群馬大病院 過失で死亡率6倍
                             2015年3月8日 寺岡克哉


 群馬大病院(前橋市)は、3月3日。

 腹腔(ふくくう)鏡による肝臓切開手術を受けた後に、4ヶ月以内
で死亡した患者8人について検証した結果、

 「すべての事例で過失があった」とする、最終報告書を公表し
ました。



 同病院の第2外科では、2010年の12月~2014年の6月までに、

 難易度の高い「保険適用外」の、腹腔鏡による肝臓切開手術を、

 58人の患者に対して行いましたが、そのうち8人が4ヶ月以内に
死亡しています。



 なんと、死亡率は13.8%です!

 (8÷58=0.1379)



 ちなみに、

 日本外科学会と日本消化器外科学会が、合同で実施した全国
調査によると、

 難易度の高い「保険適用外」の、腹腔鏡による肝臓手術の死亡率
は、2.27%となっていますので、

 群馬大病院の死亡率は、全国平均の6倍にもなります!

 (13.79÷2.27=6.07)


            * * * * *


 ところで、

 腹腔鏡による肝臓手術のほとんどは、「40代の男性医師」が担当
しており、

 死亡した8人の患者も、すべて、この「同一人物」が執刀しています。



 そして、群馬大病院が公表した最終報告書によると、

 ●手術前の検査が不十分であったこと。

 ●執刀医が技術的に未熟だったこと。

 ●手術後の措置が不十分であったこと。

 これらの各要素が絡み合って、死亡例が相次いだとしています。



 さらに報告書では、個々の手術についても検証しており、

 肝臓が手術に耐えられるかどうかの、事前の評価が不十分だった
死亡例がありました。

 脾臓(ひぞう)の摘出と同時に、肝臓を切開して死亡に至ったケー
スもあり、これについては「負担が大きすぎた」と認定しています。

 切開した範囲が大きすぎて、肝不全をきたして死亡した例もあり
ました。


 また、

 臓器の縫い合わせがうまくいかなかったり、手術直後に胆汁(たん
じゅう)が漏れたりするなど、

 「手術の操作に何らかの問題があった可能性」を認め、執刀医に
技術的な問題があった
と指摘しています。


 さらには、

 退院6日後に、腹部が張って救急外来を受診した患者について、

 当直医から連絡を受けた40代の男性医師は、「帰宅させていい。
明日、また来てもらい、入院を検討する」と指示し、患者は腹水を
抜いて帰宅させられました。

 その翌日、患者は自宅で意識を失って死亡しており、最終報告書
では「緊急入院させるべきだった」と指摘しています。


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 この、群馬大病院の問題について、

 肝臓の手術に詳しい、日本大学医学部・消化器外科の高山忠利
教授は、以下のようにコメントしています。


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 「通常は、ありえない状況だ」

 「外科医にとって最大限守らなければならないのは患者の安全性で、
それを重視していれば、8人が亡くなるという事態は起きなかったと思う」

 「8人の手術は開腹でもやさしいとは言えないもので、腹腔鏡のほうが
よいという手術は1つもない」

 「通常、患者には、標準的な治療である開腹手術を提示したうえで、
今回行った腹腔鏡の手術について保健適用外でリスクがあるということ
も伝えるべきだが、今回はそこが、まずずさんだったとみられる」

 「また、手術を行う前に肝臓の機能を調べる検査は、どこまで切除する
かを判断する重要な指標で、検査をせずに手術をするのは極めて危険
だ。
ある程度、肝臓外科を専門にしているグループならばありえない」

 「さらに術後の対応の悪さも目立つ

 手術は、術中の手技と同様に術後の管理が極めて大事だ。合併症は
ある程度起きるが、早めに発見して対応していれば助かる可能性もあり、
この8人に関してみると、対応の遅れを感じる」

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 さらに・・・ 

 腹腔鏡による手術で8人を死亡させた「40代の男性医師」が
行った執刀では、

 (腹腔鏡を使わない)開腹手術でも、過去5年間で84人のうち
10人が死亡
しています。



 しかも、そのうちの1件は、

 「がん」と診断して手術したところ、3日後に患者が死亡してしまい
ましたが、

 しかし、その患者は「がん」などではなく、良性の腫瘍だったことが
判明したのです。



 ところが!

 40代の男性医師は、そのことを遺族に伝えず、生命保険の診断書
にも「がん」と虚偽記載をしていました。

 病院側は「極めて重大な問題」としていますが、40代の男性医師
は調査にたいして、「記憶がはっきりしない」と話しているといいます。



 群馬大病院は、この開腹手術で10人が死亡した問題も調査して
おり、

 5月ごろに結果を公表することになっています。


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 何ということでしょう! 

 腹腔鏡による肝臓手術で死亡した、8人の全てで過失があった
ことも驚きですが、

 「がん」だと誤診をして開腹手術を行い、患者を死なせているの
にもかかわらず、

 「誤診」のことは遺族に伝えず、診断書にも「がん」と虚偽記載を
していたとは、

 きわめて悪質であり、もはや「犯罪行為」であるのは確実です!



 私の家族にも、「がん」で手術した者がおりますが、

 主治医の先生は、「手術の危険性」などを丁寧に説明して下さり、

 私がどんな質問をしても、親身になって答えて下さいました。



 だから私は、

 リアルに接したことのある、お医者様にたいしては、

 「とても良心的な人」というイメージしか持っていません。



 なので、このたびレポートしたような、

 「きわめて悪質な医者」も、現実に存在していたという事実は、

 ものすごくショックであり、とても残念でなりません。



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