首相は、訪問先であるカタールのドーハで記者会見し、

 「ホルムズ海峡は重要な国際航路であり、どのような状況の下で
も、海峡の安全と船舶の正常な航行は保障されるべきだ」と述べ、
 中国指導部として初めて、海峡の封鎖に反対する意思を明言しま
した。

 また、イランの核開発については、「イランが核兵器を製造し、
保有することには断固として反対だ」と、つよく主張しました。

 さらには、「中国とイランの石油貿易は正常な活動で、保護され
るべきだ」と述べ、イランからの石油輸入を継続する方針である
ことを示しました。



 同日。

 イランへの制裁をめぐって、日米両政府の実務者協議が、
外務省で始まりました。

 アメリカ国務省のアインホーン調整官(対イラン・北朝鮮制裁
担当)と、アメリカ財務相のグレーザー次官補(テロ資金・金融
犯罪担当)らが、訪問先の韓国から来日し、

 日本側は、外務省の村上中東アフリカ局審議官や、財務省、
経済産業省、金融庁の幹部らが出席しました。

 この日の協議では、

 イランの中央銀行と取引をした、アメリカ以外の国の金融機関
は、アメリカの金融機関と取引ができなくなるという「国防権限法」
の詳細について、アメリカ側に説明を求めました。

 協議の終了後、グレーザー次官補は、

 「日本がアメリカと協力し、必要な措置を取ってくらるものと確信
している」と、記者団に述べました。



 同日。

 安住財務相は、イギリスのオズホーン財務相と会談をしました。

 核開発を続けるイランをめぐっては、制裁を強化する必要が
あるとの考えで一致しました。
 しかしながら、制裁はあくまでも平和的な手段で行い、世界経済
への影響を最小限に抑えるべきだとの認識も、両者で共有してい
ます。


 またこの日、安住財務相は、日本外国特派員協会で講演し、

 「アメリカの国防権限法が発動されれば、邦銀のダメージは
はかりしれない。日本経済への打撃をできるだけ小さくしたい」
と述べ、邦銀を「例外規定」にする必要性を強調しました。



 同日。

 玄場外相は、イランのサレヒ外相にたいして、核開発の断念
を求める書簡を、昨年の12月に送っていたことを明らかにしま
した。

 書簡の内容は、「イランは核開発を断念するべきで、イランの
説明では、とても国際社会の懸念を払拭(ふっしょく)することは
できない」というものです。

 イランからは、「核開発は平和利用が目的」という趣旨の回答
が、あったといいます。


             * * * * *


 1月19日。

 イランのサレヒ外相は、

 同国はこれまで、ホルムズ海峡の封鎖を試みたことはないと
指摘し、「平和と安定を望む」と述べました。

 サレヒ外相は、「イランは歴史上、この重要な海路の航行を
妨げたり、障害を置いたりしたことはない」と発言し、

 また、「湾岸諸国は自らを危険な立場に置かないように」とも
語って、欧米のイラン制裁による原油の不足分を補おうとする、
サウジアラビアなどの動きを強くけん制しました。


 またこの日、イランのハビーブ国連副大使は、

 核科学者が爆殺された事件について、実行犯が事前に、国連
の機密情報を入手していた可能性が高いとの見方を示しました。

 ハビーブ氏は、安全保障理事会にたいし、「科学者を特定する
ために実行犯が、科学者とIAEA(国際原子力機関)とのやりとり
が記録された情報などを、入手していた疑いがつよい」と述べ、

 「イランの核施設や科学者に関する情報が漏えいしたのは国連
の責任だ」として、機密事項を保持できなかったIAEAを非難しま
した。

 これを受けて国連のスポークスマンは、「事実確認を調査中」と
コメントしています。



 同日。

 アメリカのオバマ大統領は、

 「イラン経済が壊滅状態にあると、イランさえ認めざるを得なく
なった」と述べ、アメリカが主導する国際社会による、対イラン
制裁の効果を強調しました。

 オバマ大統領は、イランの核兵器保有を阻止するため、前例
のない制裁を科したと指摘し、

 「以前はこうした動きに決して同調しなかった、中国とロシアを
まとめることができた」と述べ、イランに圧力をかけ続ける方針で
あることを示しました。


 また、この日までに複数のアメリカ政府高官が、

 オバマ政権がイラン指導部に書簡を最近送付し、ホルムズ海峡
の封鎖は「一線を越える」行為として警告していたことを、明らか
にしました。

 書簡の送り主や、あて先の人物は不明で、ホワイトハウス、アメ
リカ国務省、アメリカ国防総省は、書簡の内容について沈黙して
いますが、

 イラン議会のモタハリ議員は、「手紙の最初の半分は脅迫で
あり、後半の半分は対話の申し出だ」と明かしています。


 さらにこの日、「国防権限法」の共同提案者となったカーク上院
議員と、メネンデス上院議員の2人は、

 イランからの原油輸入を、「大幅に削減した」国の金融機関に
たいして、「例外規定」を適用できるとした件について、

 「イラン産原油の輸入額を、年間18%以上削減することを求め
る」とする書簡を、ガイトナー財務長官に送りました。

 「輸入額年間18%削減」の理由は、イランからの原油輸入量
を減らすだけでなく、イランの収入を減らすことが重要だからと
しています。

 アメリカ政府は、「例外規定」が適用される条件をまだ決めて
いませんが、
 この有力議員たちの提案によって、適用条件の内容が影響
される可能性もあります。



 同日。

 EU(欧州連合)は、イラン産原油の輸入を禁止する措置に
加えて、

 核開発の資金を提供しているとみられる、イラン中央銀行の
資産を凍結する制裁措置をとることでも、基本合意したことが
分かりました。

 EU加盟国は、1月23日に行われる外相理事会で、原油の
禁輸措置や、資産凍結について決定する予定です。



 同1月19日。

 中国外務省の、劉為民 報道局参事官は、

 アメリカのパネッタ国防長官が、対イランで米軍が「万全の体制」
を取っていると述べたことについて、

 「単独制裁ましてや武力で威圧することは問題の解決にならず、
むしろ情勢を一段と悪化させる」と語り、冷静さと自制をもった対応
を求めました。


            * * * * *


 以上ここまで、

 1月13日から、1月19日までの動きについて見てきました。



 イランは、IAEA(国際原子力機関)の調査団を、受け入れる
と表明し、

 イスラエルは、イランへの単独攻撃を、当面やらないと表明
しました。

 なので、いまの時点では、

 「突発的な軍事衝突の危機が、ひとまず回避できたのでは
ないか」という印象を、私は持ちました。

 しかしながら、イランは、核開発を決して止めようとせず、

 欧米諸国は、イランへの制裁を、どんどんエスカレートさせて
います。

 だから、このままだと、いつかは緊張状態が頂点に達し、

 イランによるホルムズ海峡の封鎖や、イスラエルや欧米諸国
との軍事衝突が起こる懸念が、

 つねに付きまとっていると言うのが、いま現在の状況だと思い
ます。



 次回は、

 1月19日における日本の動きから、レポートして行く予定です。



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