放射能汚染テロの可能性が高い
                             2014年4月13日 寺岡克哉


 ちょっと前の話になりますが、東京電力は3月26日。

 福島第1原発の「H6エリア」という場所に設置したタンクの上部から、

 「高レベル汚染水」が、およそ100トン漏れた「事件」について、

 作業員たちへの聞き取り調査では、原因究明につながる情報が得られ
なかったと発表しました。



 今後は、調査規模を大幅に縮小して、

 相談窓口で情報提供を受け付けるとしていますが、

 事実上、原因が不明のままなのに、調査を打ち切った形となりました。


               * * * * *


 以前に書いた、エッセイ628「放射能汚染テロの可能性」で述べましたが、

 このときに漏れた「高レベル汚染水」は、ストロンチウム90などベータ線
を出す放射性物質が、1リットルあたり2億4000万ベクレルも含まれて
いました。

 それが、およそ100トンも漏れ出したので、ものすごく深刻な「事件」
なったわけです。



 しかもさらに、それだけでなく、

 この事件には、「不可解な弁操作」という謎が存在するのです。



 つまり、この事件は、

 H6エリアのタンクが、すでに「満タン」であったにもかかわらず、さらに
汚染水を移送してしまったため、

 タンクの上部から、「高レベル汚染水」が溢れ出したものです。



 が、しかし本来、

 汚染水の移送先は、「H6エリア」ではなく、「Eエリア」のタンクのはず
でした。



 ところが!

 何者かが、Eエリアに通じる弁を閉じ、H6エリアに通じる弁を開いた
ために、

 Eエリアに移送するはずだった汚染水が、H6エリアに移送されて
しまったのです。



 しかも、後から確認してみると、

 Eエリアに通じる弁は開かれ、H6エリアに通じる弁が閉じられており、

 弁の開閉が「元の状態」にもどっていたのです。



 この「不可解な弁操作」について、

 いったい誰が行なったのか?

 それは、単なる「ミス」で起こったのか?

 それとも、「故意に実行されたこと」だったのか?

 という部分が、ものすごく大きな謎に包まれているのです。



 もしも、この不可解な弁操作が「故意に実行されたこと」ならば、

 「放射能汚染テロ」である可能性が十分に考えられます!

 そのため、この事件の真相究明は、ものすごく重要であり、けっして
ウヤムヤにはできません。


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 まず東京電力は、3月5日までに行なった調査で、

 Eエリアに通じる弁が閉じられ、H6エリアに通じる弁が開かれたのは、
2月19日10時32分〜10時57分までの間。

 Eエリアに通じる弁が開かれ、H6エリアに通じる弁が閉じられて、元の
状態に戻されたのは、2月19日23時00分〜翌日0時10分までの間。

 という具合に、「弁操作」が行なわれた時間帯を絞り込みました。



 以下は、そのことが公表されている、

 「H6エリアタンク天板部からの漏えいに対する原因と対策について 平成
26年3月5日 東京電力株式会社」という資料の、45ページ目に記載され
ている内容です。

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弁開閉状態の調査(2月19日9:00〜翌20日0:10)

●V347(H6エリアへの第一隔離弁)
 @9:00〜10:32 弁閉
  (ポンプ運転中にH6エリアCグループ(以下、H6という)水位計上昇なし)
 A10:32〜10:57 弁「閉」→「開」 (推定)
 B10:57 弁開(協力企業が当該弁の写真撮影した時刻)
 C10:57〜23:00 弁開(ポンプ運転中にH6水位計変動あり)
 D23:00〜翌0:10頃 弁「開」→「閉」 (推定)
 E翌0:10頃 弁閉(当社社員確認)
 F翌0:10〜 弁閉(ポンプ運転中にH6水位変動なし)

●V346(Eエリアへの第一隔離弁)
 @9:00〜10:32 弁開
  (ポンプ運転中にEエリアBグループ(以下、Eという)水位計上昇)
 A10:32〜10:55 弁「開」→「閉」 (推定)
 B10:55 弁閉(協力企業が当該弁の写真撮影した時刻)
 C10:55〜23:00 弁閉(ポンプ運転中にE水位計変動なし)
 D23:00〜翌0:10頃 弁「閉」→「開」 (推定)
 E翌0:10頃 弁開(当社社員確認)
 F翌0:10頃〜 弁開(ポンプ運転中にE水位変動あり)

●V347及び、V346の弁開閉が生じたと推定される時間帯は、以下の
 通り。
 ・2月19日 10:32〜10:55(10:57(※))
 ・2月19日 23:00〜翌2月20日 0:10
(※)V347及びV346は接近して設置されている。銘板を設置した協力
  企業は連続して作業を実施した。
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 上のように、「弁操作」の時間帯が絞られたので、

 つぎに東京電力は、その時間帯に現場で作業していた人々にたいし、

 「聞き取り調査」を行ないました。



 以下は、その調査方法と、調査結果について発表されている、

 「福島第一原子力発電所 H6エリアタンクからの汚染水の漏えいに
関する調査について 平成26年3月26日 東京電力株式会社」という
資料の、3〜5ページ目に記載されている内容です。

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調査方法 (3ページ目)

■ 調査方法
 a.関係者へのヒアリング
 ・一次調査については、対面(面談形式)あるいは電話での聞き取り
  により実施。
 ・追加調査については、対面(面談形式)での聞き取りにより実施。

 b.監視カメラの映像確認
  当該エリア付近を撮影した映像は残っていないものの、発電所構内
  の他の場所に設置している録画機能を有している監視カメラについ
  て、弁操作が行なわれた時間帯の映像を確認し、車両等の情報から、
  有益な情報が得られているかどうか確認。



ヒアリング対象および内容 (4ページ目)

■ ヒアリング期間
  平成26年2月21日〜3月14日

■ ヒアリング対象と主な内容
 a. 一次調査
 [ヒアリング対象]
 当日のAPD(電子式線量計)入域データに基づき、当該弁が操作された
 時間帯に入域し、H6タンクに関連した可能性のある作業に従事した者を
 選定し、ヒアリングを実施
 [主なヒアリング内容]
 作業時間帯、担当エリア・班メンバー、通常と異なる指示の有無、作業時
 にいた他の作業員の有無、当日の行動(現場作業以外の行動を含む) 等

 b.追加調査
 [ヒアリング対象]
 一次調査の結果から、より詳細な聞き取りを行なう必要があると判断した
 者、関連確認として追加的な情報入手が必要と判断した者に対して、ヒア
 リングを実施
 [主なヒアリング内容]
 弁操作時間帯の詳しい行動・移動ルート、弁操作時間帯の同行者との
 位置関係や会話の内容 等



調査状況 (5ページ目)

■ 調査状況

 ・124名(社員:16名、協力会社108名)を対象に延べ169回、約72
  時間のヒアリングを実施。

 ・午前中および夜間の弁操作時間帯に、弁操作との係わりを示す証言
  は得られていない。

 ・カメラ画像からも原因究明に資する情報は得られていない。

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 もしも、上の調査結果が本当ならば、

 つまり、APD(電子式線量計)入域データを記録した、正規の作業員
による、

 「弁操作のミス」であったことが、証明できないのなら・・・ 



 さらには、

 上の調査結果をもっと信頼して、正規の作業員による、

 「弁操作のミス」では、ないのなら・・・ 



 もしそうなら、この事件は、

 「放射能汚染テロ」である可能性が、きわめて高くなります!



 なので、

 こんな状態で調査を打ち切るなど、とうてい認めることはできません。


 「警察当局」などによる、さらにもっと強力な調査を、絶対にやるべき
です!




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