品 種 |
イネ科コムギ属。米、トウモロコシと共に三大穀物の一つとして地球上の60億の人口を支えています。
古代では神からの贈り物として扱われていました。エジプト神話の女神イシスもローマ神話の女神セレス(シリアルの語源)も、
頭に小麦をのせて描かれます。涼しく乾燥した気候を好み、東南アジアのような温暖多湿の気候にはあまりむきません。
日本での小麦の事情についてはこちらをご覧ください。
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米との比較 |
お米に比べた時の小麦の長所・短所
- 雨の少ない乾燥地帯でも育てやすい。
- 日本で栽培した場合、冬にまく小麦は6月には収穫できるので夏の水不足、台風などの影響を受けにくい。
- 反対に梅雨時の長雨に弱い。
- 外皮が強く胚乳(中身)がもろいので、米のように粒としては利用しずらい。粉にして利用するが製粉の手間が大変。
- 小麦粉はグルテンの採用でノビがあり麺状に加工しやすい。
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原産地 |
野生種はアフガニスタン、イラン、イラク近辺に分布しています。 |
栽培の歴史 |
- 紀元前9000年−ジェリコ(現イスラエル)で小麦が栽培される。(遺跡から栽培跡が発見されています。)
- 紀元前7000年−チグリス、ユーフラテス流域(イラク、トルコ、シリア)で小麦の栽培が始まる。大麦と共に最初の栽培穀物。
- 紀元前5000年−今日の小麦の90%を占める"パンコムギ"が出現(コーカサス)
- 紀元前3000年−小麦栽培がヨーロッパ全土、及び中国に広がる
- 紀元前1000年−"デュラムコムギ"の出現
- 紀元後3世紀−日本に伝えられる(弥生前期と言われる松山市の鶴ヶ峠遺跡から小麦が見つかる)
- 17世紀−アメリカ大陸に伝わる
- 18世紀−オーストラリアに伝わる
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製粉の歴史 |
英語で工場の事を"MILL"(ミル、製粉の意味)と言います。製粉が最初の工業であった事を現していると言えるでしょう。
小麦の皮は強く、図のように皮が胚乳に食い込んでいるので、大変むきにくくなっています。
そのため、米や大麦のように粒のまま皮をむいて利用する事はできず、粉にして利用されます。
- 紀元前4000年以前−小麦を粉にして食べる事の発見。世界各地で小麦を粉にするのに使われた石器が出土しています。
- 紀元前2200年−古代エジプトの"粉挽き女"の彫像。
ひざをついて大きなスズリのような石版の上でコムギを擦っている様子がよくわかります。
- 紀元前2000年−石臼の発明
- 紀元前4〜1世紀−ローマにて奴隷や動物を使った製粉。製粉が職業になる。
- 紀元元年頃−ギリシアで水車を使った製粉が始まり、ローマにて製粉業に取り入れられる。
- 14世紀−オランダで風車を利用した製粉が盛んになる
- 17世紀−フランスで段階式製粉(段階的に少しずつ細かくひいて、その都度ふるいにかけてふすま(皮)を除いていく)
が発明される。これにより白い小麦粉ができる。
- 18世紀−蒸気機関を使った製粉
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種 類 |
小麦の分類には、植物学的な分類と収穫時期による分類があります。
植物学的には色々な種類がありますが、流通している小麦の90%はパンコムギ(普通小麦)です。
残りの10%はマカロニ、スパゲティー用のデュラムコムギです。
収穫時期では春小麦(硬質でグルテンの含有量が多い。強力粉の原料)と冬小麦に大別できます。
"小麦粉"の分類には、A)グルテン含有量による強力粉、中力粉、薄力粉という分類と、B)精製度(ふすまの混入度)による特等、
1〜3等、末等(工業用)という分類があります。 |
グルテンの作用 |
小麦粉に水を加えて練ると、含まれるグリアジン(ネバネバ)とグルテニン(弾力)という2つのタンパク質がからみ合い、
ネバネバして弾力のあるグルテンになります。これが米粉やトウモロコシ粉には無い小麦粉の大きな特徴で、
小麦粉がうどん、パン、ピザなど様々な形に加工できる理由です。グルテンは強力粉で40%、薄力粉では20%含まれています。
塩はグルテンの働きを強め小麦粉の生地のコシを強くします。
反対に、お酢、油、アルコールはグルテンを柔らかくし生地を延ばしやすくします。
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生産量 |
世界の年間生産量は5億7000万トン。中国、インド、ロシア、アメリカで世界の生産量の約半分を占めています。
日本の生産量は年間60万トン。内、北海道産が35万トンです。輸入は600万トン。
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