安倍政権を振り返って 3
                              2020年9月20日 寺岡克哉


 今回は、

 安倍政権による「外交」のうち、「日韓関係」について振り返って
みたいと思います。



 ちなみに本サイトでも、日韓関係については、けっこう取り上げて
おり、

 エッセイ880、881、882、883、884、885、886、907、910
などで書いています。

 詳しくは、それらを読んで頂ければよいのですが、ここでは、それら
で書いたことを、ざっと振り返ってみましょう。


             * * * * *


 まず、2018年の10月30日。

 第2次世界大戦中に強制労働をさせられたとして、韓国人の4人が
新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟で、

 韓国大法院(最高裁)は、新日鉄住金による上告を、退(しりぞ)ける
判決を言い渡しました。

 この判決により、請求金額である合計4億ウォン(約4千万円)を、
4人に支払う(1人あたり1億ウォンを支払う)ことを命じた「ソウル高裁
の判決」が確定しました。

 これは「徴用工問題」といわれるもので、その他の日本企業にも波及
しており、いま現在も続いている問題です。



 また、2018年の11月21日。

 韓国政府は、従軍慰安婦問題にたいして設立された「和解・癒し
財団」の解散を発表しました。

 これにより、2015年の従軍慰安婦にたいする日韓合意で、
「慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決させる」とした取り決め
が、事実上破棄されました。



 2018年の12月20日。

 韓国海軍の駆逐艦から、海上自衛隊のP-1哨戒機(しょうかい
き)に、火器管制レーダーが照射されました。

 この火器管制レーダーが照射されるというのは、軍事衝突が起こる
寸前の、一触即発の状態であり、

 不測の事態が起こりかねない、ものすごく危険な状況になりました。



 2019年の1月8日。

 韓国の南東部にある、テグ地裁のポハン支部は、

 原告側が行った、新日鉄住金の韓国内資産の「差し押さえ申請」を、
認める決定をしたことを明らかにしました。

 「差し押さえ」の対象になったのは、新日鉄住金が韓国内で保有して
いる、韓国の鉄鋼最大手「ポスコ」との合弁会社「PNR」の株式、およそ
8万1000株で、
 原告4人のうち、2人分の損害賠償額(2億ウォン・約2千万円)に
相当するといいます。



 2019年の2月7日。

 韓国のムン・ヒサン国会議長は、「従軍慰安婦問題」について、

 「日本の天皇による元慰安婦への謝罪の一言で解決する」という
見解を示しました。

 ムン議長は、「一言でいいのだ。日本を代表する首相かあるいは、
私としては間もなく退位される天皇が望ましいと思う。その方は
戦争犯罪の主犯の息子ではないか。
そのような方が一度おばあさ
んの手を握り、本当に申し訳なかったと一言いえば、すっかり解消
されるだろう。」と、語ったとされています。

 これに対し、安倍首相や河野外相などが猛烈な抗議を行いました。



 2019年の7月4日。

 安倍政権は、韓国にたいして「輸出管理の運用見直し」を行いました。

 フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の韓国向け輸出及び、これらに
関連する製造技術の移転(製造設備の輸出に伴うものも含む)について、
 包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、
輸出審査を行うことにしたのです。



 2019年の8月28日。

 安倍政権は、貿易管理をする上での優遇措置を適用している、いわ
ゆる「ホワイト国」というカテゴリーから、韓国を除外しました。
 これにより、韓国に対する輸出の手続きが、これまでよりも厳格化
されることになりました。

 ちなみに、日本政府が「ホワイト国」の指定を取り消すのは、この件が
初めてですが、
 これに対して、韓国側がものすごい反発を示したため、日本と韓国の
対立は、「戦後最悪」と言われるほどに悪化しました。


             * * * * *


 以上、安倍政権による対韓外交について、ざっと見てきましたが、

 徴用工問題、慰安婦問題、レーダー照射問題、天皇の謝罪問題、
輸出管理の運用見直し問題などで、

 日本と韓国の対立は、「戦後最悪」と言われるほどに悪化しました。



 しかしこれは、

 もちろん、安倍政権側だけの問題ではありません。

 韓国のムン・ジェイン政権によるところも、大いにあると言わなければ
ならないでしょう。



 むしろ安倍政権は、ムン・ジェイン政権にたいし、

 ただただ言いなりになって、穏便(おんびん)に済まそうとするのでは
なく、

 毅然(きぜん)とした態度をもって、日本の立場を示したのだと言えます。



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