原発が攻撃される危険性 6
                            2014年7月13日 寺岡克哉


 7月9日。

 イスラム原理主義組織の「ハマス」が実効支配している、パレスチナの
ガザ地区から、

 イスラエル南部のネゲブ砂漠にある、「ディモナ原子力センター」と呼ば
れる核施設に向けて、3発の「長距離ロケット弾」が発射されました

 イスラエル軍によると、3発のロケット弾のうち、1発を対空防衛システム
の「アイアンドーム」で撃墜し、残る2発は空き地に着弾したとしています。

 被害や負傷者は確認されていません。



 攻撃を受けた「ディモナ原子力センター」は、ガザ市から南東へおよそ
80キロ離れた場所にあります。

 ちなみに、イスラエルは事実上の核保有国とされていますが、

 同センターには「原子炉」が1基あり、核兵器と関連がある施設とみら
れています。



 この事実が証明しているように、

 「原発(原子炉)」は、軍事攻撃の対象にされます!

 つまり、

 「原発が攻撃される危険性」は、現実の問題として、確かに存在
しており

 けっして、妄想や絵空事(えそらごと)ではないのです。


              * * * * *


 さて、

 もしも中国が、日本の原発に「軍事攻撃」を仕掛けるとすれば、

 (1)ミサイルによる攻撃と、(2)航空機による攻撃の、2つが考えられ
るかと思いますが、

 前回では、(1)のミサイルによる攻撃の危険性についてレポートしま
した。

 今回は、その続きです。



(2)航空機による攻撃の危険性

 防衛省の「中国の2014年度国防予算について」という資料によると、

 中国が保有している第4世代戦闘機(注1)は、2013年現在において、

 J-10(268機)、SU-30(97機)、SU-27(308機)の、合計で
673機となっています。

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注1 第4世代戦闘機:

 第4世代戦闘機とは、1980年代ごろから運用が始められ、おそらく
2010年代以降まで運用が続くとみられるジェット戦闘機をいいます。
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 一方、日本が保有している第4世代戦闘機は、

 F15(201機)、F2(80機)の、合計で281機です。



 両者を比べると、

 中国の673機に対して、日本が281機であり、わが国の劣勢はどうして
も否めません。

 もしも中国の戦闘機が、原発の上空まで侵入してしまったら、空対地ミサ
イルや誘導爆弾で、確実に攻撃されてしまうでしょう。



 さらに中国は、「H-6爆撃機」というのを、現在およそ120機ほど運用
しているとみられます。

 爆撃機ならば(飛行性能が旅客機みたいなものなので)、日本の戦闘機
によって簡単に撃墜できると思うかもしれませんが、

 しかし、このH-6爆撃機は、「巡航ミサイル」を発射することが可能
であり、

 日本から遠く離れた、戦闘機の行動半径外の場所、しかも不特定多数
の場所から、巡航ミサイルが発射される危険性があるのです。



 以上のことを考えると、

 中国が本気になって、航空機による攻撃を原発に仕掛けてきたら、

 それを防ぐのは、ほとんど不可能ではないかと思えてなりません。


              * * * * *


 ところで・・・ 

 中国では2010年から、「国防動員法」というのが施行されています。



 この法律は、中国で「有事」の事態が起こったとき、

 中国の国籍をもつ18歳~60歳までの男性と、18歳~55歳までの女性
にたいして、

 軍隊の作戦の支援や保障、戦争災害の救助、さらには社会秩序維持
への協力などが、義務付けられるというものです。

 これを怠ったり、拒否した者には、罰金や刑事罰が科せられることもあり
ます。



 日本にとって「国民動員法」が脅威なのは、この法律が「在日中国人」
にも適用される
ことです。

 つまり日本には、2010年末現在で68万7156名の在日中国人が
いますが、

 中国が「戦争状態」を宣言した場合には、これら在日の人々にも、
軍隊の作戦への支援などが義務付けられるのです。



 また、国防動員法には「民生資源の徴用」という項目があり、

 組織および個人が所有する、社会生産、サービスおよび生活に用いる
施設、設備および場所、その他の物資などを、必要な場合には人民
政府が「徴用」できる
としています。

 ここで、「徴用の対象」となる「組織および個人」とは、党政府機関、
大衆団体、企業・事業体など中国国内にあるすべての組織および中国
国民と、中国の居留権をもつ外国人も含むすべての個人をいいます。



 さらに、国防動員法には「特別措置」という項目があり、

 金融、交通運輸、郵政、電信、報道・出版、ラジオ・映画・テレビ、情報
ネットワーク、エネルギー及び水資源の供給、医薬衛生、食品及び食糧
の供給、商業貿易の業種に対して、

 「強制的な管理措置」をとるとしています。



 つまり、

 中国に進出している2万3094社の日系企業(2012年末現在)や、

 15万399人の中国在留邦人(2013年の速報値)も、

 「強制的な管理措置」や「徴用」の対象となっているのです!


            * * * * *


 以上、エッセイ645から3回にわたり、

 中国が持っている「能力」について見てきましたが、それを纏(まと)め
ると以下のようになります。



 在中国の日系企業(2万3094社)。

 中国の在留邦人(15万399人)。

 在日中国人(68万7156人)。

 これらを対象にした「国防動員法」の施行。(有事の際の、日系企業
や在留邦人に対する強制管理や徴用、在日中国人の軍隊への協力)。

 ミサイルの攻撃能力(最大で、核弾頭100発、通常弾頭1000発が
日本を標的)。

 航空機の攻撃能力(第4世代戦闘機が673機、巡航ミサイルの発射
可能な爆撃機が120機)。



 これらを考え合わせると、

 もしも日本と中国が「戦争状態」になったら、日本に勝ち目はないと
言わざるを得ません。

 中国がその気になれば、日本の原発も、おそらく破壊されてしまう
でしょう。




 たしかに、アメリカ軍が介入すれば、

 日本の全面降伏だけは、辛(かろ)うじて避けられるかも知れません。

 が、しかし・・・ 

 日本の経済的な損失や、社会的な被害、そして人的な被害(つまり
死傷者の数)は、

 ものすごく大きなものになるでしょう。



 なので、

 尖閣諸島の問題や、歴史認識の問題などで、中国に対して「怒り」を
感じる人が、いまの日本では少なくないかも知れませんが、

 まず冷静になって、あくまでも「平和的な解決」を目指すべきであり、

 楽観的で無責任な「主戦論」に熱狂することなどは、厳に戒(いまし)め
なければなりません。



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