原発が攻撃される危険性 8
                            2014年7月27日 寺岡克哉


 7月16日。

 原子力規制委員会は、鹿児島県にある川内(せんだい)原発の1号機
と2号機について、

 新規制基準にたいする「合格」を認めた、「審査書案」を了承しました。


 これは、

 昨年の7月に「新規制基準」が施行されて以来、初めてのものとなり
ますが、

 その審査書案では、九州電力が提出した申請書を審査した結果、「新
規制基準に適合しているものと認められる」と結論しています。


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 このたびの審査書案は、

 「(案)九州電力株式会社川内原子力発電所の発電用原子炉設置変更
許可申請書(1号及び2号発電用原子炉の変更)に関する審査書」

 というものですが、じつに418ページにも及んでいます。



 その内容としては、

 620ガルの「地震」にも耐えられる(ガルは加速度の単位で、1センチ
メートル毎秒毎秒 1cm/s)とか、

 6メートルの「津波」にも耐えられるとか、

 風速100メートルの「竜巻」にも耐えられるとか、

 原発の運用期間中に、「火山の噴火」による影響を受ける可能性は、
十分に低いとか、

 「全交流電源の喪失」に備えて、それが復旧するまで電力を供給する
蓄電池を準備するとか、

 その他、さまざまなことが書かれています。



 ちなみに、

 本サイトのテーマになっている、「テロ攻撃」への対策についての記述
もありました。

 それは、「大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その
他のテロリズムへの対応」という項目で、

 審査書案の413~417ページにわたって掲載されています。


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 その「テロ対策」の項目(413~417ページ)を、詳しく読んでみたので
すが、あまり具体的なことは書かれていませんでした。

 それでも、すこしは具体的だと思える部分を抜粋すると、以下のように
なっています。


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 故意による大型航空機の衝突による大規模な航空燃料火災を想定し、
放水砲等を用いた泡消火についての手順を整備する。また、事故対応
を行うためのアクセスルート、操作場所に支障となる火災等の消火活動
も想定して手順を整備する。(414ページ)



 勤務時間外、休日(夜間)においても発電所内又は発電所近傍に
事故対応要員52名および専属消防隊8名を確保し、大規模損壊(注1)
の発生により中央制御室(運転員を含む)が機能しない場合において
も、対応できるよう体制を整備する。(415ページ)

(注1)
 「大規模損壊」とは、大規模な自然災害又は故意による大型航空機
の衝突その他のテロリズムによる、原子炉施設の大規模な損壊のこと
をいいます。



 勤務時間外、休日(夜間)における常駐者は、地震、津波等の大規模
な自然災害及び故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムが
発生した場合にも対応できるよう、分散して待機する。(415ページ)



 大規模損壊発生時の対応に必要な資機材は、重大事故等で配備
する資機材の基本的な考え方を基に、以下のとおり配備するとしてい
る。また、大規模損壊発生時においても使用を期待できるよう、原子炉
建屋から100m以上離隔をとった場所に配備する。

 ①地震及び津波の大規模な自然災害による油タンク火災、又は故意
による大型航空機の衝突による大規模な燃料火災の発生時において、
必要な消火活動を実施するために着用する防護服、消火薬剤等の資
機材、小型放水砲等を配備する。

 ②高線量の環境下において、事故対応を行うために高線量対応防護
服等の必要な資機材を配備する。

 ③大規模損壊の発生時において、指揮者と現場間、発電所外等との
連絡に必要な通信手段を確保するため、多様な通信手段を複数配備
する。また、消火活動用の通信連絡設備を配備する。
                              (416~417ページ)

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 上の「抜粋」を見て頂ければ分かりますように、

 「テロ攻撃」への対応は、「やられた後」のことだけで、

 事前に「原発を防衛する」という観点が、まったく欠落しています!


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 ところで現在、

 原子力規制委員会は、このたびの審査書案について、パブリック
コメント(意見公募)を行っています。

 なので私も、以下のような意見を提出しました。


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413ページ 4-5 「大規模な自然災害又は故意による大型
航空機の衝突その他テロリズムへの対応」について


 安倍政権によって、集団的自衛権の行使が容認されようとして
いる昨今、

 日本を含む欧米諸国に敵対する国や組織から、ミサイルや戦闘
機による軍事攻撃、あるいは日本に潜伏している工作員等による
テロ攻撃の危険性が増加しつつあることは、決して否定できませ
ん。

 しかしながら上記の項目4-5を拝見しましたが、軍事攻撃や
テロ攻撃から、原発を防衛するという対策は全く取られていませ
ん。

 もしも集団的自衛権が行使され、特定の国や組織との敵対関係
が鮮明になった場合には、地震や津波の危険性より、軍事攻撃や
テロ攻撃の危険性の方が大きくなるでしょう。

 たとえば1981年にイスラエルがイラクの原子炉を爆撃した
り、今年の7月にはイスラム原理主義組織のハマスが、イスラエ
ルの原子炉をロケット弾で狙ったりと、原発が攻撃対象にされる
のは妄想や空想ではなく、現実的な問題となっています。

 日本の原発が攻撃される危険性が高まった場合には、地対空ミ
サイルの配備や、武装自衛官の常駐などによって、原発を防衛す
ることが絶対に必要ですが、しかし現時点では、そのような防衛
対策は明文化されていません。

 この理由から、いくら地震や津波などの対策がとられていても、
原発には依然として大きな危険性が存在しており、決して再稼働
を容認することは出来ません。

以上

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 皆さんも、何か言いたいことがありましたら、意見を提出した方がよい
と思います。

 いちおう募集する意見の内容として、「科学的・技術的意見」となって
いますが、それに臆(おく)することなく、思ったことを遠慮なく言えばよい
のです。

 原子力規制委員会のサイトに、パブリックコメントの意見提出フォーム
があり、提出期限は8月15日です。



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