ナツメグ

甘く魅惑的な香りがなんとも刺激的。 胡椒(こしょう)クローブシナモンと共に4大スパイスと言われます。 アラビアンナイトにもよく登場するスパイスで、東洋への憧れの象徴だった事をうかがわせます。 ハンバーグやソースのいい香りの元。和名は肉荳蒄(にくずく)。
写真の右上はナツメグを削った断面です。
Nutmeg

品種 ニクズク科。10m以上にもなる熱帯性の常緑樹で、直径4cmほどの杏(あんず)のような実の中の種がスパイスとなります。 種を取り巻くレース状の種皮がメースというスパイスに、仁(種の殻を割った中身)がナツメグになります。 つまりナツメグとメースは同じ植物で、香りや用途も似ています。 雌雄異株なので、雄雌両方の木を植えないと実がなりません。
原産地 インドネシアのモルッカ諸島。
利用の歴史 インドでは紀元前10世紀ごろから頭痛薬として利用されていました。 ヨーロッパで一般に知られるようになったのは12世紀。 14〜16世紀の大航海時代には、コショウクローブとともに高価なスパイスとしてもてはやされます。 オランダは1600年頃から約200年間にわたってナツメグ貿易を独占していて(それ以前はポルトガルやスペイン) ナツメグの木が他の地域に移植されないように、種子が発芽しないような処理をするなど神経を尖らせていました。 しかしどんなにがんばってもどこかに抜け穴があるもので、ついに1770年にフランス人がナツメグの苗を盗み出して、 インド洋モ−リシャスに移植しました。その後じょじょに他の熱帯地域にも移植されていきます。
日本には15世紀ごろに紹介され、薬として使われていました。
現在の主産地 インドネシア、スリランカ、西インド諸島のグレナダ島。
成分 香りの主成分はα−ピネン、およびカンフェン。これらは木の芳香成分の一種です。木の実ですからね。 45度前後でもっとも効率的に香りを発散します。
利用方法 Nutmeg_hiki 粉の状態だと香りが消えやすいので、なるべくホールで買って使う度にナツメグ・ミルやオロシ金でひいて使いましょう。 加熱すると刺激的な香りが薄くなり、甘い感じの香りが強くなってきます。 この甘い香りは煮込むほど強くなるので、控えめに使うのがコツです。 ハンバーグ、ロールキャベツなど、ひき肉料理には特によく合います。ひき肉の中によく練りこんで肉となじませましょう。 玉ねぎのみじん切りを入れるとさらにナツメグの香りが引き立ちます。また、ごく少量のオールスパイスと共に使うと効果的です。 チーズやクリームとも相性が良いようです。
また甘い香りを生かしてフルーツパイやプリンにも使われます。シナモンと一緒に使うと効果的。

肉1kgに対する標準的な使用量 : 0.2g
粉のナツメグ小さじ一杯で    : 1.5g
雑学 ジプシーの間では、ナツメグは夫婦の愛をつなぎ止める力があると信じられていました。 ナツメグを大量(5g以上)に摂取すると幻覚を引き起こす作用があるそうですので、そのためかもしれません。


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制作日:2003年5月24日
更新日:2005年10月8日
上田 泰久