アメフト問題に思うこと
                               2018年5月27日 寺岡克哉


 先日、

 大学のアメフト(アメリカンフットボール)試合中に、

 相手選手への反則プレー(危険なタックル)で、怪我を負わせて
しまったという出来事がありましたが、

 それが今、ものすごく大きな社会問題になっています。



 怪我を負わせた選手は、5月22日に記者会見を開いて謝罪を行い、

 反則プレーに至った経緯などをまとめた「陳述書」を読み上げました。

 その陳述書の全文が、マスコミ各社によって公開されていますが、

 それを改めて読んでみると、胸が締め付けられる思いがします。



 反則プレーを行った選手は、

 監督やコーチから、試合前の練習に参加させてもらえない(つまり
干される)などのプレッシャーをかけられ、

 その後、「相手の選手を潰せば(試合に)出してやる」と唆(そその
か)され

 さらに試合当日には、メンバー表から自分の名前が外され、

 ほんとうに反則プレーを実行しなければ、試合に出させてもらえない
のだと、精神的に追い詰められて行きました。

 そして反則プレーを行ってしまった後の、後悔、反省、悩み、苦しみ・・・ 


 陳述書では、

 そのような経緯(いきさつ)が、すごく説得力をもって、如実(にょじつ)に
語られていました。



 それを読んで私が受けた印象ですが、

 この選手がウソを言っているようには、とても思えませんでした。

 この選手は反則プレーを行ってしまったけれども、それを十分に反省し、

 責任逃(のが)れをすることなく、自分のやったことを認め、心から謝罪
しています。

 本来は実直(じっちょく)で、正義感の強い人間であるように、私は感じま
した。



 その一方で、

 このような酷(ひど)い状況に選手を追いやった、監督やコーチにたいし
ては、

 心の底から「怒り」が込み上げてくるばかりです。


             * * * * *


 ところで、なぜ、

 このたびのアメフト問題が、これほど大きな社会問題にまで、発展して
しまったのでしょう?


 たしかに、

 この問題にたいする、アメフト部監督の対応のまずさや、さらには大学
当局の対応のまずさが有ったことは、否(いな)めないでしょう。


 しかし私は、それよりも、

 このアメフト問題が、「日本社会の闇」を象徴しているからではないか
と感じています。



 つまり、

 企業や官庁、大学研究室など、日本国内のさまざまな「組織」において、

 商品の不当表示、規格データの改ざん、公文書の改ざんや破棄、研究
データのねつ造など、

 上の者からの指示によって、強制的に犯罪行為をやらされている
ような人々・・・ 



 もしかしたら、今の日本社会には、

 そのような人々が、非常に多く存在しているのではないでしょうか。



 そして、

 自分の良心を押し殺して、犯罪行為を続けてしまうような「泣き寝入り」
をしたり、

 あるいは、

 良心の呵責(かしゃく)に耐えられず、鬱(うつ)病になったり、最悪の
場合は自殺をしたり・・・ 



 このような「日本社会の闇」が、大きな背景として存在するがために、

 このたびのアメフト問題にたいして、それぞれ自分の置かれた状況や、
感情、思い、考えなどを投影する人がたくさんいて、

 ものすごく大きな社会問題に発展したのだと、私には思えてならないの
です。


              * * * * *


 最後に、

 このたびのアメフト問題が、刑事事件に発展してしまう可能性もありま
すが、

 怪我を負わせてしまった選手は、十分に反省と謝罪をしており、

 また幸いにも、被害を受けた選手の怪我が、比較的に軽かったことから、

 できるだけ軽い罰で済むようにと願っています。



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