原発事故は継続中 2
                            2013年3月24日 寺岡克哉


 福島第1原発の「廃炉が完了」するまでには、40年ぐらいかかるとされ
ています。

 その時が来るまで、原発事故は継続していき、決して終息することは
ありません。

 ところが、その事実を国民の目から遠ざけて、事故の記憶を薄れさせ、
原発を推進させようとする者が後を絶ちません。

 このため本サイトでは、廃炉作業や除染作業などで、さまざまな事故
やトラブルが発生するたびに、

 「原発事故は継続中」であることをアピールし、問題意識を呼び起こし
ていきたいと考えています。


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アイナメから74万ベクレル

 東京電力は3月15日。福島第1原発の港湾内で捕獲した「アイナメ」
という魚から、1キログラムあたり74万ベクレルの放射性セシウムを
検出したと発表しました。

 これは、国が定める一般食品の基準値(1キログラムあたり100ベク
レル)の7400倍に相当します。

 このアイナメの大きさは、全長およそ38センチ、重さ564グラムでした
が、

 もしも、これと同じレベルに汚染されたアイナメを、1キログラム食べて
しまったら、およそ11ミリシーベルトの「内部被ばく」を受けるといいます。



 東京電力は2月28日にも、福島第1原発の港湾内で捕獲したアイナメ
から、1キログラムあたり51万ベクレルの放射性セシウムを検出したと
発表しましたが、

 このたびの1キログラムあたり74万ベクレルというのは、その記録を
超えて、魚の放射能汚染では「過去最高の値」となっています。

 このように、

 魚の放射能汚染は、いま現在も進行中で、留まるところを知りま
せん!




 東京電力は、港湾口の海底(水深およそ10メートル)に、高さ2メートル
の網を設置して、

 汚染土が堆積した海底付近の魚を、港湾の外に出にくくする対策をして
います。

 しかしながら、水面下に8メートルもの隙間があっては、魚がその気に
なれば、すぐに港湾の外に出ていくことも可能でしょう。

 ちなみに福島県沖では、試験操業を除いて漁を「自粛」しており、福島第1
原発の港湾付近の魚が、市場に流通することはないとしています。


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汚染水が流出し続けている可能性

 東京海洋大学の研究グループが試算したところ、汚染水の流出が止まっ
たとされる2011年6月以降も

 1年間で、16兆1000億ベクレルの放射性セシウムが、港に流出し
つづけていた可能性がありました。




 東京海洋大学の研究グループは、福島第1原発の港湾内の海水にふく
まれるセシウム137の濃度が、昨年の春以来、高いところで国の基準値
を上回る1リットルあたり100ベクレル前後からほとんど下がらないため、
原因の究明に役立てるように独自の試算を行ないました。

 その試算では、港湾の海水が、海流や潮の満ちひきで、1日に44%が
入れ替わるとしており、
 セシウム137が公表されている濃度になるには、1日あたり80億〜
930億ベクレル(日によって量が違う)が、流れ込んでいる計算になると
いいます。

 その結果、2011年6月以降の1年間で、16兆1000億ベクレル(1日
平均441億ベクレル)が、港湾に流れ込んだ可能性があるとしています。

 これは、事故前の保安規定で定められた排出限度の、73倍にあたる
量です。



 東京海洋大学の神田教授は、「海水の測定データから、原発の敷地内
の土が雨で流れ込んだ影響とは考えにくく、地下水や壊れた配管などを
通じて汚染水が漏れ出している可能性がある。
詳細な調査を実施し、
原因を特定すべきだ」としています。

 一方、東京電力側は、「さまざまな調査の結果から、発電所の敷地から
放射性物質が海に流出しているとは考えていない。ただ、専用港の海水
で放射性セシウムの濃度が下がらない原因は分かっていないので調査
を続けたい」と話しています。



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 後日。3月24日付の、複数の新聞社の報道によると、東京海洋大学の
神田教授は、
 2011年6月1日〜2012年9月30日までの、1年4ヶ月間に、計
およそ17兆1000億ベクレルの放射性セシウムが、海に流出した
恐れがある
という試算をまとめました。

 神田教授は、「現在も地下水や配管を通じて流出が続いている可能性
がある。すぐに調査すべきだ」と指摘しています。

 これに対して東京電力は、「2011年6月以降、大規模な汚染水の流出
はない」とした上で、「放射性物質を拡散させない対策をしているため、
港湾内の濃度が下がらないのでは」と反論しています。
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 やはり、いま現在でも、高レベル汚染水が、海に流出し続けて
いる可能性があったのです!



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しいたけの原木32万本が基準値越え

 「原木しいたけ」は成長するとき、原木に付着した放射性物質を
吸収する
ため、
 国は、1キログラムあたり50ベクレルを超える原木を使用しないよう
に、基準を設けています。

 これを受けて千葉県は、2012年9月から県内で使われている原木
186万本について「サンプル検査(抽出検査)」をしたところ、
 全体の17%にあたる32万本が基準値を超えているとみられる
ことが分かりました。



 これらの半分は千葉県産で、残りは福島県や宮城県などの県外から
仕入れたものであり、
 いずれも、国が基準値を示す前に、生産者に渡っていたものとみられ
ます。

 千葉県は、これらの原木を廃棄するように指導するとともに、安全性
が確認された原木を新たに調達する事業などを進めています。



 ちなみに千葉県では、2011年の10月以降、

 10の市で「原木しいたけ」から国の基準値を超える放射性物質が
検出されており、出荷制限が続いています。

 県は、出荷の再開を希望するすべての生産者について原木しいたけ
の検査をし、安全性を確認したうえで、

 出荷制限の解除に向けて、国との調整を進めることにしています。


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使用済み核燃料プールの冷却システムが停止

 福島第1原発で3月18日の午後6時57分ごろ。外部の送電線から
電力を受けている3つの配電盤が停止して「停電」が発生し、

 1号機、3号機、4号機の、使用済み燃料プールの冷却システムや、

 1号機〜6号機の使用済み燃料を専用に保管する「共用プール」の
冷却システムなど、

 合わせて9の施設で同時に機能が停止しました!



 1号機、3号機、4号機、そして共用の、4つのプールには、合計で
8500本余りの使用済み燃料が入っていますが、

 使用済み核燃料は、いま現在でも発熱し続けているため、

 冷却システムが停止したままなら、プールの水温がだんだんと上がっ
て行き、

 温度の上昇がいちばん速い「4号機のプール」では、4日ていどで、
東京電力が保安規定で定めている上限の「65℃」を超えてしまいます。



 もしも、さらに冷却システムが停止しつづけたら、

 プールの水が蒸発して、使用済み核燃料が「むき出し」になり、

 最悪の場合は、「メルトダウン」が起こる可能性さえ考えられるでしょう。

 なのでこれは、ものすごく深刻なトラブルだといえます!

(東京電力の社内規定では、2日以上電源が失われてプールの冷却
システムが止まった場合は、消防車などで注水する対策が行なわれる
ということです。)



 幸いにして、そのような重大な事態には至らず、

 冷却システムが停止してから、およそ29時間後の、3月20日午前
0時12分までに、1号機、4号機、3号機、共用プールと、順次復旧が
完了しました。

 以下の表に、

 それらが復旧した日時と、冷却システムが停止する前(停電前)の
水温、そして復旧時の水温を示します。

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        復旧した日時   停電前の水温  復旧時の水温

 1号機  19日14時20分    16.0℃     17.0℃

 4号機  19日16時13分    25.0℃     31.0℃

 3号機  19日22時43分    13.9℃     17.0℃

 共用   20日00時12分    25.5℃     31.8℃
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 この表を見るかぎり、危険な状態とされる水温が65℃に達する前に、
復旧が完了したのは何よりです。

 しかしながら、今回のこのトラブルには、たいへんな問題点が多々存在
していたのです。


 それについては、次回でレポートしたいと思います。



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