ホルムズ海峡が封鎖? その7
                          2012年2月26日 寺岡克哉


 1週間あいてしまいましたが、

 2月10日からの、イラン情勢をめぐる世界の動きについて、

 ポイントだけをザッと見ていきましょう。


            * * * * *


 2月10日。

 中国の外務省は、イランの核開発問題を協議するため、馬朝旭
外務次官補を、2月12日にイランへ派遣すると発表しました。

 劉為民報道官は、2月10日の定例記者会見で、

 「われわれは問題解決に向けた唯一の適切な手段として、一貫
して対話と協力を主張してきた」と指摘しました。

 しかしながら、このたびのイラン派遣については、「問題をめぐり、
イラン側と意見交換を進める」と述べるにとどまり、詳細な説明は
避けています。



 同日。

 イスラエル国防省は、弾道ミサイル迎撃システム「アロー」の標的
補足試験を、地中海上で、アメリカ軍と共同で行い、成功したと発表
しました。

 F15戦闘機から発射したミサイルを、弾道ミサイルに見立てて、
それを迎撃システム「アロー」が補足し、追尾することに成功したと
いいます。

 この試験には、今後、迎撃システムに組み込まれる予定の、最新
式のレーダーが使われており、
 イスラエル国防省は声明で、「増大する弾道ミサイルの脅威に
対する、イスラエルの能力の高さが証明された」と発表しています。


            * * * * *


 2月12日。

 イランを訪問している、中国の馬朝旭外務次官補は、イラン
最高国家安全委員会のバケリ副事務局長と、会談をしました。

 バケリ副事務局長は、「(国連安全保障理事会の5常任理事
国にドイツを加えた)6ヶ国との対話再開を望んでおり、IAEA
(国際原子力機関)との協力も強化していく」という考えを示しま
した。

 一方、馬外務次官補は、6ヶ国との対話が早期に再開できる
ように、中国が積極的な役割を果たすことを協調しました。



 同日。

 ペルシャ湾に展開している、アメリカ第5艦隊の司令官、フォッ
クス中将は、バーレーンで記者会見し、

 イランが「潜水艦や、高速の攻撃用艦艇の数を増やしている」
と指摘しました。

 高速艇については、「自爆攻撃に用いることが可能な弾頭を
装着している」としたうえで、イランが多くの機雷を保有している
ことも述べました。

 その一方で、フォックス中将は、「われわれは油断することなく、
万全の準備を進めている」と述べ、
 もしもイランが、ホルムズ海峡を封鎖する動きを見せた場合は、
アメリカ軍が阻止できると強調しました。


            * * * * *


 2月13日。

 インドの首都、ニューデリーの中心部で、イスラエルの外交官が
乗った車が爆発炎上し、乗っていた女性外交員と運転手がケガを
したほか、べつの車に乗っていた2人もケガをしました。

 現地の警官は、「オートバイが近づいて車の上に何かを置き、
その後、爆発が起きたという目撃証言がある」と述べ、爆弾テロの
可能性を示唆しています。


 イスラエルのネタニヤフ首相は、「背後にはテロ輸出国家のイラン
がいる。イスラエルは断固としてこうしたテロと戦う」と述べ、イラン
が事件に関わっているとの見方を強調しました。


 イラン外務省のメフマンパラスト報道官は、上のネタニヤフ首相の
主張にたいして、
 「断固として否定する」と反発し、「これはイスラエルによる情報戦の
一環だ」と強調しています。



 同日。イスラエルのリーベルマン外相は、「責任者は報いを受ける」
と述べ、インドで起こったテロへの報復を示唆しました。


             * * * * *


 2月14日。

 アメリカ財務相は、イラン制裁の実施にともなう指導要領(ガイダ
ンス)を発表しました。

 日本は、イラン産原油の輸入量を減らすことで、邦銀が「国防権限
法」における「例外規定」が適用されるように求めていますが、

 ガイダンスでは、イランからの輸入量をどれくらい減らしたかや、
将来の購入契約を解除したかどうか、輸入量の削減の実施に向け
た各国の努力などを考慮するとしています。

 例外規定の適用条件となる、原油輸入を十分に削減したかどうか
は、アメリカ国務長官に決める権限があり、

 その一方で、アメリカ財務長官が、海外の金融機関が国防権限法
に違反した取引きをしているかどうかを、決める権限をもちます。


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 ※ 国防権限法(国防授権法)

 この法律により、イランの中央銀行と取引をした、世界各国の
民間銀行や中央銀行は、アメリカの金融機関と取引が出来なく
なります。
 つまり、イランの中央銀行は、イラン産原油の取引における
決済の大部分を担っているので、もしもイランから原油を輸入
すれば、その決済をした(たとえば日本など)輸入国の金融機関
は、アメリカ金融機関との取引が一切できなくなります。
 アメリカ金融機関との取引が出来なくなれば、たとえば日本の
場合では、円とドルの為替ができなくなり、アメリカとの貿易も
不可能になるでしょう。

 ただし国防権限法には、イランとの取引を著しく減らした金融
機関は制裁が免除されるという「例外規定」が設けられています。
 これまで日本は、消費する原油のおよそ1割を、イランから輸入
してきました。そのため日本銀行や、日本の3大メガバンクも、
イランの中央銀行と取引をしています。

 なので、もしも日本に「例外規定」が適用されなければ、日本は
大変なことになります。
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 同日。

 アメリカのパネッタ国務長官は、上院軍事委員会の公聴会で
証言し、
 イスラエルがイランの核施設を攻撃する可能性について、「われ
われは、イスラエルが決断したと思っていない」と強調しました。

 先日の2月2日に、アメリカのワシントン・ポスト紙は、「イスラエル
によるイラン攻撃が4〜6月の間に起こる可能性が高いと、パネッ
タ長官は分析している」と報じましたが、
 この日の公聴会で長官は、攻撃のあり得る時期に関して、「見解
を持っていない」と述べるにとどめています。

 また長官は、イランの核兵器開発に関して、「明らかにウラン濃縮
を進めている」と批判し、
 イランが警告するホルムズ海峡の封鎖についても、「一線を越える」
と指摘しました。

 そのうえで、国際社会が一致して圧力をかける必要性を、重ねて
強調しています。


            * * * * *


 2月15日。

 イランのアフマディネジャド大統領は、首都テヘランの原子力庁で
講演し、核開発で3つの成果を達成したと発表しました。

 1つ目は、新型の遠心分離機の開発に成功し、ウラン濃縮のス
ピードや効率が、従来の3倍に上がりました。この新型の遠心分離
機は、イラン中部ナタンズの核施設で、164機が稼動を始めたとの
ことです。

 2つ目は、従来型の遠心分離機も、ナタンズの施設で6000機
から9000機に増強しました。

 3つ目は、イラン初となる核燃料(ウラン濃縮度20%)の製造に
成功し、がん患者の治療を目的とするテヘランの原子炉に装填
(そうてん)しました。

 アフマディネジャド大統領は、「傲慢な大国が、核技術を独占する
ことはできない」として、「イランの核開発路線は継続される」と述べ
ています。



 同日。

 イラン側の、核問題交渉の責任者をつとめる、最高安全保障
委員会のジャリリ事務局長は、
 昨年の1月から暗礁に乗り上げていた交渉を、再開する用意が
あると表明しました。

 ジャリリ事務局長は、EU(欧州連合)のアシュトン外交安全保障
上級代表に書簡を送りましたが、
 それによると、「交渉再開は双方にとって最善の方法で、イランは
応じる用意がある」としている一方で、
 「交渉の成否は、欧米側が建設的な態度を示すかどうかにかかっ
ている」と、強気の姿勢も表しています。

 これまで欧米は、イランがウラン濃縮をやめる代わりに、イラン
国外でウランを核燃料に加工し、提供するという交換条件で、イラン
の説得を試みてきました。
 しかし、イランが国産の核燃料の製造に成功したため、欧米側は
有力な交渉カードを失いました。

 イランが、このようなタイミングで交渉の再開を呼びかけた背景
には、
 欧米に揺さぶりをかけるとともに、交渉を再開させることで、経済
制裁の強化や核施設を狙った軍事攻撃の、可能性を減らしたいと
いう思惑があるみたいです。



 同日。

 EU(欧州連合)の報道官は、イランの核開発問題の解決に向け
て、交渉の再開をイランに呼びかけている、アシュトン外交安全
保障上級代表(EU外相)にたいし、

 イランからの回答が寄せられたことを明らかにしました。



 同日。

 野田首相は、日本を訪れている、イスラエルのバラク副首相兼
国防相と会談をしました。

 バラク国防相は、イランの核開発問題について、「国際社会が
協力して厳しい措置を講じていくことが重要だ」と述べ、
 イラン産原油の輸入削減など、イランにたいする制裁を、さらに
強化するべきという考えを示しました。

 それに対して野田首相は、「イランの核開発問題では、国際社会
の深刻な懸念を共有し、”対話と圧力”のアプローチに基づいて、
国際社会と強調していきたい」と述べました。

 その上で、イスラエルが軍事行動も辞さない考えを示している
ことに対して、
 「外交的、平和的に解決することが重要であり、軍事的対応は、
事態をエスカレートさせるため非常に危険だ」と述べて、イスラエル
に冷静な対応を求めました。


             * * * * *


 2月16日。

 イランのアフマディネジャド大統領が、パキスタンを訪問しました。

 対テロリズム戦略での協力などを話し合うため、パキスタン、アフ
ガニスタンとの、3ヶ国首脳会談への出席が目的です。



 同日。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、イランが遠心分離機の開発など、
核技術の向上をアピールしたことに対して、

 「(イランへの)経済制裁は、今のところ効果を発揮していない」と
述べました。

 ネタニヤフ首相は、「国際社会はイランが核兵器開発を続けてい
ることが分かっている」と強調しています。



 同日。

 アメリカ国防省の情報機関、DIA(国防情報局)のバージェス局長
は、上院軍事委員会の公聴会で、

 「イラン海軍は、ホルムズ海峡を一時的に封鎖する能力がある」と
証言しました。

 また、イランから攻撃を受けた場合、アメリカ軍やアメリカの同盟国
に向けて、ミサイルが発射される可能性も指摘しました。


 この日。アメリカのパネッタ国防長官は、下院の歳出委員会国防
小委員会における公聴会で、
 「イラン政府は、現段階では核兵器製造の決定を下してはいない」
という見解を明らかにしました。

 パネッタ長官は、「イランによる核兵器の製造は許さない」とした上
で、
 「われわれが持つ情報は、彼らが核兵器製造を決定したことを示し
てはいない」と明言しました。

 しかしながら、「われわれは全ての選択肢を今も机上に載せている」
として、軍事行動の可能性を排除しない姿勢も示し、イランをけん制
しました。


 この日。アメリカ財務省は、イラン情報省が、国際テロ組織アルカイ
ダや、イスラム教シーア派組織のヒズボラなど、テロ組織への支援を
続けているとして、イラン情報省に新たな制裁を科すと発表しました。

 アメリカ国内にある、イラン情報省の資産を凍結するとともに、イラン
情報省の職員がアメリカに渡航するためのビザが、発給されなくなり
ます。



 同日。

 藤村官房長官は、午前の記者会見で、イランがウラン濃縮の遠心
分離機の能力を上げたことについて、「国連の安保理決議に違反
するもので、核開発の拡大、進展を大きく懸念している。日本として
は、イランに外交的圧力を加えつつ、国際社会と連携し、問題の平
和的、外交的解決に努力していく」と述べました。

 イランが、ホルムズ海峡の封鎖を示唆していることについては、
「現段階では、自衛隊が何らかの対応をする必要はない。仮にその
ような必要が生じた場合には、諸情勢を踏まえつつ、適切に対応し
ていく」と述べました。

 ペルシャ湾に機雷が遺棄された場合、自衛隊が除去することが
法的に可能かどうかについては、「わが国の船舶の安全保障の観点
から、自衛隊法に基づいて機雷を除去することは可能だ」と述べま
した。

 (しかしながら、イランが戦闘行為の一環で敷設(ふせつ)した機雷
を、自衛隊の掃海艇が除去すれば、「海外での武力行使」に該当す
る可能性があります。なので機雷除去は、紛争終結後に残された
「遺棄機雷」に限られそうです。)



 同日。

 日本を訪れているイスラエルのバラク副首相兼国防相は、NHK
のインタビューで、
 イランが核開発を進めていることについて「世界を欺いて核武装
に向かっている」と、つよい警戒感を示しました。

 また、「日本も欧米と足並みをそろえて、イランへの制裁を強化
するべきだ」と述べ、日本にたいしてイラン産原油輸入の大幅削減
を求めました。

 イスラエルが、イランの核施設への先制攻撃を行うのではないか
という懸念が広がっていることについては、
 「今は制裁の効果を見極める時期だ」と慎重な姿勢を見せる一方
で、「イランの核武装は断じて受け入れられず、それを阻止するため
にはあらゆる選択肢を排除しない」と述べ、
 制裁が効果を上げられず、イランが核開発を断念しなければ、イス
ラエルが軍事行動を起こす可能性があることを、あらためて示唆しま
した。



 同日の夜。

 田中防衛相は、イスラエルのバラク副首相兼国防相と会談をしま
した。

 バラク国防相は、イランの核開発問題について、「国際社会が
協力して厳しい措置を講じていくことが重要だ」と強調しました。

 田中防衛相は、「深刻な懸念を国際社会と共有している。核問題
は外交的、平和的に解決されることが不可欠だ」と述べ、
 イスラエルが、イランに軍事行動を取らないように自制を求めま
した。



 同日の夜。

 玄場外相は、イスラエルのバラク副首相兼国防相と会談をしま
した。

 バラク国防相は、「イランの核保有を容認することは、イスラエル
のみならず、中東地域全体を不安定化させるため、国際社会が
厳しい措置を講じていくことが重要だ」と述べました。

 それに対して玄場外相は、「日本としても、国際社会の深刻な
懸念を共有し、ひきつづき”対話と圧力”のアプローチに基づいて、
国際社会と強調していく」と述べました。

 その上で、イスラエルが、イランに対して軍事行動も辞さない構え
を示していることについて、「軍事的な選択は、アラブ諸国による
反イスラエルの団結を招くおそれがあり、イスラエルにとっても非常
に危険で、慎重であるべきだ。イランへの制裁を効果的に実施し、
外交的、平和的に解決することが重要だ」と述べ、イスラエルに
冷静な対応を求めました。


            * * * * *


 2月17日。

 イラン、パキスタン、アフガニスタンの3ヶ国の大統領が、パキス
タンの首都イスラマバードで協議し、テロ対策や経済分野での協力
強化で合意しました。

 パキスタンは、ザルダリ大統領の汚職疑惑をきっかけにして、
反米感情がつよい軍部の発言力が拡大し、対米関係が冷却して
います。

 アフガニスタンは、アメリカ軍が段階的に撤収作業を始めている
ので、今後の治安維持について、周辺国の協力を期待しています。

 イランのアフマディネジャド大統領は、こうした事情をにらんで、
協議を働きかけたとみられます。

 会談後の記者会見で、アフマディネジャド大統領は、「この地域の
すべて問題は、外部から利益を求めて干渉してくる勢力が原因だ」
と述べて、名指しは避けたものの、アメリカなどをけん制しました。

 その上で、「我々は、3ヶ国の協力関係を強化するために集まっ
た。この地域の問題は、この地域で解決するべきだ」と述べ、
 イラン、パキスタン、アフガニスタンの結束をアピールしました。



 同日。

 アメリカのクリントン国務長官は、ワシントンで、EU(欧州連合)の
アシュトン外交安全保障上級代表と会談し、
 イランとの核問題に関する交渉の再開を、検討する方針で一致
しました。

 会談後の記者会見で、クリントン国務長官は、「イラン政府からの
反応は、われわれが待っていたものだ」と述べ、交渉再開に前向き
な考えを表明しました。

 アシュトン上級代表も、「慎重ではあるが楽観している」と述べ、
交渉再開への期待感を示しました。

 しかし、その一方でクリントン長官は、「交渉を再開するなら、イラン
はみずからの核開発を明らかにする姿勢を見せつづけるべきだ」と
述べ、
 ウラン濃縮に関する情報を提供するとともに、濃縮活動の即時停止
を盛り込んだ国連の決議を守るよう、イランにクギを刺しています。



 同日。

 アメリカのホワイトハウスは、安全保障問題を統括する、ドロニン
大統領補佐官が、2月18日から3日間の日程で、イスラエルを訪れ
ると発表しました。

 ドロニン補佐官は、核開発を進めるイランや、市民に弾圧をつづけ
るシリアなど、周辺各国の問題について、イスラエル政府の高官と
協議する予定です。


             * * * * *


 2月18日。

 日本を訪問している、イスラエルのバラク副首相兼国防相が、
東京の日本記者クラブで記者会見をしました。

 イランへの対応について、バラク国防相は、「経済制裁を強化し、
イランに”世界で孤立してまで核兵器を持つ価値があるのか”と
自問自答させなくてはならない」と述べました。

 その上で、「イランの指導者は、イスラエルを地図上から抹殺
すると公言しており、核武装は受け入れられない。西側諸国とも、
あらゆる選択肢を残しておくという共通認識がある」と述べ、
 イランが核兵器開発を続ければ、武力で阻止する可能性を示し
ました。

 イスラエルが、イラン核施設への先制攻撃を行うのではないか
という懸念が広がっていることに対しては、
 直接の言及を避けながらも、「イランが、核施設を地下深くに移し
たり、国内の広い範囲に分散させたりすれば、決定的な打撃を
与えにくくなる」と危機感を示し、
 経済制裁が効果を上げず、イランが核開発を続けた場合には、
イスラエルが軍事行動を決断する可能性を、つよく示唆しました。

 また、市民を武力弾圧しているシリアについては、「(シリアの)
アサド政権が、正当性を取りもどすとは考えられない。しかし政権
が崩壊すれば、シリアの近代的な兵器が(イスラエルに敵対する
レバノンのイスラム教シーア派民兵組織の)ヒズボラに渡るのでは
ないかと恐れている」と述べ、地域の不安定化に懸念を示してい
ます。



 同日。

 イラン海軍の、駆逐艦と補給艦の計2隻が、スエズ運河を通過
して、地中海のイスラエル沖を通り、シリア西部のタルトスに入港
しました。

 シリア海軍の海兵を訓練するといいます。

 イランは、イスラエルにたいして海軍力を誇示するほか、シリア
のアサド政権への、支持を示すのが狙いとみられます。


             * * * * *


 2月19日。

 イラン石油省の、ニクザド報道官が声明をだし、「イギリスとフラ
ンスの企業に対する原油の輸出を停止し、今後、両国への分の
原油をほかの国にまわす」と発表しました。

 イギリスは、昨年の秋からイラン産原油の輸入を停止しており、
このイランの禁輸措置には、実質的な意味がありません。

 しかしフランスは、輸入する原油の4%をイラン産に頼っており、
依存度は低いですが、イランの禁輸措置がフランス経済に影響を
与える可能性もあります。



 同日。

 IAEA(国際原子力機関)の調査団が、オーストラリアのウィーン
から、イランの首都テヘランに向かいました。

 今回の調査団(査察部門トップのナカーツ事務長ら5人)は、21日
までの2日間、現地に滞在し、
 核兵器の起爆に必要な、高性能爆薬の実験を行ったとされる軍事
施設への立ち入りを、改めて要請するものと思われます。(前回の
IAEA訪問では、立ち入りが拒否されました。)

 出発に先立って、ナカーツ事務長は、「今回の調査を通じて具体的
な結果を得ることが重要である」と述べ、検証作業が進むことに期待
を示しながらも、

 「案件は複雑で、(進展には)時間がかかりそうだ」と語っています。



 同日。

 アメリカ軍トップの、デンプシー統合参謀本部議長は、イランの核
問題で同国への軍事攻撃を検討するのは、「時期尚早」との見方を
示しました。

 デンプシー議長は、「アメリカの当局者たちは、イランが核兵器の
製造を目指しているという、確信には至っていない」と述べました。

 また、「イランは経済制裁の影響を受け始めている」と語り、「軍事
的な手段に訴える時が、来たと決め付けるのは早すぎる」と主張して
います。

 デンプシー議長によると、アメリカは「現時点でのイラン攻撃は事態
を不安定化し、長期的な目的の達成にはつながらない」という立場を
取っているとしています


             * * * * *


 2月20日。

 IAEA(国際原子力機関)の調査団が、イランの首都テヘランに
入りました。

 イランのメディアは、「調査団が、イラン政府の担当者と協議を
始めた」と伝えており、IAEAによる調査が再開されたもようです。

 しかし、この日。イランのサレヒ外相は、「今回、核関連施設での
調査は行われない」と明言し、
 前回の調査につづいて、核施設への立ち入りを認めない方針を
示しました。



 同日。

 イラン軍が声明をだし、核施設などの防衛を想定した、4日間の
防空演習を、イラン南部で開始したと発表しました。

 イスラエルによる、イラン核施設への空爆が懸念されるなか、

 イランの防空能力を示し、イスラエルの動きを、けん制するのが
狙いと見られます。

 演習のために、ミサイルや対空砲、レーダー、戦闘機を配備し、

 イラン軍の声明では、「軍と精鋭部隊、革命防衛隊の協力を強化
するのが目的」だとしています。



 同日。

 イラン石油省の副大臣で、NIOC(イラン国営石油会社)総裁の
ガルエバニ氏は、
 「欧州の敵対的な行動がつづけば、輸出停止先を拡大する」と
警告しました。

 ガルエバニ総裁は、輸出停止を検討する対象国として、イタリア、
スペイン、ギリシャ、ポルトガル、ドイツ、オランダなどを列挙し、
 「(輸出停止を拡大すれば)原油価格は1バレル150ドルに達す
るだろう」としています。

 イラン産原油への依存度は、ギリシャが53%、スペインが16%、
イタリアは13%に上っており、
 原油輸出が即時停止されれば、各国経済への影響は大きなもの
となります。



 同日。

 EU(欧州連合)の執行機関である、欧州委員会の広報担当者が、

 ベルギー、チェコ、オランダ、イギリス、オーストリア、ポルトガル
は、イラン産原油の購入をすでに停止しており、

 ギリシャ、スペイン、イタリアは、購入量を減らしていることを、明ら
かにしました。

 フランスについては、欧州委員会は公式な確認情報を、持ち合わ
せていないとしています。



 同日。

 中国の外務省は、イランが、イギリスやフランスへの原油輸出を
停止したことを批判する一方、
 イランの核問題に関する対話の努力を、さらに強化する必要が
あるという考えを示しました。

 中国外務省の報道官は、定例記者会見で、「われわれは一貫し
て、問題を解決する方法として対話と交渉を支持しており、圧力を
加えたり、対立することは認めていない」と述べ、

 「すべての関係者が、できる限り速やかに、正しい対話にもどる
ことを望む」との考えを示しました。


             * * * * *


 2月21日。

 複数の政府筋によると、イラン制裁をめぐる日米協議は、この日
までに、
 邦銀に、「国防権限法」の「例外規定」が適用される方向で、大筋
合意したということです。

 しかしアメリカ側は、「日本のイラン産原油輸入が、確実に減少す
る保障を得たい」などと要求しており、具体的な削減幅に関しての、
最終的な調整に入っています。

 玄場外相は、この日の記者会見で、「(イラン制裁について)お互い
の理解は相当に深まってきている」と述べています。



 同日。

 イランの精鋭部隊である、革命防衛隊のナンバー2、モハマド・
ヘジャジ大将は、

 「もはや敵の行動を、ただ待つつもりはない」と述べて、敵対国へ
の先制攻撃も、辞さないという考えを示しました。

 その上で、「国益を守るために、あらゆる手段を行使する。敵が、
われわれの国益を脅かそうとしていると感じれば、いつでも報復
する」と警告しました。



 同日。

 サウジアラビアの外務省は、新たに駐イラク大使を任命したと、
発表しました。

 これは、イラクの旧フセイン政権が1990年にクウェートを侵攻
し、両国の関係が悪化して以来、初めてのことです。

 ちなみに、イスラム教スンニ派の盟主を自任するサウジアラビア
は、核開発を続けるイスラム教シーア派のイランを、安全保障上の
最大の脅威とみなしています。

 一方イランは、アメリカ軍がイラクから撤退したのを受け、おなじ
シーア派のマリキ首相が政権をもつイラクへの、影響力を強めよう
としています。

 このような状況のなか、サウジアラビアは、イラクとの関係強化に
より、イランをけん制したい考えとみられます。


             * * * * *


 以上、2月10日〜21日までの動きについて、見てきました。


 日米協議において、邦銀に「国防権限法」の「例外規定」が適用
される方向で大筋合意できたので、この問題に関しては、いちおう
一安心です。


 しかしイランは、新型の遠心分離機を開発して、ウラン濃縮の
能力を高めており、一向に核開発をやめようとしません。

 なのでイスラエルの頭に、かなり血が上って来ているのではない
かと思われます。

 このままイランが核開発をやめなければ、イスラエルが軍事行動
に出るのは、もはや時間の問題のような気がします。



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