かぶ(蕪)

Kabu   春の七草の中のスズナ(小菜)。純白できめ細かな肉質にほんのりと甘味を感じます。 古く奈良時代以前から栽培され、全国で様々な品種が作られてきました。 最近東京のスーパーではカブを売っていない事も多く、 この伝統的な野菜がだんだん食卓から遠ざかっているのではないかと心配になります。 (写真は金町コカブ)

品種 アブラナ科アブラナ属。白菜などに近い種類です。 やせ地でも育つので救荒作物として世界各地で作られていますが、特にロシア、トルコ近辺、インド、 そして日本で盛んに栽培されています。
原産地 カブはアフガニスタン近辺(東洋系カブ)と南西ヨーロッパ(西洋系カブ)の2ヶ所で別々に改良されたので、 この2ヶ所とも原産地と言われています。紀元前の相当古い時代から栽培されていたようで、 紀元前1〜2世紀のギリシア、ローマではすでに色々な種類のカブが作られていたという記録があります。
日本には奈良時代以前に渡来していたと言われ、 日本書紀(720年成立)には持統天皇が桑や栗とともにカブの栽培を奨励したことが書かれています。 ただしその頃は今のように根が大きくなく、葉のほうを主に食べていたと思われます。 カブの葉は大根に比べて柔らかいので好まれたのでしょう。
日本では西洋系のカブと東洋系のカブ、両方とも盛んに栽培されていて、 各地で様々に品種改良された多くの種類が作られています。
西洋系のカブは中国・韓国には見られず、いつどのようにして日本に伝わったのかは謎とされています。
種類
  • 金町小蕪−西洋系の代表的なカブ。 東京都葛飾区金町近辺の特産でしたが今では関東近辺で最も多く栽培されているカブです。 純白できめ細かな肉質、ほんのりとした甘さ、歯ごたえ、腰高の美しい形など、 高度に品種改良されている事から野菜の芸術品と言われます。 少しでも大きなものを買いたくなりますが、直径5cm以下の方が品質がいい。種をまいてから50日ほどで収穫でき、 一年中栽培されています。
  • 天王寺蕪−東洋系の代表的なカブ。大阪市天王寺付近で改良された扁平の中型のカブ。 関西を中心に広い地域で作られています。
  • 聖護院蕪−5kgに達する有名な大型の蕪。京都市左京区聖護院の特産で千枚漬けの原料になります。
  • 日野菜−これもカブの仲間です。滋賀県蒲生郡日野町を中心に滋賀県近辺で栽培されている細長く頭部だけが赤いカブ。 桜漬け(日野菜漬け)の原料。
  • 松ヶ崎ウキナ蕪−一つの根(カブ)から4〜5本の茎と数十の葉が出ている特殊なカブ。京都市左京区松ヶ崎の特産で、 日持ちがいいのでぬか漬けにして保存食にされます。
一年中ありますが、本来の旬は10月〜11月と3月〜5月です。
成分 根よりも葉の方に鉄分、カルシウム、各種ビタミン、が豊富に含まれています。 なるべく葉も利用するようにしましょう。
調理法 カブを買ったら根と葉を切り離して保存しましょう。切り離さないと根の水分が葉からどんどん蒸発してしまいます。
「コカブが高度に品種改良されてきた」というのはもちろん和食に合うように改良されてきているのですが、 それはずばり言って漬物にした時に美味しいように改良されたのだと思います。 それに対して関西を代表する天王寺カブは煮物に向いています。
カブは皮の内側に硬い繊維がとおっているので、皮は厚めにむきましょう。煮る時は煮すぎないようにするのがコツです。
市場 2001年の生産量は18万トンで微減傾向です。
雑学 三国志で有名な諸葛孔明が遠征の時にカブを栽培して食料にしたという話があり、そのため中国ではカブのことを諸葛菜とも呼びます。


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制作日:2004年5月25日
更新日:2005年12月11日
上田 泰久