STAP細胞の中間報告
                             2014年3月23日 寺岡克哉


 理化学研究所は、3月13日付けで、

 「研究論文の疑義に関する調査中間報告書」というのを発表しました。



 これは、

 同研究所の小保方(おぼかた)晴子さんを中心とした研究チームが、

 イギリスの科学誌ネイチャーで発表した、「STAP(刺激惹起性多能性
獲得)細胞」の論文にたいして、

 現在、さまざまな「疑い」が指摘されており、

 これを受けて理化学研究所は、「調査委員会」を設置して調査を行なって
いますが、

 その委員会による中間報告書です。



 ちなみに本サイトでも、

 エッセイ626と、エッセイ627で、小保方さんのSTAP細胞について
取りあげていますので

 この問題を黙って見過ごすわけにも行かなくなり、中間調査報告書の
レポートをしておきたいと思いました。


(「STAP細胞」については、エッセイ626で分かりやすく説明しております
ので、そちらをご覧ください。)


               * * * * *


 まず、

 このたびの「研究論文の疑義に関する調査中間報告書」によると、

 ネイチャーで発表された2編の論文中に、「研究不正(注1)」として
疑われる場所が、全部で6ヶ所あります。

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注1 研究不正:

 理化学研究所の「科学研究上の不正行為の防止等に関する規定
(平成24年9月13日規定第61号)」の第2条−2によると、「研究不正」
を以下のように定義しています。


第2条−2
 この規定において「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合
における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び
意見の相違は含まないものとする。

(1)捏造  データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告する
       こと。

(2)改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究
       結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果
       等を真正でないものに加工すること。

(3)盗用  他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用
       表記せずに使用すること。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 中間報告書は、それら「研究不正」として疑われる6ヶ所のうち、

 2ヶ所については、調査の結果、データの取扱いに不適切な点は
あったが、「研究不正」には当たらないと判定しました。

 しかし、残りの4ヶ所については、「継続して調査が必要」だとして
います。



 なので、

 このたびの「研究論文の疑義に関する調査中間報告書」では、

 STAP細胞の論文に「研究不正」があったのかどうか、まだ判定でき
ていないというのが現状です。



               * * * * *


 ところで、

 「調査の継続が必要」とされている4ヶ所のなかで、

 「研究不正」の疑いがいちばん大きいのは、「博士論文の流用」だと
されている部分です。



 つまりSTAP細胞が、

 皮膚の細胞や、骨格筋の細胞、腸の細胞など、さまざまな細胞に分化
したことを示す複数の画像において、

 ネイチャーの論文に載っていた画像と、小保方さんの博士論文に載って
いた画像が、酷似している点です。



 これについて調査委員会は、

 「(画像)データの比較から、これらは同一の実験材料から取得された
(画像)データであると判断せざるを得ない」

 と、しています。



 つまり、まったく同じ画像なのに、

 ネイチャーの論文では、「脾臓(ひぞう)」の造血系細胞から作成した
STAP細胞を用いたと記載しているのに対し、

 3年前に書かれた小保方さんの博士論文では、「骨髄」の造血系細胞
から作成したSTAP細胞を用いたと記載されているのです。



 このように、

 「骨髄」の細胞を使った実験の「画像データ」を、

 「脾臓」の細胞を使った実験の「画像データ」だと言って、ネイチャーの
論文に載せたのでは、

 「データの捏造」が疑われても、まったく仕方がないでしょう。


               * * * * *


 これについて、小保方さんと共同研究者の笹井さんは、2月20日。

 ネイチャーの論文で、脾臓の造血系細胞から作成したSTAP細胞を
用いたという記載が、実際には骨髄の造血系細胞から作成したSTAP
細胞を用いた画像であることと、

 正しい画像に訂正することを考えているという、

 2つの修正すべき点についての申し出と、これに関する資料を、調査
委員会に提出しました。



 つまり、「本物の画像」は存在していたのです!



 しかし、そうすると

 なぜ、正しい画像が存在していたのに、間違った画像を論文に載せて
しまったのでしょう?



 これについて小保方さんは、

 それぞれの実験の過程で、脾臓及び骨髄に由来する血液細胞のサン
プルにたいして、

 いずれも hemato (hematopoietic :血液系の意味)というラベルを用い
ていたために混乱が生じ、

 「画像の取り違え」をしてしまったと説明しています。



 しかしながら・・・ 

 画像ファイルには「作成日情報」が含まれており、3年も前の博士論文
に使った画像と間違えるというのは、言い訳に「かなりムリがある」としか
思えません。

 また、

 修正の申し出の際に、それらの間違った画像が、小保方さんの博士
論文に載せたデータであるとの言及はありませんでした。


 ここら辺が、ものすごく「不可解」なところです。


               * * * * *


 しかしながら、以上、ここまで見てきて私は思ったのですが、

 もしも、「本物の画像」が存在しなかったので、わざと「偽物の画像」を
使用したのなら、

 それは間違いなく、「悪意のある完全な捏造」だと言えるでしょう。



 とことが、

 「本物の画像」が、存在しなかった訳ではありませんでした。



 だから、

 ネイチャーの論文にたいしては、ものすごく問題があるとしても、

 STAP細胞の存在自体が、「悪意のある完全な捏造だった」という
決定的な証拠は、まだ出ていません。




 逆に言うと、

 STAP細胞が「本当に存在する可能性」は、まだ残されているわけ
です!




 なので、

 第三者による「再現実験」を行なったり、

 あるいは、とても難しい「実験上のテクニック」が存在していて、第三者
による再現実験が、なかなか出来ないのであれば、

 小保方さんによる「公開実験」を行なうなどして、

 まず、

 STAP細胞が本当に存在するのかどうか、そのことを明確に証明
するべきです。




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