道路の信号が消える恐怖
2018年10月14日 寺岡克哉
前々回の「エッセイ865」で、ちょっと触れたましたが、
胆振東部地震によって、大規模な停電が起こっていたとき、
私は、近所のスーパーマーケットに買い物に行ったのですが、
交差点の信号が消えていたので、道路を渡るのが「危険」でした。
以下に、そのときの状況を、「エッセイ866」から抜粋してみます。
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屋外に出て、道路を歩いて行くと、やはり、交差点の信号が消えて
いました。
しかし、そんな状態でも「車が走っていた」ので、信号が消えていると、
どのタイミングで道路を渡ればよいのか分からず、けっこう難儀しました。
たとえば車同士では、衝突をしないように、ずいぶん慎重な運転をして
いましたが、
しかし「歩行者」に対しては、ずいぶん横柄な感じの運転をしているよう
に見えました。
だから道路を渡るときは、細心の注意をして、駆け足で渡るしか
ありません。
ゆっくり歩いて道路を渡っていたら、車に轢(ひ)かれかねないよう
な、そんな危険を感じざるを得ない状況でした。
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上の抜粋のように、「すごく危なっかしいな」と感じていたのですが、
しかし、「交通事故が起こった」というニュースも、これといって無かっ
たので、
信号が消えても、けっこう大丈夫なのかなと思っていました。
ところが!
10月3日に公表された、北海道警察のまとめによると、
胆振東部地震によって大規模停電が発生し、北海道内のほぼ
全域で信号機が消えた9月6日から、ほぼ全面復旧した9月9日
にかけて、
交差点で発生した交通事故が、合計で128件にも上り、平時の
ときよりも多かったことが分かりました。
このうち人身事故は9件で、重軽傷者が13人に上っています。
北海道警察は、
「地震発生直後、交差点では減速するドライバーが多く、死亡事故
などの大事故は起こらなかった」
「ただ、物損事故を含む交差点での事故は、通常よりも3割ほど
多く、信号が消えて危険な状態だった」
と、しています。
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そして、たとえば9月6日の午前11時ごろ。
札幌の実家に帰省中だった東京都の女性は、携帯電話の充電器
を購入しようと自宅を出て歩いていたときに、複数の交通事故を目撃
したといいます。
札幌市・豊平区の国道36号線の交差点では、高齢者の男性が
乗用車にはねられて「ぐったり」と横たわり、救急車で搬送された
そうです。
その1キロメートル先の交差点でも、乗用車が出合い頭に衝突し、
一方の車が歩道に乗り上げて横転していたといいます。
この、札幌に帰省していた東京の女性は、
「国道は車で渋滞し、歩行者が交差点を渡ろうとしても、クラク
ションを鳴らして突っ込んでくる車もあった」
「いつ大事故が起きてもおかしくなかった」
と、証言しています。
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以上、ここまで見てきましたが、
歩行者が交差点を渡ろうとしいるのに、クラクションを鳴らして
突っ込んでくる車があったなんて、とても正気の沙汰とは思えま
せん!
「すべての信号が消える」という、ものすごく異常な事態なのに、
そんな状況の中でも、平然と車を乗り回すような人間の、ある種
の「本性」を見たような気がします。
たしかに、
車を運転している人の全てが、そのような常軌を逸(いっ)した人間
であるはずはありません。
が、しかし、
その中の、ごくごく一部の人間であっても、常軌を逸した運転をすれ
ば、いつ「大事故」が起こっても、まったく不思議ではないのです。
私は思うのですが・・・
「道路の信号が消えたときの恐怖」というのは、
まさしく、人間の「狂気」というか、人間の「悪い心」が作り出した恐怖
なのでは、ないでしょうか。
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