どんなに不景気でも増税!
2014年11月30日 寺岡克哉
安倍首相は、11月18日の記者会見で、
「景気条項」を撤廃し、2017年4月に消費税率を10%へ引き上げ
る。増税を再び延期することはない。
と、断言しました。
ところで、
「景気条項(景気弾力条項)」というのは、消費増税法の「付則」に
記述されているもので、
景気が悪いときには、消費税の増税を停止できるように定めています。
たとえば、
ここのところGDP(国内総生産)が、2四半期連続してマイナス成長
となり、
来年の10月に消費税率を8%から10%に引き上げる予定であった
のを、2017年の4月まで延期しました。
実はこれが、「景気条項」に基づくものだったのです。
だから、もしも、
12月14日に行われる衆議院選挙で、自民・公明の両党を合わせ
て過半数(238以上)の議席を獲得してしまったら、
法律の改正によって「景気条項」が撤廃され、
どんなに景気が悪くても、消費税の増税が強行されてしまうの
です!
これは、
今度の衆議院選挙における、ものすごく大きな争点の1つなので、
ちょっと「景気条項」について調べ、レポートしたいと思いました。
* * * * *
さて、以下に挙げるのは、
「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行う
ための消費税法の一部を改正する等の法律」の、付則第18条。
つまり、「景気条項」と呼ばれるものです。
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第18条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを
条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済
の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の
経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度
を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策
の実施その他の必要な措置を講ずる。
2 税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる
中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への
影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を
重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行う
とともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、2条及び第3条
に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況
の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標
を確認し、前2項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、
その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
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上の記述を、ごく普通に読めば、
消費税を増税する場合には、「経済状況を好転させること」が必要な
条件となっており、
経済の成長率が、およそ2~3%に達していないような、あまり好景気
でないときは、消費税を増税するべきではない。
と、理解できるのではないでしょうか。
おそらく、このために、
今回のように、GDPのマイナス成長が続いたときは、
消費税の増税を停止し、「先送り」をせざるを得なかったのでしょう。
* * * * *
ところが!
この「景気条項」が撤廃されてしまえば、
いくら景気が悪いときでも、消費税の増税を強行することが、可能に
なってしまいます。
たしかに、安倍首相は11月18日の民放番組で、
リーマンショックのような世界的な経済の緊縮状況や、
(東日本大震災のような)天変地異が発生すれば、
別の法律で増税を再延期することも、あり得るという考えを示して
います。
また、11月28日に発表された、自民・公明両党の共通公約では、
食料品などの、生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」に
ついて、
(増税を予定している)2017年度からの導入を目指して、早急に具体
的な検討を進めるとしています。
しかし、いくらそうであっても、「景気条項」が撤廃されれば、
今回のようにGDPのマイナス成長が続いたぐらいでは、消費税の増税
が、まず間違いなく強行されてしまうのです。
さらには、今よりもっと景気が悪いときでさえ、増税が強行されてしまう
可能性も、けっして否定できません。
そうなれば、
いくら目指す通りに「軽減税率」が導入されたとしても、やはり個人消費
が落ち込んで、ますます景気が悪くなるでしょう。
さらには選挙が終わって、この先もしも、軽減税率の導入が「ウヤムヤ」
にされてしまったら、なおさら目も当てられません。
* * * * *
今度の12月14日に行われる衆議院選挙では、
集団的自衛権、原発再稼働、TPP、非正規雇用、円安、物価高など、
さまざまな争点があるかと思います。
しかし、まず第一に、
自民・公明の両党で、過半数(238以上)の議席を獲得させたら、
かなり景気が悪くても、消費税率10%への増税が、強行されて
しまうこと。
選挙で投票するときに、これだけは絶対に覚悟しておかなければ
なりません。
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