北朝鮮リスクが増大 15
                              2018年1月14日 寺岡克哉


 今回は、

 緊迫している北朝鮮情勢が、「少しは緩和した」という話なのですが、

 同じく北朝鮮問題を扱っているので、「北朝鮮リスクが増大」という
題名のシリーズに入れました。

 どうか、ご了承ください。


              * * * * *


 さて、韓国と北朝鮮は1月9日。

 およそ「2年ぶり」の南北協議となる閣僚級の会談を、軍事境界線が
ある板門店(パンムンジョム)で開きました。


 韓国側にある施設の「平和の家」で開かれた会談には、

 韓国からは、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相を首席代表にして、
5人が出席しました。

 一方、北朝鮮からは、李善権(リ・ソングォン)祖国平和統一委員会・
委員長を首席代表にして、対南政策の専門家たち5人が出席してい
ます。



 ちなみに、

 この会談は、昼食などの休憩をはさみながら、10時間以上にわたっ
て行なわれました。

 その結果、同日の夜には、「共同報道文」というのが採択されました。



 その「共同報道文」によると、

 北朝鮮は、平昌(ピョンチャン)オリンピックに高官級代表団と選手団、
応援団、記者団などを派遣することが決まりました。

 さらに韓国と北朝鮮は、軍事的な緊張を緩和し、平和的な環境をつくる
ため、「軍事当局者による会議の開催」を含め、共同で努力していくこと
で一致しました。


 一方、韓国側は、北朝鮮の核・ミサイルによる挑発を念頭にして、

 「緊張を高める行為を中止し、非核化など平和定着に向けた対話を
再開する必要がある」と、北朝鮮側に要求しました。

 ところが、韓国側の説明によると、北朝鮮は「非核化問題は議題では
ない」と、猛反発したといいます。

 また、

 韓国側が提案した、南北離散家族再会事業を実施するための
「赤十字会談」の開催も、共同報道文には盛りこまれませんでした。


              * * * * *


 同1月9日。

 北朝鮮は、韓国との今後の協議で、「核兵器について話し合うつもり
はない」という考えを示しました。

 核兵器は、アメリカだけを対象にしており、「同胞」である韓国は対象外
であるためと説明しています。



 北朝鮮の首席代表である、李善権(リ・ソングォン)祖国平和統一委員
会・委員長は、

 「原爆や水爆、弾道ミサイルなどあらゆる兵器は、アメリカだけを対象と
しており、われわれの同胞や中国、ロシアを対象としていない」

 と、述べた上で、

 「(核兵器は)北と南の問題ではなく、これを議題に上げるなら負の結果
を招き、今日築いたすべての成果が無駄になる恐れがある」

 と、韓国側をけん制しています。


              * * * * *


 同1月9日。

 アメリカ国務省は、韓国と北朝鮮による南北対話を受けて、

 「安全で危険のない、韓国・平昌(ピョンチャン)オリンピックの成功を
目的とした対話を歓迎する」という声明を発表しました。



 ゴールドスティーン国務次官(広報外交担当)は記者会見で、

 「朝鮮半島に緊張緩和をもたらすのは、いかなることでも前向きな動き
だ」と述べて、北朝鮮のオリンピック参加を歓迎しました。

 しかし、その一方で、

 北朝鮮のオリンピック参加が、国連安保理決議による制裁に違反しな
いことを確実にするため、韓国側と緊密に連絡を取り合っていることを
強調しました。

 また、ゴールドスティーン国務次官は、

 閣僚級会談で合意した、南北軍事会談の開催について、「すべての
対話を歓迎する」と、つよい口調で語りました。

 そして、「アメリカも交渉を望んでいる」と述べましたが、

 しかし、そのためには、「北朝鮮が非核化に同意することが交渉の前提
になる」という認識を、改めて示しています。



 同1月9日。

 サンダース大統領報道官は記者会見で、

 「北朝鮮の(オリンピック)参加は、非核化を通じて国際的な孤立を終結
させる価値を、(北朝鮮側が)理解する機会となる」

 と指摘して、非核化に向けた具体的な行動を北朝鮮に促しました。

 そして、

 朝鮮半島の非核化が「最優先事項」であると、重ねて訴えた上で、

 「韓国とは、このたびの南北対話について、極めて緊密に連携している」
と述べて、

 アメリカと韓国が、対北朝鮮で歩調を合わせていることを強調しています。


              * * * * *


 1月10日。

 アメリカのトランプ大統領は、ホワイトハウスで記者団にたいし、韓国
と北朝鮮の閣僚級会談に関して、

 「世界にとって成功につながることを望む」と述べて、期待を表明し
ました。

 その上で、

 「向こう数週間~数カ月は、何が起きるか様子を見る」と述べ、

 北朝鮮が平昌(ピョンチャン)オリンピックの参加を経て、非核化に
向けた具体的な動きを示すかどうか、注視する意向を明らかにして
います。



 また、トランプ大統領は、

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、1月10日の電話会談で、
南北会談を「極めて良好だったと感じていた」と指摘しました。

 その上で、アメリカが北朝鮮に対して強硬な態度をとっていなけれ
ば、対話は実現しなかったとして、

 「文氏は、(アメリカに対して)非常に感謝していた」と、強調してい
ます。


             * * * * *


 以上、ここまで見てきましたが、


 1月9日に行われた、韓国と北朝鮮との閣僚級会談によって、

 「緊張緩和」の方向へ動き始めるのではないかという期待が、

 少しは出てきたように感じます。



 トランプ大統領の言動を見ても

 今後、数週間~数ヶ月は、緊張状態が少しは緩和しそうです。



 もちろん、このまま「平和的な解決」の方向へと進んで行けば良い
のですが、

 しかし北朝鮮側は、核・ミサイル開発の凍結などについて、まった
く言及していません。

 さらには、

 北朝鮮が次の軍事的な挑発を行うまでの「時間稼ぎ」をしている
可能性も否定できず、

 まだまだ予断を許さない状況であると、今の時点では言わざるを
得ません。



      目次へ        トップページへ