日本では古代から現代にいたるまで米が主食の座にありますが、小麦も古くから五穀の一つとして大切に扱われ、 ハレの食材として人々の食生活に彩りを与えてきました。 |
名前の由来 |
小麦は大麦に対する"小さい麦"という意味ではありません。
古くからある麦という意味(古麦)という説、粉として使う麦(粉麦)という意味だという説などがありますが、
本当の所はよく分かりません。
古事記(712年に成立)には、「スサノオのミコトがオオゲツヒメノ神を殺した所、
その身体から稲、蚕、小豆、粟、大豆、麦が生えてきた」という話がありますが、これが大麦なのか小麦なのか分かりません。
しかしその直後から大麦と小麦は区別されて記述されるようになります。
この時代(奈良時代)から小麦が粉にして利用されるようになり、粒のまま食べられる大麦との違いが明確になったからでしょう。 江戸時代以降は単に"麦"と言えば大麦を指すようになっています。(麦茶、麦飯など) ちなみに麦というグルーピングは日本と中国だけで、例えば英語では大麦"barley"、小麦"wheat"、ライ麦"rye"、 燕麦(エンバク)"oats"、のようにそれぞれ全く別の言葉で呼ばれています。 |
栽培の歴史 |
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製粉の歴史 |
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ハレの食材 | 柳田国男の民俗学にあるハレとケ(ハレとはお祭りなどの時に特別な食事をすること。ケとは日常で、質素な食事をする。)の
考え方によれば、小麦はまさにハレの食べ物でした。日々の生活では米が最上の主食の地位にあるのですが、
人々は小麦粉のグルテンの持つ特徴を愛し、ハレの日にはうどんや饅頭を作って食べる風習がありました。
理由は以下の2つです。
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