日中関係も悪化 7
                          2012年10月14日 寺岡克哉


 中国は、尖閣諸島周辺の日本の「接続水域」や「領海」に、

 海洋監視船や漁業監視船などの「中国当局船」を継続的に侵入させ、

 この海域を「実効支配」しているという、「既成事実」を作ろうとしてい
ます。

 それに対抗するため、日本の海上保安庁は、たいへんな苦労を強い
られているように見えます。

 今回も、そのような緊張状態が続いている日中関係について、見て
いきましょう。


               * * * * *


 10月1日。

 午後0時半すぎから40分すぎにかけて、尖閣諸島の久場島の北東
およそ44キロの沖合で、中国の海洋監視船4隻が「接続水域」に侵入
しました。

 第11管区海上保安本部によると、この4隻は、中国・国家海洋局所属
の「海監15」、「海監26」、「海監27」、「海監50」で、
 海上保安本部の巡視船が無線や電光掲示板を使って、領海に近づか
ないように警告しています。
 海洋監視船のうちの1隻が、「釣魚島と付属の島々は昔から中国固有
の領土だ。妨害するな」と、中国語で応答したといいます。

 第11管区海上保安本部は、接続水域から出るように警告を続けた
ところ、午後8時ごろまでに、4隻は接続水域から出たということです。

 しかし午後9時すぎに、魚釣島の北西およそ44キロの沖合で、新た
に中国の漁業監視船2隻が、日本の接続水域に侵入しました。
 この2隻は、「漁政201」と「漁政310」で、海上保安本部が領海に
近づかないよう警告するとともに、監視を続けています。



 同日。

 野田首相は記者会見で、中国が、尖閣諸島における領有権問題の
存在を認めるように、日本側に求めていることについて、
 「領有権問題は存在しないという基本的な立場は堅持していきたい」
と述べて、政府方針を変更することはないと強調しました。

 尖閣問題を日本からICJ(国際司法裁判所)に提起する可能性につい
ても、
 「領有権問題は存在しないわけだから、竹島と同じように主導的にICJ
に付託することは考えない」と否定しました。



 同日。

 中国のメディアは、野田首相の内閣改造人事で、文部科学相に起用
された田中真紀子氏を「日本の対中難局を打開するカード」として注目
する一方、
 国家戦略担当相に起用された前原誠司氏の、尖閣諸島をめぐる発言
に警戒感を示しました。

 中国共産党の機関紙である「人民日報」は、田中真紀子氏が9月末の
訪中で、「(尖閣問題の)棚上げは日中両国の重要な共通認識」と発言
したと報道しました。中国新聞社電は、「野田首相の対日関係修復の
シグナル」と伝えています。

 一方、前原氏に対しては「対中強硬派」として警戒しており、前原氏が
9月末に、中国が尖閣諸島の領有権を主張していることについて「事実
をゆがめている」と発言したことに対して、
 中国外務省の報道官は、「歴史を正視せず、目を背けようとしている」
と非難する談話を発表しています。



 同日。

 中国メディアは、「アメリカ国務省のメア前日本部長が”オスプレイ日本
配備の重要な目的の1つは日本の釣魚島防衛を助けることだ”と語った」
と報道しました。
(※オスプレイとは、アメリカ海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプ
  レイのことです。)

 また、「東シナ海や台湾は全てオスプレイの飛行範囲内にあり、アメリ
カ海兵隊の実力を向上させ、海洋活動を活発化させている中国に対抗
するのに役立つ」という見方も、中国メディアは伝えています。

 ちなみに中国国防相の報道官は、7月末の記者会見で、尖閣諸島が
日米安保条約の適用対象とされていることや、オスプレイの沖縄配備
に関して、
 「日米安全保障条約は冷戦時代の産物であり、中国を含む第3者の
利益を損なうことをすべきではない」と述べ、日米の動きをけん制して
いました。


               * * * * *


 10月2日。

 1971年6月に行われた沖縄返還協定の調印直前に、当時のニクソン
米大統領と、キッシンジャー大統領補佐官(国家安全保障担当)が、
 尖閣諸島を沖縄の一部とみなして、日本の「残存主権」が及ぶことを
確認していたことが、10月2日までに分かりました。
 カリフォルニア州のニクソン大統領図書館が、その時のやりとりを記録
した音声資料を保存していたのです。

 ちなみに「残存主権(潜在主権)」とは、外国の施政下に置かれた地域
においても、潜在的に有する主権のことを言います。

 音声資料によると、ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官らは、
 1971年6月7日の午後に、ホワイトハウスの大統領執務室で20分間
ほど、10日後に迫った沖縄返還協定の署名と、当時の中華民国(台湾)
が日本への返還に反対していた尖閣諸島の地位について、検討を行って
いました。

 このなかでキッシンジャー補佐官は、1945年に日本が台湾から撤退
した際、尖閣諸島は「沖縄と共に残された。1951年のサンフランシスコ
講和条約で、沖縄の日本の残存主権はわれわれによって認められた。
その時にこれらの島々に関する大きな決断は成された」と、主張してい
ます。

 中華民国の反対については、1951年の講和条約から1971年に入る
まで、尖閣諸島に関する「特別な交渉は一切行われていない。既に(中華
民国から)手放され、自動的に沖縄に含まれた。これが(今日までの)歴史
だ」と、キッシンジャー補佐官は指摘しています。

 ニクソン大統領も、沖縄返還交渉を「台無しにすることはできない」と
応じており、キッシンジャー補佐官の意見を支持していました。



 同10月2日。

 午後0時半すぎ、魚釣島の南西およそ22キロの沖合で、中国の海洋
監視船4隻が、相次いで日本の「領海」に侵入しました。

 侵入したのは、「海監15」、「海監26」、「海監27」、「海監50」で、
日本の巡視船が領海から出るように警告したところ、一部の船から、
「われわれの航行を妨害するな」という応答があったということです。

 これら4隻の海洋監視船は、4時間以上にわたって日本の領海内を
航行し続けましたが、午後5時15分ごろから20分すぎの間に、いずれ
も領海から出て、「接続水域」に戻りました。

 一方、中国の漁業監視船「漁政310」と「漁政201」の2隻も、接続
水域のへの出入りを繰り返しながら航行を続けていましたが、この日の
夕方までに、この海域を離れたということです。



 同日。

 玄葉外相は、閣議後の記者会見で、中国の海洋監視船4隻が、日本の
領海に侵入したことについて、
 「尖閣諸島は、わが国固有の領土であり、すぐに領海を出るよう中国側
に抗議した。両国が静かな環境で対話を行う必要があり、中国側には
自制を求めたい」と述べました。

 また玄葉外相は、海外で、日本の主張に理解を示す報道があることも
指摘した上で、
 「尖閣諸島をめぐる領有権の問題が存在しないこともあり、日本はこれ
まで国際社会にたいして、わが国の立場を具体的に発信することはなかっ
た。しかし、情報戦のようなものが行われているなか、分かりやすく主張
していく必要がある」
 と述べて、この問題をめぐる日本の立場について、国際社会に向けて
発信を強化していく考えを示しました。



 同日。

 パキスタンにある中国大使館は、この日付けのパキスタンの英字紙
「デイリータイムス」に、尖閣諸島の領有権をめぐって日本を非難する
全面広告を掲載しました。

 広告には、「中国固有の島を日本が奪った」とか、「行政上の権限を
日本に引き渡したアメリカと日本の密室での取り引きは無効だ」などと
見出しをつけて、中国側の主張を詳しく載せています。

 これについて、パキスタンに駐在している日本の外交官は、「中国は、
緊密な関係にあるパキスタンを手始めに今後、各国にこうした宣伝
活動を広げるのではないか」と分析しています。



 同日。

 アメリカのオバマ政権で、アジア政策を担当したホワイトハウスの元
高官だったジェフリー・ベーダー氏が、NHKのインタビューに応じ、

 尖閣問題について、「アジア太平洋地域で最も緊密な同盟国である
日本と、世界で最も重要な新興国である中国が対立を深めていること
を、オバマ政権は非常に憂慮している。」
 「人さえ住んでいない、いくつかの岩礁をめぐって武力が行使される
ことなど、誰も望んでいない」と述べて、オバマ政権が懸念を強めている
ことを明らかにしました。

 また、事態を解決するための方策については、「日中間で決めること
であり、オバマ政権は仲介役を務めるつもりはない」とした上で、
 「領土問題に固執していては進展は望めない。領土問題と切り離して、
海洋資源の問題などについて検討することも有益だという意見が政権
内でも出ている」として、
 領土問題以外の分野で、対話を進めることを期待する声が上がって
いることを、明らかにしました。

 一方、日本政府による尖閣国有化によって、中国国内での反日デモ
が一部暴徒化したことについては、
 「非生産的であり、賢明ではなく、中国自身を傷つけた。国際社会の
真のメンバーにはそぐわないという印象を与えてしまった」
 と述べた上で、双方が互いに刺激するような行動を避け、慎重な対応
をするべきだと強調しています。



 同日。

 玄葉外相は、日本を訪れているモンゴルのボルド外相と、東京都内で
会談をしました。

 この会談で、玄葉外相は尖閣諸島について、「わが国固有の領土で
あることは、歴史的にも国際法上も疑いがなく、解決すべき領有権の
問題は存在しない」と述べた上で、
 「中国との間では、大局的な観点を踏まえながら、冷静に対応していく」
と、日本の立場を説明しました。

 これに対して、モンゴルのボルド外相は、「日本の立場を理解する」
と、応じたということです。

 このあと玄葉外相は記者団にたいし、「モンゴルは戦略的なパートナー
であり、これまでの良好な関係をさらに深化させるための会談になった」
と述べています。


 またボルド外相は、防衛省で、森本防衛相とも会談をしました。

 森本防衛相は、「最近の中国は、海洋における活動が活発化している」
と述べて、
 近年、活発化している中国の海洋進出に対する、日本の懸念を説明し
て理解を求めました。



 同日。

 IMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事は、来週に東京で開かれる、
IMFと世界銀行の年次総会を前にして、ワシントンで会見をしました。

 この会見でラガルド専務理事は、尖閣問題で日本と中国の対立が
深まっていることについて、
 「日本と中国はともに世界経済を引っ張る重要な役割を担っており、
混乱は望ましくない」と述べて、日中関係の現状に懸念を示しました。
 その上でラガルド専務理事は、「近隣国とうまく共存するにはある程度
の寛大さが必要だ」と述べて、対立の解消に向けた両国の対応に期待
を示しました。


 この日、アメリカのダウ・ジョーンズ通信が消息筋の話として報じた
ところによると、
 複数の中国国有大手銀行が、IMF・世界銀行の年次総会を欠席する
方針を固めたとしています。

 各銀行は、中国共産党・政府の管轄化にあり、日本政府による尖閣
国有化に抗議する中国指導部の、意向を受けた措置とみられます。
 ダウ・ジョーンズ通信によると、中国農業銀行東京支店の関係者は
欠席の理由について、「率直に言って日中関係だ」と話しています。

 IMFのラガルド専務理事は、中国政府がIMF・世界銀行の年次総会
を欠席する可能性については、「私の知る限り、そうした打診はまった
く受けていない」と、否定しました。
 その上で、「日中はともに世界経済の重要なけん引役であり、領土
問題をめぐり両国間に争いが生じることは望ましくない」と強調しました。


               * * * * *


 10月3日。

 午後0時35分から、同55分ごろにかけて、中国の海洋監視船「海監
15」、「海監26」、「海監27」の3隻が、尖閣諸島・久場島の東南東およ
そ22キロの「日本の領海」に、相次いで侵入しました。

 3隻は、2時間以上にわたって「領海侵犯」をつづけ、午後3時20分ごろ
までに領海の外へ出ました。

 海上保安庁の巡視船が、日本の領海から出るように警告したのに対し
て、海監は「貴船はすでに中国の領海に入っている。我々の航行を妨害
せず、領海から出なさい」と応答したということです。


 外務省の杉山アジア大洋州局長は、直ちに東京にある中国大使館の
韓志強・公使に対して、「日本の領海への侵入は容認できない」と電話で
抗議しました。

 外務省によると、杉山局長が「尖閣諸島は日本の領土であり、日本の
領海への侵入は容認できない。直ちに領海を出るように求める」と抗議
したのに対し、
 韓志強・公使は「申し入れは本国に報告する」としたうえで、中国側の
立場を述べたということです。


 玄葉外相は記者会見で、「すでに中国側には抗議した。効果的な意思
疎通を行うためにも、中国側に自制を求めたい」と述べました。
 その上で、日中関係が悪化していることについて、「事態がそんなに
簡単に収まるとは思っていないが、平和的に事態を沈静化させなければ
ならない。譲れないものは譲れないが、何が可能か模索したい」と述べて
います。



 同日。

 玄葉外相は午後の記者会見で、

 先月の28日に、中国側が「ニューヨーク・タイムス」と「ワシントン・ポス
ト」に、「島(尖閣諸島)は中国のものだ」などとする全面広告を出したこと
(エッセイ555参照)に関連して、

 「中国と同じ土俵でやるかどうかは、よく考えなければならないが、本当
に必要性が生じれば、そういうことも含めて検討したい」と述べて、海外の
新聞などに意見広告を掲載することなども検討する考えを示しました。

 その上で、「冷静に立場を説明すればするほど、尖閣諸島が国際法上
も歴史的にもわが国の領土だということが明確になるので、そういう意味
での発言をしっかり行っていきたい」と述べて、日本として国際社会への
発信を強化する必要があるという認識を強調しました。



 同日。

 日本から空輸された日本の新聞や雑誌が、北京の税関当局に没収
されていたことが、この日に分かりました。
 税関当局は没収の理由を明らかにしていませんが、日中関係の悪化
が影響した可能性や、雑誌に掲載された記事が問題にされた可能性も
あります。

 没収されたのは、海外向け運送会社「OCS]が日本から北京に発送
した9月27日付夕刊と28日付朝刊の各紙や週刊誌、月刊誌などです。
税関当局は通関を認めず、9月30日にOSCに対して没収したことを
通知しました。


               * * * * *


 10月4日。

 尖閣諸島の周辺海域で、中国の海洋監視船と漁業監視船の計8隻が、
日本の「接続水域」に侵入しました。

 「海監50」など海洋監視船4隻は、この日の朝から、久場島や南小島
の接続水域を、およそ7時間にわたって航行しました。その後、午後2時
すぎまでに同水域を出ました。

 また、漁業監視船4隻が、この日の午前から午後にかけて、魚釣島の
接続水域に侵入しました。
 このうち、「漁政31001」は、海上保安庁の巡視船の警告に対して、
「釣魚島は古来から中国固有の領土だ。中国海域で正当な公務を行っ
ている。直ちに離れなさい」と中国語で応答したといいます。



 同日。

 日本政府による尖閣国有化を受けて、台北に呼び戻されていた台湾の
沈斯淳・駐日代表が、およそ3週間ぶりに帰任しました。

 羽田空港で取材に応じた沈・代表は、「主権についてわれわれの立場
は揺るがない」として、尖閣諸島の領有権は台湾にあると重ねて主張し
ました。
 その上で、台湾の漁業者が島の周辺海域での操業を望んでいること
について、「漁業者の生活に関わるので、交渉の議題や次期について
積極的に折衝する」と述べて、3年以上中断している漁業交渉を早期に
再開して進展させるよう、日本側への働きかけを一段と強める考えを
示しました。
 さらに沈・代表は、「台湾と日本の人たちが互いによい感情を持っている
今の状況は大切にしたい」と述べて、尖閣諸島をめぐる主張の違いはあっ
ても、日本との良好な関係をさらに発展させることに意欲を示しています。


               * * * * *


 10月5日。

 この日も、中国の海洋監視船と漁業監視船の計8隻が、尖閣諸島周辺
の、日本の接続水域に侵入しました。

 海洋監視船4隻は、午前7時半ごろに接続水域に侵入して、10時間
以上航行し、午後7時15分ごろまでに、いずれの船も接続水域から出ま
した。
 海上保安庁の巡視船が、領海に入らないように警告したところ、「海監
50」から「釣魚島は中国固有の領土だ。この海域は中国の管轄海域で、
公務を執行中である」と、中国語で応答があったといいます。

 また漁業監視船4隻は、午前9時半までに再び接続水域に侵入し、この
うち3隻はいったん出ましたが再びもどり、午後9時の時点では4隻すべて
が接続水域を航行しています。



 同日。

 日本、アメリカ、中国などのEAS(東アジアサミット)参加国が、今年から
初参加して域内の海洋安全保障を議論する、
 ASEAN(東南アジア諸国連合)の拡大海洋フォーラムが、フィリピンの
首都マニラで行われました。

 このフォーラムで、鶴岡外務審議官が講演し、南シナ海や尖閣諸島を
めぐって強行な姿勢をとる中国を念頭に、
 「(領有権争いで)”力は正義なり”を正当化するべきではない」と強調し、
国際法に基づいた平和的な問題解決を訴えました。

 一方、中国政府の代表からは、「われわれは国際法を尊重している」と
した上で、「さまざまな問題を平和的に解決し、ASEAN諸国との話し合い
を尊重したい」と述べるなど、中国に対する各国の警戒感を意識した発言
が見られました。

 議長声明によると、参加各国が、ルールーに基づいた海洋安全保障や
国連海洋法条約の重要性を確認したとしています。

 また、外交筋によると、南シナ海や尖閣諸島の問題について、当事国
が個別に主張し、応報するような事態には、ならなかったと言います。



 同日。

 トヨタ自動車の中国における新車販売台数が、今年の9月はおよそ5万
台となり、前年同月にくらべて約40%減となったことが分かりました。

 マツダは、前年同月にくらべて34.6%減の1万3258台。

 三菱自動車は、反日行動の影響を否定していますが、前年同月にくらべ
て62.9%減の2340台。

 富士重工業は、前年同月にくらべて64.5%減の1857台でした。


               * * * * *


 10月6日。

 この日も、中国の海洋監視船と漁業監視船の計8隻が、尖閣諸島周辺
の、日本の接続水域に侵入しました。

 海洋監視船4隻は、午前9時すぎに、相次いで接続水域に侵入してい
ます。
 海上保安庁の巡視船が、領海に入らないように警告したところ、海洋
監視船から「島は中国固有の領土であり、中国の管轄の海域で公務を
行っている」と、応答があったといいます。

 一方、漁業監視船は、3隻が6日未明から朝にかけて接続水域に侵入
したのに続いて、いったん外に出ていた1隻も、午前9時すぎに侵入しま
した。



 同日。

 新華社電によると、中国農業省はこの日、漁業局の漁業監視船「漁政」
5隻を、9月末から尖閣諸島海域に派遣し、漁船3隻に対して立ち入り
検査を実施したことを明らかにしました。

 「漁民の生命や財産の安全を保障して、海上作業の秩序を守り、漁業
資源の管理を強化するためのものだ」と、監視船の巡航を正当化してい
ます。

 ちなみに中国農業省は、尖閣海域を「中国漁民の伝統的な漁場」としな
がらも、監視船「漁政」がこの海域で巡航を常態化させたのは、2010年
であることを認めています。


               * * * * *


 10月7日。

 この日も、中国の海洋監視船と漁業監視船の計5隻が、尖閣諸島周辺
の、日本の接続水域に侵入しました。

 今月の1日以降、中国の海洋監視船4隻と、漁業監視船4隻が、接続
水域へ侵入したり出たりを繰り返しながら航行を続けています。

 このうち海洋監視船4隻は、6日の夕方に接続水域から出ましたが、
7日の午前11時ごろに、ふたたび4隻とも相次いで接続水域に侵入しま
した。

 また、漁業監視船4隻は、6日夜のうちに接続水域からいったん出まし
たが、このうちの1隻が7日の午前0時20分ごろに再び侵入しています。
 しかし他の3隻は、7日の午後までに、尖閣周辺海域から離れたとみら
れます。

 海上保安本部は、巡視船から無線で領海に近づかないよう警告すると
ともに、監視を続けています。


               * * * * *


 以上、10月1日〜7日までの動きについて見てきました。


 中国の海洋監視船や漁業監視船が、うんざりするほど、しつこく、

 尖閣諸島周辺の日本の接続水域へ、侵入したり、出たりを繰り返して
います。

 そのことによって中国側は、この海域における実効支配の、既成事実
を作ろうとしているのでしょう。



 一方、多くの日本国民にとって、この問題に対する関心は、すでに薄れ
てきているのでは、ないでしょうか。

 日本の海上保安庁は、とても精力的に対応していますが、

 しかしながら、もしも、これから長い年月にわたって、このような状態が
ずっと続いて行くとしたら、

 日本国民の関心が薄れた状態の中で、中国による実効支配の既成
事実が、私たちの知らない間に作られてしまうのではないでしょうか。

 これは中国側の、長期にわたる「策略」ではないかと、私には思えて
ならないのです。



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