豆類の特徴


豆類栽培の意義 豆類を畑で栽培するのは、その豆の収穫以上の意義があります。 マメ科の植物の根には根粒菌という微生物が共生します。根粒菌には空中の窒素(植物の生長に必須)を取り込むという驚異的な能力があり、 取り込んだ窒素をマメ科植物にも提供します。反対にマメ科植物は光合成で作った糖質を根粒菌に与えます。 普通は畑で作物を作るたびに土の窒素が減って収量が落ちてくるのですが、豆類だけは逆に植える事によって窒素を増やします。 ですから畑に他の作物と一緒に豆類を植えたり、数年に一度は豆類を植える事によって土地に窒素を補給する事ができるのです。
インド、南米などでは今でも小麦・トウモロコシ畑に豆類を混ぜ植えしています。
日本の稲作の場合は田んぼなので混ぜ植えはできませんが、あぜ道に大豆を植えたり、 稲を収穫した後に(水を抜いている)マメ科のレンゲを植え、春にそのレンゲを土に鋤き(すき)込む事によって、 土に窒素を補給していました。(昔の話ですが)
成分 豆類は、お米に不足している必須アミノ酸のリジンや、トウモロコシに不足しているトリプトファンを十分に含んでいます。 しかし豆類だけだとメチオニンが不足するので、よく言われるように穀物と豆類を9対1ぐらいの割合で組み合わせて食べると、 総ての必須アミノ酸が効率よく摂取できます。(下表参照)
有害成分 豆類は穀物に比べて大粒で、タンパク質・脂質・炭水化物などの栄養が豊富なので、 動物や昆虫にとってはまたとない食料になりそうに見えます。しかし様々な種類の有害物質(毒)を含むものも多く、 また苦味が強かったり固かったりして、なかなか食べにくいものです。 しかし豆科植物の立場から言えば、これらの有害物質は種子が食べ尽くされて子孫繁栄に支障をきたすのを防ぐのに役立っているのです。
例えば大豆にはプロテアーゼ阻害物質(タンパク質がアミノ酸に分解されるのを阻害する)、 いんげん豆には血液凝集成分が含まれています。これらの成分は20分も加熱すれば分解されて無害になりますが、 もしも生豆を大量に食べるとお腹をこわします。 人類は、豆を水に晒し(さらし)たり、納豆のように発酵させたり、 モヤシのように発芽させる事によってこれらの成分を無毒化しておいしく食べる工夫をしてきたのです。


必須アミノ酸の含有量(単位:mg/可食部100gあたり)五訂食品成分表より

  タンパク質(%) ヒスチジン イソロイシン ロイシン リジン メチオニン シスチン フェニルアラニン チロシン スレオニン トリプトファン バリン
大豆
35.3
1100
1800
2900
2400
560
610
2000
1300
1400
490
1800
インゲン
19.9
600
900
1600
1300
250
260
1100
570
790
220
1000
エンドウ
21.7
570
900
1500
1500
210
300
1000
640
780
190
1000
米(精白米)
6.8
180
290
570
250
170
160
370
280
240
99
430
小麦粉(中力粉1等)
9.0
220
350
680
220
160
250
490
270
270
98
390
トウモロコシ(コーングリッツ)
8.2
250
320
1300
150
210
200
450
320
270
43
390
必須アミノ酸量(*)
 
16
13
19
16
17
19
9
5
13

* : タンパク質1gあたりの必須アミノ酸(mg)− 成人 (FAO/WHO/UNU 1985年)


食材事典のホームへもどる



制作日:2003年12月28日
上田 泰久