貿易戦争の危機 2
                               2018年4月1日 寺岡克哉


 3月11日付の、エッセイ836「貿易戦争の危機 1 」では、

 アメリカのトランプ大統領が、鉄鋼とアルミニウムの輸入にたいして
高い関税をかけたため、

 アメリカとEU(ヨーロッパ連合)との間で、貿易戦争の危機が生じて
いることについて書きました。



 このアメリカの関税措置は、すでに3月23日から発動しています。

 しかしホワイトハウスが、EU(ヨーロッパ連合)への関税を、5月1日
まで猶予する方針を示したため、

 アメリカとEUとの貿易戦争は、ひとまず回避された形となりました。



 今後アメリカ側は、貿易問題などを交渉することによって、

 EU(ヨーロッパ連合)を関税の対象から完全に除外するかどうかを、

 決定するといいます。


              * * * * *


 ところが!

 今度は、アメリカと中国との間で、「貿易戦争の危機」が高まって
いるのです。



 というのは、トランプ大統領が3月22日の午後に、

 大統領の権限で貿易を制限できる「通商法301条」に基づいて、

 中国の知的財産権侵害にたいする「貿易制裁措置の発動」を命じる
文書に、署名をしたからです。

 最大で、年間600億ドル(約6兆3000億円)相当の中国製品に、
25%の関税を課す見通しで、

 さらには、中国企業によるアメリカへの投資も一部制限します。



 ちなみに3月23日には、

 鉄鋼とアルミニウムにたいする関税措置も発動されており、

 アメリカの一連の強硬措置にたいして、中国が反発するのは、

 必至の状況となっています。


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 一方、そのような状況のなかで、中国の商務省は23日。

 アメリカ産の豚肉などに高い関税を適用する「報復措置」を、発表し
ました。



 これまで中国は、対話優先による貿易摩擦の解消を掲げていて、

 具体的な報復策には触れていませんでしたが、その方針を転換した
形です。



 このことで、アメリカと中国の間での「報復の応酬」がエスカレートし、

 「貿易戦争」に突入する可能性が、一気に高まってきました。



 アメリカへの報復対象は128品目におよび、2017年の輸入総額で
30億ドル(およそ3100億円)分に上ります。

 第1弾として果物、ワイン、継ぎ目なし鋼管(シームレスパイプ)などに
15%、

 第2弾として豚肉やリサイクルアルミに25%の関税を、それぞれ適用
するとしています。



 しかしながら今回の措置は、3月23日に発動した鉄鋼やアルミの輸入
制限にたいする報復であり、

 中国商務省は、知的財産権侵害をめぐるアメリカの対中制裁について
も、報復する用意があることを明らかにしています。

 同商務省は、「貿易戦争を決して恐れない。既に十分な準備ができて
いる」と強調しました。


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 ところで、私たちの国である「日本」の状況ですが、

 3月23日の東京株式市場では、アメリカと中国との「貿易戦争」が懸念
され、株の「売り注文」が殺到しました。

 日経平均株価は、一時、前日と比べて1032円も下がっています。



 「貿易戦争の激化」に伴って、世界的に景気が悪化するとの不安から、

 リスク資産(つまり株)からの資金逃避が活発に行われ、

 株式市場では、機械や精密機器を中心に、海外投資家による「売り注文」
が相次いだといいます。



 さらにアメリカは、

 日本も対象にした、鉄鋼やアルミニウムの輸入制限措置を発動しており、

 保護主義的な通商政策の加速化や、円高の進行により、「株価は下落
基調を強めかねない」という見方が出ています。


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 以上、ここまで見てきましたが、

 トランプ大統領一人の所為(せい)で、世界経済が混乱しています。



 私たちの国である日本も、アメリカが課する関税の対象国になっており、

 まったく他人事ではありません。



 さらには、

 もしも、アメリカと中国との「貿易戦争」が始まってしまったら、

 日本にも、甚大な悪影響が及んでしまうでしょう。



 このように危機的な状況の中にあって、日本の国内情勢はといえば、

 「森友学園問題」で、安倍政権と財務省がゴタゴタとしているのです。



 もう本当に、この先、

 一体どうなってしまうのか、まったく私には見当もつきませんが、

 事(こと)の成り行きだけは、しっかりと見続けて行きたいと思ってい
ます。



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