日韓関係が悪化 2
                              2019年1月20日 寺岡克哉


 前回でレポートしましたように、

 従軍慰安婦問題の再燃や、火器管制レーダーの照射問題など、

 日本と韓国の関係が、ここのところ悪化の一途をたどっています。



 そして、その上さらに、

 日本と韓国の間では、徴用工問題(注1)というのも深刻化して
いるのです。


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注1:徴用工問題(ちょうようこうもんだい)

 徴用工問題というのは、

 第2次世界大戦中に、日本の統治下であった朝鮮や中国において、
日本が行った「徴用」(つまり強制的に人々を動員して、一定の仕事に
つかせること)によって労働した元労働者の人々や、その遺族の人々
が起こしている、

 「訴訟問題」のことです。

 元労働者の人々は、「奴隷のように扱われた」と主張して、現地の複数
の日本企業を相手に、訴訟を起こしているのです。

 ちなみに韓国において、同様の訴訟が進行中である日本の企業は、
70社を超えるとも言われています。
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 昨年(2018年)の10月30日・・・ 

 第2次世界大戦中に強制労働をさせられたとして、韓国人の4人が
新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟の、差し戻し
上告審で、

 韓国大法院(最高裁)は、新日鉄住金による上告を、退(しりぞ)ける
判決を言い渡しました。



 この判決によって、

 請求金額である合計4億ウォン(約4千万円)を、4人に支払う(1人
あたり1億ウォンを支払う)ことを命じた、

 「ソウル高裁の判決」が確定したのです。



 ちなみに、この裁判の原告は、

 元徴用工として旧新日本製鉄(現新日鉄住金)で働いていた
4人の男性ですが、

 そのうちの3人は、すでに亡くなっています。


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 ところで、

 上の判決が確定するまでには、およそ以下のような経緯をたどって
います。


 まず、

 2005年に韓国で提訴された「一審」と「二審」は、原告側が「敗訴」
しました。


 ところが、2012年に韓国大法院(最高裁)は、

 「植民地支配に直結した不法行為に対する損害賠償請求権を、
協定(日韓請求権協定 注2)の適用対象と見るのは困難」

 とする判断を初めて示し、二審判決を破棄して、高裁に差し戻した
のです。


 これを受けて、2013年にソウル高裁は、

 原告が請求した合計4億ウォンの賠償を、新日鉄住金に命じる
判決を出しました。


 しかし新日鉄住金は、これを不服として「上告」していたのです。


 しかしながら上で述べたように、昨年(2018年)の10月30日。

 韓国大法院(最高裁)が、新日鉄住金の上告を退ける判決を言い
渡したため、

 ソウル高裁の判決が、確定してしまったのでした。



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注2:日韓請求権協定

 日韓請求権協定というのは、朝鮮半島を植民地として支配した日本が、
終戦後に韓国と国交を結ぶにあたって、双方の債権・債務の関係を清算
するために結んだ条約です。

 互いに未払いの賃金など、個人の財産・請求権問題について、
「完全かつ最終的に解決された」(第2条)という確認が、両国によって
行なわれており、戦後の日韓関係における礎(いしずえ)となっています。

 この「日韓請求権協定」は、難航した両国間の協議を経て、1965年
の6月に外交関係を樹立するための「日韓基本条約」と同時に締結され、
同年の12月に発効しました。

 ちなみに、「日韓基本条約」に基づいて行われた日本からの経済協力
は、無償供与が3億ドル、有償供与は2億ドルとなっており、
 無償分だけでも当時の韓国の国家予算に匹敵する巨額の支援であり、
その後の韓国経済の急成長を支えました。
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 以上、ここまで見てきましたが、

 日韓関係が、ものすごく大変なことになってきました!

 というのは、

 70社を超えるとも言われる日本企業が、韓国において、同様の訴訟
を抱えているからです。



 そして例えば、昨年(2018年)の11月29日には、

 韓国大法院(最高裁)が「三菱重工業」に対しても、原告10人(この
うち5人が死亡)に、それぞれ8千万~1億5千万ウォン(約800万~
1500万円)を、支払うよう命じているのです。

 原告の10人は、第2次世界大戦中に、広島と名古屋の三菱重工業
の軍需工場で働かされた、韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身(て
いしん)隊員の人たちでした。



 もしも韓国で、今後このような流れが加速していき、

 70社を超えるとも言われる日本企業が、ことごとく敗訴してしまっ
たら、

 日本と韓国との関係は、経済関係のみならず、さらには全般的な
国交関係も、

 「壊滅的な打撃」を受けてしまうのでは、ないでしょうか。



 この問題は、それほど大きなもののように、私は感じてならないのです。



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