北朝鮮リスクが増大 9
2017年11月12日 寺岡克哉
11月7日の午前。
日本訪問のすべての日程を終えたトランプ大統領は、東京都内にある
アメリカ軍の横田基地から、韓国に向けて出発しました。
日本国内において、トランプ大統領の身の安全を脅(おびや)かすような
事件は起こらなかったので、
警備に従事していた人たちは、ひとまずホッと胸をなで下ろしたのでは
ないでしょうか。
ちなみに、
前日の11月6日には首脳会談が行われ、北朝鮮の問題にたいしては、
「核・ミサイル開発を進める北朝鮮に政策変更を促(うなが)すため、圧力
を最大限に高める方針で(日本とアメリカが)一致した」
と、しています。
* * * * *
トランプ大統領が韓国入りした11月7日の午後。
革新系の市民団体など、220以上の団体が共催する「反米デモ集会」
が、韓国の首都ソウルで開かれました。
そのような「歓迎ムードとは言えない状況の中」で、トランプ大統領は
韓国入りをしたのでした。
このように、あまり良くないムードの中でしたが、同11月7日に韓国と
アメリカの首脳会談が行われました。
この会談により両首脳は、北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させるため
に圧力を強化し、断固たる対応を取ることで一致しました。
また、
アメリカ軍戦略兵器の朝鮮半島や近隣地域への展開を拡大して、韓国
軍の防衛力を強化することも決めています。
* * * * *
11月8日。
トランプ大統領は、専用機で北京に移動し、就任後で初めて中国を訪れ
ました。
習近平(しゅうきんぺい)国家主席は、明・清朝時代の歴代皇帝が暮らし
た「故宮」でトランプ夫妻を出迎えました。
習夫妻とトランプ夫妻は、故宮内で京劇を観賞したほか、夕食を共にして
います。
ちなみに、
1日あたり約8万人の観光客が訪れる世界遺産の「故宮」を、「貸し切り」
にして歓待するのは、異例の厚遇だといいます。
翌日の11月9日には、中国とアメリカの首脳会談が行われました。
会談後の記者会見でトランプ大統領は、
「北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄するまで、経済圧力を強める必要性で
(中国とアメリカが)一致した」と、強調しました。
一方、習近平・国家主席は、
北朝鮮への圧力強化には一切触れず、「対話を通じた問題解決」の重要
性を、改めて主張しています。
* * * * *
以上ここまで、
トランプ大統領の、日本、韓国、中国の訪問について、ものすごく大ざっぱ
に見てきました。
ところで、
北朝鮮情勢が緊迫し、韓国とアメリカが協力しなければならない状況な
のに、なぜ韓国で「反米デモ」が起こったのか、私はちょっと不思議に感じ
ました。
しかしながら、さまざまな報道を見てみると、
どうやら反米デモに参加している人たちは、トランプ大統領が北朝鮮
との戦争を煽(あおり)り立てていると、考えているみたいです。
つまり、
韓国にとって、きわめて多くの死者が出ると分かっている北朝鮮との
戦争は、絶対に嫌(いや)だし、絶対に起こしてはならない!
という、そのような考えから、反米デモを行なったみたいです。
ところ一方、中国は、
トランプ大統領にたいして、「国賓(こくひん)以上」とも言われる、異例
の「おもてなし」をしました。
しかしながら中国は、
北朝鮮の体制を揺るがすような「石油の禁輸」などの厳しい制裁には、
一貫して反対の立場をとっており、
首脳会談後の記者会見でも、習近平・国家主席は、「対話重視」を改め
て主張しています。
このことから、
トランプ大統領は、北朝鮮問題に関して「中国を動かすのに成功した
とは言えない」と、私は思いました。
* * * * *
以上から、
一義的にアメリカとの協力関係を強めれば良いというわけには行かない、
韓国の人たちの「複雑な心情」と、
壮大な「おもてなし」をする一方で、主張するべきは主張するという、中国
の巧(たく)みな策略というか「強(したた)かさ」を、
私は感じた次第です。
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