日韓関係が悪化!
                          2012年8月26日 寺岡克哉


 このところ、日本と韓国の関係が、急速に悪化してきました。

 野田佳彦首相による、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領
へ宛てた「親書」が、

 送り返されるという事態にまでなっています。



 親書(国家元首による手紙)が返送されるというのは、友好国の
間では「前代未聞のあり得ないこと」で、

 国交断絶や、あるいは戦争にまで発展しても、ぜんぜんおかしく
ない状況だと言えます。



 世界の歴史上、もっとも近年に、親書が返送された事例は、

 アメリカのブッシュ大統領が、湾岸戦争の際に、イラクのフセイン
大統領に送った親書が、送り返されたというものだそうで、

 このたびの親書返送は、そのとき以来だと言われています。



 このように世界史的、外交的に見れば、

 いま現在、日本と韓国の関係は、それほどまでに悪化しており、

 緊迫している状況だと言えるのです。


             * * * * *


 さっそくですが、

 最近における、日韓関係をめぐる経緯は、およそ以下のように
なっています。



 8月10日。

 韓国の李明博大統領が、島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸
しました。


 8月14日。

 李明博大統領が、「天皇陛下が韓国を訪問するのなら、独立運動
の犠牲者に謝罪するべきだ」という趣旨の発言をしました。



 8月17日。

 野田佳彦首相が、李明博大統領に「親書」を送りました。

 この親書で野田首相は、李大統領の竹島上陸などに遺憾の意
を表明したうえで、日韓関係の大局に立って慎重な対応をするよう
に求めています。



 8月23日の夕方。

 韓国政府は、野田首相からの親書を、在日韓国大使館を通じて
返送しようとしました。

 東京の韓国大使館のキム・ギホン政務課長が、日本の外務省に
向かい、正門にいた警備員に、外務省の担当者との面会を求めた
といいます。

 しかし外務省は、「面会の約束がない」として門前で制止し、省内
への立ち入りを認めませんでした。

 韓国側は事前に面会の打診をしていましたが、外務省の幹部が
「外交儀礼上、あり得ない行為だ」と指摘し、面会を拒否したといい
ます。



 同8月23日の夕方。

 外務省の面会拒否を受けた韓国側は、書留郵便で、親書を送り
返しました。



 これに先立つ、8月23日の午後。

 韓国外交通商省のチョ・テヨン報道官は記者会見し、親書返送の
理由として、

 1.日本の主張が極めて不当。
 2.回答すれば、日本側が両国首脳間で竹島問題について議論
  された先例として利用しかねない。
 3.日本が竹島を紛争地域化しようとする意図に利用される可能性
  がある。

 の3点を挙げました。

 また、親書の内容が不当である例として、「(大統領が)島根県の
竹島に上陸した」という点を指摘し、「そのような島は存在しない」と
主張しています。



 8月24日の午前。

 親書が、日本の外務省に届きました。

 野田首相は、玄場外相や藤村官房長官と協議し、韓国側が書留
郵便で送り返してきた親書を、再送することはせず、受け取る方針
を確認しました。

 玄場外相は記者会見で、「これ以上のやりとりが続くのは、わが国
の外交の品位を考えて好ましいものではない」と語りました。

 また、韓国側の対応について玄場外相は、「領有権の主張に自信
がないのかと思わざるを得ない」と述べています。


             * * * * *


 8月24日の午後。

 参議院の予算委員会は、野田首相と関係閣僚が出席して、

 外交・安全保障に関する集中審議を実施しました。



 野田首相は、

 竹島に関して、「韓国によって”不法占拠”されていると認識している」
と明言しました。

 また、李明博大統領の竹島上陸についても、「わが国固有の領土に
不法に上陸した」と明言しています。



 さらに、韓国が親書を返送したことについて野田首相は、

 「外交慣例上あり得ない。異論、反論があるなら親書という形で送り
返してくるのがあるべき姿。意見が違ってコミニュケーションを図らない
というのでは建設的ではない」と述べて、韓国側に抗議する考えを示し
ました。

 玄場外相が、近く駐日韓国大使を呼んで、謝罪を求めるといいます。


             * * * * *


 8月24日の昼。

 衆議院の本会議で、李明博大統領の竹島上陸などに抗議する決議
を、民主、自民、公明3党など与野党の賛成多数で採択しました。

 この決議の全文は、以下のようになっています。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【李明博韓国大統領の竹島上陸と天皇陛下に関する発言に抗議
する決議】

 島根県の竹島は、わが国固有の領土である。これは歴史的にも
国際法上も疑いはない。

 しかしながら、韓国は、竹島を不法占拠し、施設構築等を強行して
きた。韓国が不法占拠に基づいて竹島に対して行ういかなる措置も
法的な正当性を有するものではなく、決して容認できない。

 今般8月10日に李明博大統領が竹島に上陸した。わが国はこの
ことを強く非難するとともに、竹島の不法占拠を韓国が一国も早く
停止すること強く求める。また、わが国政府は、断固たる決意をもって、
韓国政府に対し、毅然(きぜん)とした態度をとり、わが国政府が一丸
となって、竹島問題について効果的な政策を立案・実施するべきで
ある。

 さらに、8月14日、李明博大統領は、天皇陛下の韓国ご訪問に
ついて極めて不適切な発言を行った。友好国の国家元首が天皇陛下
に対して行う発言として極めて非礼な発言であり、決して容認できない
ものであり、発言の撤回を求める。

 わが国は、韓国を重要な隣国として認識していることは変わらず、
韓国国民と友誼(ゆうぎ)を結んでいくことができると引き続き信じて
いる。そのためにも、李明博韓国大統領をはじめとする韓国政府
要人および韓国国民が賢明かつ冷静な対応をすることを強く求める。

 右決議する。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 上記のように決議では、

 「韓国が不法占拠に基づいて竹島に対して行ういかなる措置も法的
な正当性を有するものではなく、決して容認できない」と批判し、李大統
領の竹島上陸も「強く批判」しています。

 そして、竹島の不法占拠を韓国が一国も早く停止することを、強く
求めています。

 また李大統領が、「天皇陛下が韓国を訪問するのなら、独立運動
の犠牲者に謝罪するべきだ」という趣旨の発言をしたことに対し、
 「極めて非礼で決して容認できない」として、「撤回を求める」と明記
しています。



 このような竹島をめぐる国会決議は、韓国が沿岸水域の主権を
示す「李承晩ライン」を一方的に設けた後の、

 1953年の「日韓問題解決促進決議」以来だといいます。

 決議には法的な拘束力がありませんが、立法府の意思を明確に
示すことにより、政府にたいして行動を促すという狙いがあります。


              * * * * *


 8月24日の午後6時。

 野田首相は、李明博大統領が竹島に上陸したことや、香港の
活動家らが尖閣諸島に上陸したことなどを受けて、臨時の記者
会見を行いました。



 この記者会見で野田首相は、

 「今月に入ってから、わが国の周辺海域で主権に関わる事案が
相次いで起こっており、誠に遺憾の極みだ。このような行為を看過
することはできない。」

 「国家が果たすべき最大の責任は、平和を守り、領土・領海を守る
という、国政全体を預かる内閣総理大臣としての重大な務めを、きぜ
んとした態度で冷静沈着に果たし、不退転の覚悟で臨む」と、述べ
ました。



 竹島問題については、

 「歴史的にも国際法上も日本の領土なのは何の疑いもなく、戦後、
韓国側が力をもって不法占拠を開始した。」

 「韓国政府による一方的な占拠が、国際社会の法と正義にかなう
のかという問題であり、自国が考える正義を一方的に訴えるだけで
は建設的な議論は進まない。」

 「国際司法裁判所で議論し、決着をつけるのが王道だ。」

 と述べて、国際司法裁判所への共同提訴に応じるように、韓国側
に粘り強く求めていく考えを示しました。



 李明博大統領への親書を、韓国政府が返送したことについては、

 「外交慣例上ありえず、大変遺憾だ。」

 「政府としては、これ以上、送り返すことは非建設的であり、外交の
品位に欠けるという指摘も受けかねないので、送り返すことは考えて
いない」と述べました。



 今後の日韓関係については、

 「いかなる場合も大局を見据えて冷静さを失わないことも大事で
あり、価値を共有するパートナーである韓国は、冷静に対応すべき
だ。」

 「基本的な外交儀礼まで失する行動や言動は、お互いを傷つけ
あうだけで、建設的な結果を生み出さない。韓国側の思慮深く、
慎重な対応を期待する」と述べています。


             * * * * *


 8月24日の午後7時。

 玄場外相は、韓国のシン・ガクス駐日大使を外務省に呼んで、

 およそ30分間の会談をしました。



 この会談で玄場外相は、

 野田首相の親書を、韓国側が郵便で外務省に返送してきたことに
ついて、
 「外交慣例上ありえない行為で遺憾だ。内容が受け入れられない
のであれば、堂々と韓国側の主張を返信などで述べるべきだ」と抗議
しました。

 また玄場外相は、李明博大統領が、「天皇陛下が韓国を訪問する
のなら、独立運動の犠牲者に謝罪すべきだ」と発言したことについて
改めて抗議したうえで、謝罪と撤回を求めました。



 これに対して、シン・ガクス大使は、

 「玄場外相の抗議は、認められない」という認識を示しました。

 また、これに先立ち、玄場外相が竹島の現状について「不法占拠」
という表現を使って、韓国側をつよく非難したことについても、

 「受け入れられない」と述べました。



 会談後の記者会見で玄場外相は、

 「冷静に対応すべきところは冷静に対応し、きぜんと対応すべき
ところはきぜんと対応することが大事だ。」

 「会談では、対話の扉を閉じてはいけないこと、最終的には冷静
に対処すべきことについては、シン大使も”同感だ”と言っていた」
と述べています。


             * * * * *


 8月24日の午後7時すぎ。

 韓国外交通商省のチョ・テヨン報道官は、急きょ記者会見を開き、

 「歴史的、地理的、国際法的に見て明らかな、わが国(韓国)固有
の領土に関して、野田首相が記者会見で不当な領有権の主張を繰り
返したことに対して強く抗議し、即刻、撤回するように求める」

 と述べて、野田首相を批判しました


 また、野田首相が韓国側にたいして、「思慮深く、慎重な対応を期待
する」と述べたことについては、
 「われわれは既にそうしており、分別に欠けた慎重でない行動を取っ
たことはない」と反論しました。


 さらに、野田首相が国際司法裁判所への共同提訴をあらためて
求めたことについても、「行く理由がない」と述べて、重ねて拒否しま
した。


 そして、「正しい歴史認識に基づき、われわれと力を合わせて未来
志向的な関係を発展させていくために努力しなければならない」と
述べました。



 ちなみに韓国外交通商省は、これに先立ち、

 8月24日の衆議院本会議で、「李明博韓国大統領の竹島上陸と
天皇陛下に関する発言に抗議する決議」を採択したことについても、

 「甚だ遺憾だ」とした上で、即時撤回を求めています。


             * * * * *


 以上、8月24日までの動向について見てきましたが、

 いま現在、日韓関係は、ものすごく悪化し、非常に緊迫した
状態になっています!




 これから先、

 お互いに冷静になり、このような緊迫した事態を収拾して行くのか、

 あるいは、その逆に、

 各種交流の停止や、経済制裁などを行って、さらに日韓関係を悪化
させて行くのか、

 非常に目が離せない状況になっています。



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