トルコで大規模な粛清
                              2016年7月24日 寺岡克哉


 本サイトのエッセイ750で書きましたように、

 日本時間で7月2日の未明、バングラデシュで7人の日本人が殺害される
というテロ事件が起こりましたが・・・ 



 その記憶も新しいまま、さらには日本時間で7月15日の午前5時半。

 フランス南部のニースで、フランス革命を記念する祝日の花火を見物する
ため集まっていた人たちの中に、トラックが突っ込むというテロ事件が起こり、
84人が死亡しました。

 このように、社会不安を招くような大事件が、立て続けに起こっています。



 そして今度は、

 7月15日の午後10時半ごろ(日本時間で7月16日の午前4時半ごろ)。

 トルコの首都アンカラや、トルコ最大の都市イスタンブールで、

 トルコ軍の一部が反乱を企てるという、「クーデター未遂事件」が起こりま
した。

 反乱は一夜で鎮圧されましたが、多数の市民を含む246人が犠牲になり、

 反乱勢力側も合わせると、死者の数が300人を超えると見られています。


               * * * * *


 この反乱を鎮圧したトルコ政府は、

 エルドアン大統領の政敵で現在アメリカに住んでいる、イスラム教指導者の
「ギュレン師」が、このたびのクーデター未遂事件に関与していると断定し、

 「ギュレン派」への大規模な粛清(しゅくせい)を行なっています。



 たとえば、

 軍や警察、司法関係者、公務員などの、少なくても約3万5000人が、

 「ギュレン派」の容疑をかけられて拘禁・停職処分となりました。



 また、

 トルコの全大学の学部長が辞任を命じられ、私立学校の教師2万1000人
の免許が剥奪されました。

 トルコ内外の私立学校は、これまで長年にわたり、ギュレン師の社会運動
に新たな人材と資金を提供してきたといいます。



 さらには、

 「ギュレン派」との関わりがあるとされた、テレビ局やラジオ局の放送免許
が取り消されました。

 トルコの国営アナトリア通信によると、24の報道機関が免許を剥奪(はく
だつ)され、

 ジャーナリストの34人が、取材許可を没収されたといいます。



 ちなみに、

 現地時間で7月20日の時点において、拘束や解職処分の規模が6万人
を超えました。

 表向きの理由は、「ギュレン派の排除」とされているのですが、

 政権の意に合わない世俗派やリベラル派の勢力にまで、弾圧が及ん
でいる可能性が高いとみられます。



               * * * * *


 さらにエルドアン大統領は、7月20日の夜(日本時間で7月21日の朝)。

 クーデター未遂事件をうけて、3ヶ月間の「非常事態宣言」を出しました。

 「テロ組織に関係する者を全て排除すること」が、目的だと説明しています。



 ちなみに、

 この非常事態宣言を「発効」させるためには、「国会による承認」が必要
になりますが、

 与党が単独過半数を占めているため、国会が承認するのは確実だと
みられます。



 そして案の定、

 トルコの国会は翌日の7月21日に、3ヶ月間の非常事態宣言を承認し、
発効しました。

 これにより、

 大統領の権限が拡大して、閣議のみで法律と同等の効力をもつ政令を
だすことが可能になりました。

 さらにトルコ憲法では、非常事態時には国民の基本的な権利や自由を
制限できると規定しており、

 エルドアン大統領による、「さらなる弾圧の激化」が懸念されています。


              * * * * *


 以上ここまで見てきて、私は思うのですが・・・ 


 一夜にしてクーデターが鎮圧されたので、トルコ情勢は大事に至らない
のではないかと、当初は考えていました。

 が、しかし、

 いま現在のトルコ情勢は、思ったよりも、ずっと大変なことになっている
みたいです。

 これから先、エルドアン大統領による弾圧がさらに激化すると、

 大規模なデモなどの「民衆の反抗」が起こるのではないかと、とても心配
でなりません。



      目次へ        トップページへ